アミューズ、なぜWeb3領域の新会社設立? 株式会社Kulture代表取締役・白石耕介氏に聞く「次世代エンタメの創出」

アミューズ、なぜWeb3領域の新会社設立?

 サザンオールスターズによる国内初となる複数プラットフォームでの同時有料オンライン配信ライブや、PerfumeのNFTアート「Imaginary Museum “Time Warp” -Reconstruction」、BABYMETALのNFTトレーディングカードやNFTバーチャルスニーカー施策の実施など、新技術の活用に取り組んできたアミューズ。これまで以上にエンタメを発展させるため、既存事業にWeb3やメタバース等の技術トレンドを取り入れ、新しいサービス / 事業 / IPを生み出す場として株式会社Kultureを設立した。

 今回はそんな株式会社Kultureの代表取締役を務める白石耕介氏にインタビュー。アミューズのデジタル部門を牽引する彼が、新たな組織を立ち上げ、エンタメ×テクノロジー領域に注力している理由について、たっぷりと語ってもらった。(編集部)

アーティスト活動におけるデジタル文脈の必要性

株式会社Kulture 代表取締役 白石耕介氏

ーー白石さんは2016年にアミューズに入社し、そこから同社のデジタルビジネスやファンサービス部門を牽引されてきましたが、あらためて次世代のエンターテインメント創出を目的とした新会社「Kulture」を立ち上げた背景をまずは伺いたいと思います。

白石耕介(以下、白石):アミューズはアーティストマネジメントが主体の会社であり、所属するアーティストのポートフォリオを拡充しながら様々なビジネスに取り組むことで成長してきましたが、今後よりエンタメ産業を取り巻く外部環境がテクノロジーの進化と共に変わる中で、エンタメ企業と言えどもテクノロジーに強い企業体になる必要があるというのが根幹にあります。

 とりわけ昨今のWeb3やNFT、メタバースといった新たな潮流は、今後エンタメビジネスにおいて非常に重要になると捉えており、これらの新しい技術群とエンターテインメントを融合して、新たなエンタメを創出するための箱を作り、スピーディーに様々なプロジェクトにトライする環境を整備するというのがKulture設立の背景や狙いです。

ーーいまの時代、Web3をはじめとした様々なテクノロジーやSNS、ライブ配信プラットフォームなどのサービスが台頭してきたことでエンターテインメントビジネスのあり方が変わってきています。

白石:アミューズでもPerfumeやBABYMETALがいち早くNFTにトライしてきましたが、まだNFTやWeb3といった潮流において、本質的な価値を体現したようなプロジェクトは国内では少ない印象です。ただ、これはまだ始まったばかりの黎明期だと思いますし、最近は次の時代のエンターテインメントを創造するのにWeb3は大きな鍵になるということが、エンターテインメント産業に関わる人の間でもだいぶ浸透してきたなと感じています。

 ただ、現実問題として、これまで長く続いてきた企業文化と人材の中で、いきなり最先端のテクノロジーを取り入れたWeb3のソリューションビジネスを立ち上げたり、デジタル文脈のアーティスト活動を促進したりすることって、正直かなり難しい。それはエンターテインメント業界に限らずあらゆる業界に同様のことが言えると思いますが、歴史がある企業の中でこれまで自分たちが良いと思っていたアウトプットとは異なる動き方、価値観を持って推進することになるので、言うのは簡単だけど実際は一筋縄ではいかない。

ーー旧態依然な考えを持った人材と、テック界隈に精通する人材とのハレーションが生じたりと、何か新しいことをやろうとするとなかなかうまくいかないことが多いですよね。

白石:そうなんですよ。私自身もテック業界で長年キャリアを積み、アミューズに入ったわけですが、エンジニアやデザイナーが自分たちの能力を発揮し、エンターテインメントとテクノロジーを融合させたものを作ろうとしても、従来の組織体の中では思うようにバリューを出せないというのを身をもって感じています。こうした課題に対するソリューションとして、テクノロジー文脈の新しい会社を作るべきなのではと考えた結果、Kultureというある種別の箱を作ったわけなんです。アミューズのいいところは引き継ぎつつ、変えていかなければならないところは変えながら、今までのとは別の文化、別の形で事業を営んでいく。テクノロジーを支えるエンジニアやデザイナーが伸び伸びと働けるような環境を、まずは作るべきだと。このような思いからKultureを立ち上げ、次世代のエンターテインメント企業としてやっていくことを決意したんです。

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