アミューズ、なぜWeb3領域の新会社設立? 株式会社Kulture代表取締役・白石耕介氏に聞く「次世代エンタメの創出」

アミューズ、なぜWeb3領域の新会社設立?

Web3に長けた新進気鋭のスタートアップもIPを求めている

ーーここからはKulutreFUNDについて伺いたいと思います。まず、なぜファンドを設立するに至ったのでしょうか。

白石:Web3という新しい潮流のなかで、時代に沿った新しいエンターテインメントを作っていきたいといっても、最先端のテクノロジーを用いてサービス開発するのを全部自分たちでまかなうことは到底できないと思っています。ゼロベースでメタバースのワールドを構築するのに、自社で優秀なエンジニアを抱えて開発するよりかは、世の中には素晴らしい技術を持ったスタートアップがどんどん出てきているので、そういう人たちと協業しながら新しいプロジェクトを作っていくことがKulutreの使命だと考えると、ファンドを立ち上げてWeb3やメタバースに感度の高いスタートアップとの繋がりを築いていきたいと思ったんです。「会社規模としてはまだ大きくないけれど、技術は圧倒的に秀でている会社」って、実は結構いっぱいあるので、そういうところに出資をしながら、Web3という新たなインターネットの潮流のなかで、共に新たなエンターテインメントやIPを生み出していきたい。また、Web3やブロックチェーン、メタバースなどはまさに、IPが主役になるようなインターネットのトレンドなので、そこに対してスタートアップもIPを求めているし、我々も新しい技術を求めている。なので、アミューズがファンドを立ち上げて、Web3領域で勢いのあるスタートアップに投資をしながら、彼らにアミューズのIPを使ってもらい、我々も彼らの力を借りながら両者ともバリューアップしていくのが重要だと捉えています。

ーーファンドの規模感や、出口戦略を考える上でどのような会社に出資予定かなどの方向性は?

白石:我々の目的は、お金を投資して上場させてリターンを得るみたいなことは、正直全然思っていなくて。もちろん、結果的にそうなることは否定しないですし、上場に伴うリターンが得られるのは嬉しいことですが、素晴らしい技術や思いを持ったスタートアップの起業家たちに我々のIPを接着させ、彼らのバリューアップをすることで、世の中に新しい感動を生み出していきたいと考えています。新しい感動を世の中に出すことがアミューズの使命だとすると、彼らの新しい技術を使って面白いことを手がけ、新しいエンターテインメントを一緒に生み出していきたいという思いが、KulutreFUNDのベースになっていますね。

 また、投資先についてですが、Web3の文脈って、特に海外ではものすごいスピードで成長しているので、国内に限定するとか、逆に海外しか出資しないとかの縛りはありません。海外のスタートアップも、日本のIPに対して魅力を感じている側面もあるので、国内外問わず、両方を視野に入れて出資していきたいと思っています。

Web3はあくまで手段。面白くて感動するエンタメを作れるかが鍵

ーーNFTやメタバースなどの技術は、エンターテインメント領域でどのように活用できそうか、これまでに分かってきたことがあれば最後にお聞きしたいと思います。

白石:メタバースで言えば、一般的なユーザー層がVRゴーグルを装着し、完全に仮想空間の中に入って何かをするという世界は、まだまだ先になると予想しています。ただひとつ言えるのは、今までと価値感が全然違うということ。よく言われるのは“リアルなライブにバーチャルでは勝てない”という主張ですが、これは捉え方が少し異なると思っていて。リアルとバーチャルは全く別のもので、比較対象にならないと思うんですよ。なので、そこは混同しないように意識しながら、さまざまな可能性を探っていく段階だと考えています。また、NFTにしてもそうですが、アーティストの価値を切り売りしてコンテンツを作るというのは、あまり本質的な意味を成さないと感じています。それは先ほどのメタバースの話にも通じるんですけど、いわば新しい技術なので、新しい面白さみたいなことをいかに演出できるかが鍵だと思うんですよね。

 翻って話すと、これはNFTしかりメタバースしかりですが、アーティストの良さを最大限に引き出して、ファンの皆さんにより楽しんでもらえるアウトプットをすることが何よりも重要だと思っています。もちろん、技術主導で試行錯誤しながらチャレンジしていくことは大事ですが、何もWeb3とかNFTとかメタバースというもの自体がやりたいわけではなく、それを生かして次のエンターテインメントを創るというのがミッションかな、と。

 これらを活用することで、世の中に面白くて感動できるエンターテインメントを届けることが我々の目指すべきことで、テクノロジーはあくまでもその手段でしかないと思っています。

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