VRゲーム・MMORPGの視点からみた、Porter Robinson主催フェス『Secret Sky』の脅威的なすごさ

VR・MMOの視点からみた『Secret Sky』フェス

 現地時間4月24日、『Sad Machine』やMadeonとの『SHELTER』といった楽曲で知られるDJ・プロデューサーのポーター・ロビンソン主催によるオンライン・フェスティバル『Secret Sky』が開催され、BaauerやKero Kero Bonito、Rezz、日本からもSEKAI NO OWARIの海外活動名義であるEnd of the World、高木正勝、Serphが参加し、大きな盛り上がりを見せた。このフェスティバルは昨年に続いて2回目の開催となり、パンデミックの影響により世界中の人々が外出自粛を余儀なくされ、リアルな空間での音楽体験が厳しくなってしまった今の時代だからこそ生まれたバーチャル・コンサートの一つである。

 昨年はTravis Scottと「フォートナイト」がタッグを組んだゲーム内イベント『Astronomical』やBillie EilishによるXRライブ『WHERE DO WE GO? THE LIVESTREAM』を筆頭に、バーチャルだからこそ実現できた画期的な試みが相次ぎ、今やバーチャル・コンサートは一つの音楽の楽しみ方として定着したと言っても良いだろう。

 そして、今回の『Secret Sky』についても、まさにそのようなバーチャル・コンサートの歴史に名を残すであろう驚異的な内容となっていた。

一度きりのイベントのために構築された、世界中の人々が繋がるバーチャル・ワールド

 前提として、『Secret Sky』におけるアーティストのパフォーマンスはYouTubeを通して配信されており、タイムテーブルに合わせて配信内容が切り替わっていくというオーソドックスな形式を採っている。特徴として挙げられるのは、「映像枠の使い方自体はそれぞれのアーティストに委ねる」という部分であり、サイケデリックなVJで画面を覆い尽くすIMANU B2B Buunshinといったアクトもいれば、事前に撮影したであろう映像を盛り込みながら全く異なる3箇所の空間に分かれてパフォーマンスをするKero Kero Bonitoもいるといった具合に、良い意味で統一感がない。あくまでアーティストのクリエイティビティを投影する自由なキャンバスとして機能しているのだ。このようなアプローチ自体がバーチャルらしい試みであるとも言えるだろう。

 とはいえ、これは昨年の開催時も同様であり、形式自体は一般的なものだ。『Secret Sky』の最も特徴的な点は、このパフォーマンスを鑑賞する「空間」にある。ポーター・ロビンソンはこのイベントのためだけに、人々が実際に集まってライブを楽しむことができるバーチャル・ワールドをいちからインターネット上に構築してしまったのである。

Secret Sky 2021 Recap

 今回のイベントでは専用のWEBサイトが用意されており、そこにアクセスしたユーザはこの『Secret Sky』のために創り上げられた世界に入って、一人のアバター(ポーター・ロビンソンのアイコンとも言える顔文字を彷彿とさせるキュートなデザインだ)として自由に移動することができる(気分が高揚した時にはジャンプをすることもできる)。

 一度世界に入れば、すぐにその美しい景色に圧倒される。巨大な大樹がそびえ立ち、豊かな自然に彩られたフィールドはまさに彼の新作『Nurture』を思わせる世界観だ。正面には巨大なスクリーンとそれを彩る照明が設置されており、映し出されるパフォーマンスの模様を世界中から集まったアバターたちが一緒に楽しんでいる(アバターの頭上にはアクセス元の地域名が浮かんでおり、どこから来たのかが分かるようになっている)。また、アバター同士でのボイスチャットも可能となっており、同じ空間にいる人々の会話が聞こえてきたり、それに参加することも可能だ。まさに、今や懐かしさすら覚える野外フェスティバルのような光景が構築されていたのである。更にこのバーチャル・ワールドは4つのエリアに分かれており、ステージを遥か上空から見下ろすことができる場所や、全くテイストの異なるサイバー色の強い空間など、好みや気分に合わせてそれぞれの空間でライブを楽しむこともできるようになっている。

 また、今回の『Secret Sky』ではOculus社とのコラボレーションを実現しており、Oculus QuestなどのVRヘッドマウントディスプレイからアクセスすると、この世界をVR空間で楽しむことができる。筆者も自前のデバイスを使って『Secret Sky』に参加していたのだが、ポーター・ロビンソンが創り上げた美しくユーモアに溢れた世界を探索したり、目の前にいる大量のアバターに圧倒されたり、他のアバターのボイスチャットに参加したり、モーショントラッキングと連動して動く腕でコミュニケーションを図ったりと、まるで『VRChat』のように極めて没入度が高く、他者との緩い繋がりに満ちた体験を味わうことができた。

 実は『Secret Sky』において「イベントのために用意された世界に入り、人々が集まる」という試みは今回が初めてというわけではない。昨年度も一つの空間を一人ひとりが線となって共有するという世界が構築されていたのである。だが、明らかに今回の内容はレベルが違う。ここまでバーチャル・ライブにおいて「他者」の存在をリアルに感じた経験は他にないと言って良いだろう。この「みんなで同じ空間を共有している、そこに他者が存在しているという感覚」こそが、今回の『Secret Sky』を極めて特別な体験へと引き上げていたのだ。このコンセプトを提示したポーター・ロビンソン、それを実際に形にしたActive Theory(昨年から引き続き担当)の才能にただただ驚かれされるばかりである。

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