『ラグナロクオンライン』サービス開始20周年 ポップなドット絵と重厚な世界観で魅せる超古参MMO

『ラグナロクオンライン』サービス開始20周年

 MMORPG『ラグナロクオンライン』は、2022年8月31日をもって韓国での正式サービス開始20周年を迎える。本作は、幾多のタイトルがリリースされては消えていったMMO黎明期に生まれたにもかかわらず、今日までサービスが続いている稀有なタイトルだ。今回は、そんな『ラグナロクオンライン』の思い出を、20周年を機に振り返ってみる。

 なお、筆者が本作をプレイしていたのは、まだ3次職が実装されていなかった2008年〜2009年ごろであり、現在の状況とは大きく異なるため、ご容赦いただきたい。

可愛らしいグラフィックとダークなストーリー

 『ラグナロクオンライン』は、韓国のゲーム会社グラビティによって制作されたMMORPGだ。韓国の人気漫画『ラグナロク』の世界観をベースにしたゲームで、ドットで描かれた可愛らしいキャラクターデザインが特徴だ。そのデザインが功を奏したのか、当時は男性がメインの顧客であったMMORPGにあって女性ユーザーも比較的多いタイトルだったと記憶している。

 また、当時は3DポリゴンのMMORPGが登場しており、プレイするためにそれなりのスペックのPCを用意しなければならないケースもあったが、キャラクターやモンスターが2Dで描かれる本作であれば、比較的低スペックのPCでも遊べるというメリットがあった。

 とはいえ、当時『ラグナロクオンライン』を遊んでいてなにより惹かれたのは、その作り込まれた世界観の上に展開される「クエストの面白さ」だ。

 そのなかでも印象深いのが、シュバルツバルド共和国の大都市「リヒタルゼン」で展開されるクエストである。リヒタルゼンには、大企業「レッケンベル」の地下研究所が存在しているが、そこでは非人道的な実験が行われているという噂が流れていた。また、レッケンベルは一企業でありながら、シュバルツバルド共和国の政治や経済を裏で支配しているほど影響力が強く、それを危惧した大統領は「秘密の羽」という組織を結成。プレイヤーは成り行きで秘密の羽に協力することになる。陰謀や裏切り、隠蔽といったさまざまな闇が描かれるリヒタルゼンのクエストは、実に見ごたえたっぷりの内容となっている。

 そのほかにも、各都市間を移動する飛行船にまつわるクエストも印象に残っている。プレイヤーが日常的に使うことになる飛行船だが、その動力源が何であるのかは一般人には公開されていないのである。しかし、特定のクエストを進めると、飛行船の動力源の謎とそれを取り巻く陰謀が徐々に明らかになっていく。普段プレイヤーが何となしに使っている施設にさえ謎を散りばめ、世界の裏側を見せるようなクエストを展開していくのが『ラグナロクオンライン』の持ち味だったように思える。このようにディティールの作り込まれた世界観だからこそ、ほかのMMOと比較してもクエストの面白さが際立っていた。

多くのアクシデントを生んだ「古木の枝」

 『ラグナロクオンライン』を遊んだ当時を思い返すとき、いつも頭に過ぎるのは「古木の枝」によるアクシデントだ。

 「古木の枝」は、使用するとランダムにモンスターを召喚できるアイテムだ。通常モンスターだけでなく、高レベルのボスモンスターまで召喚することができる。そのため、古木の枝から出現するモンスターを利用して、プレイヤーのレベル99到達を祝う儀式(通称:発光式)を行っているギルドも珍しくなかった。

 しかし、この古木の枝の問題点は、平時であればモンスターが出現しない町中でも使用できる点にある。誰かが町中で古木の枝を使用したところ、凶悪なボスモンスターが出現してしまい、呼び出した本人たちでも手を付けられず、町を訪れていた無関係なプレイヤーが大量にキルされるという事態もしばしば見かけた。

 はた迷惑なことをするプレイヤーがいるものだと思う一方で、町中に突如として現れたボスモンスターを討伐するために熟練のプレイヤーたちが集まってくる光景を、さながら海外のヒーロー映画のような感覚で眺めて居たのを覚えている。

 とはいえ、上記のエピソードも見方によっては単なるMPKである。そのためか、現在では「古木の枝」は一部の専用マップ以外では使用不可となっているようだ。いま考えてみれば、MPKを誘発するアイテムがシステムとして許容されていたのは驚きである。

 ところで、近年リリースされているテレビゲームでは、システムとしてアクシデントが組み込まれているケースが増えていないだろうか。たとえば、『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』においても、フィールドの探索中に目の前から商人が歩いてきたり、旅人に話しかけられたと思ったら実はそれが暗殺者だったりといったアクシデントが頻繁に発生する。特にオープンワールドのゲームなどでは、プレイヤーを飽きさせないようにするための工夫として、そういったイベントを設けているのだろう。

 しかし、そういったタイトルをプレイするたびに、当時の『ラグナロクオンライン』の未成熟なシステムゆえに起きていた、あのアクシデントを思い出すのである。

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