“顔だけVTuber”やAIアバターにVR演劇――9月の差し掛かりに芽生えた「新しいもの」たち
最近はAIが世間をにぎわせている。特に「MidJourney」や「Stable Diffusion」といった画像生成AIは、性能と使いやすさによって大きく普及している。そして、AI倫理についての議論も急速に立ち上がりつつある。AIが「手に届くもの」になったことで、様々な試みが一気に進んでいる印象だ。
【運営からのお知らせ】
本日22時をもって「人工知能 紡ネンの夏休みぶっ通し生配信」が終了いたしました。
ネンちゃんとの夏休みはいかがでしたでしょうか?
602時間に及ぶ本配信はなんと80万回再生を突破!
これからもネンちゃんをよろしくお願いいたします!#のぞきみねんねん pic.twitter.com/WniqVuZmIk— 紡ネン◎生配信するAI (@tsumuginen) August 31, 2022
一方で、VTuberにはAIがひと足早く実装されつつある。最も著名な例として挙げられるのが、株式会社Pictoriaの紡ネンだ。2020年に生まれた紡ネンは、いまや一人で配信ができるまで成長しており、8月には「人工知能 紡ネンの夏休みぶっ通し生配信」として、602時間に渡る長期配信を行った。総再生数は80万に達したとのことで、「人間には不可能な長時間連続配信」という独自の強みが、AI VTuberに見出されつつある。
そして、「AIで動くキャラクター」はいよいよメタバースに登場しようとしている。株式会社アドバンスト・メディアは8月30日、AI音声対話アバター「AI Avatar AOI」を発表した。「VRChat」上で動作し、音声認識エンジン「AmiVoice」によってユーザーの声を聞き取り、自然な話し言葉で適切な回答を行うのみならず、特定の場所へ自ら移動し、案内することまできるという、AIで駆動するアバターシステムだ。
筆者も体験したが、音声認識精度はかなり高く、発話もかなりきれいである。「AI Avatar AOI」の本質はチャットボット的な音声認識ガイドだが、これにアバターという肉体を与えることによって、仮想空間の中でひとつの存在として確立しているように感じられる。展示会案内や接客といったビジネスのみならず、ゲームのNPCのような役割や、有志イベントのガイドなど、画像生成AIのように幅広い人に活用の余地があるだろう。
VTuberといえば、最近では「顔だけVTuber」「部位Tuber」がチラホラ増えている。従来では全身をアバターとして表示しているものを、顔面だけアバターのものに差し替え、首から下は生身を映すという手法だ。直近ではおめがシスターズがこの手法を導入し、現実側でしかできないような企画を連発して、活動の幅を広げている。
『Virtual Face』がApp Storeにリリースされました💡
パーフェクトシンク対応のVRMで遊べるよ!
Unityに表情を送信できるよ!
(対応アバター持ってなくてもデフォルトアバターでとりあえず遊べるよ)
アプリのリンクはリプ欄に!#madewithunity pic.twitter.com/XkOiQ8Bllz
— 八ツ橋まろん🌰Unityが上手なVtuber (@Maron_Vtuber) August 30, 2022
「顔だけVTuber」の実施者は各々でシステムを作る傾向があったが、8月31日にVTuberの八ツ橋まろんが「Virtual Face」というiOS向けアプリをリリースし、一気に門戸が広がった。iPhoneとVRM形式のアバターさえあれば、誰でも「顔だけVTuber」になることができる。VTuberの容姿と、リアルでできることの幅広さを兼ね備えたハイブリッドな活動者が、もしかすると今後増えていくかもしれない。
8月31日より始まったヴェネツィア映画祭では、VR演劇作品「Typeman」がノミネートされている。「VRChat」にて上演され、VR空間に入った観客の眼前で、頭がタイプライターとなった人のような存在・Typemanを、アクターがリアルタイムで演じるという作品である。過去にもヴェネツィア映画祭にて作品を発表したVRアニメーション監督の伊東ケイスケと、「VRChat」コミュニティのクリエイターによって制作された、「世界最前線」と「メタバース最前線」のタッグ作品ともいえる一作だ。
アクターと観客がリアルタイムでふれあいながら進行する本作は、舞台と客席の垣根が取り払われた、イマーシブでインタラクティブな演劇作品と言えるだろう。今回のヴェネツィア映画祭では、「Typeman」以外にも様々なXR作品が「Venice Immersive」という部門でノミネートされており、XRがひとつの表現方式として大きく確立しつつある。