にじさんじの“朝の男”伏見ガクが持つ、「生真面目」で「残念」な魅力
現在のVTuberシーンにおけるトップランナーの一つであるにじさんじ。そのなかにおいてもタレントの活躍する分野は日々拡がっている。
メインとなる生配信に加え、事務所が主導する企画への参加や監修、主に一人ひとりのライバーが主導となって進む歌ってみたなどの動画のほか、ここ1年ほどはエンターテインメントのフィールドで、アーティストとして日の目を見る者も増加している。
元2期生についてここ数か月にわたって執筆してきたが、今回は最後の一人となる伏見ガクについて書いていきたいとおもう。
2018年3月19日にYouTubeにて初配信しデビューを果たした伏見。この初配信では最初の3分ほどマイクをミュート状態で話してしまったり、挨拶を何度も間違えるなど、当時の緊張が伝わってくる姿が見ることができる。
しかも彼の初配信は、なんと午前7時30分という早朝の時間帯に行なわれたことも付け加えておきたい。現在では多くの視聴者に見てもらいたいという狙いもあって夕方から夜にかけてデビュー配信をすることが多いため、それも含め、まだ成熟しきっていない当時のシーンがうかがえる。
うぉぉぉおおお!!
— 伏見ガク(22)†にじさんじ所属 (@gaku_fushimi) March 5, 2018
伏見といえば、真面目、温和、さわやかな人柄が特徴として挙げられるだろう。茶髪の短い髪形に襟足を結んだ髪型、少しトーンが高い声という外見のイメージに加え、先輩・後輩に「さん」「くん」「ちゃん」といった敬称を欠かさず、暴言や悪口を吐くような振る舞いがほとんどないことも、その印象をつよくさせてくれる。
声を高めに張ってハキハキと会話する彼の口調は、初期に先輩・同僚らに真似されることが多く、雑な伏見ガクの物真似≒「雑ガク」として一時期に流行した。2022年のいま、「雑ガク」はほとんど見られることはなくなったものの、彼の振る舞い・口調がいかにクリーンであったかを示す、象徴的なエピソードといえよう。
彼が爽やかな人物だと思われているのはこういった点だけではなく、彼の代表的な配信による影響が大きいともいえる。
彼がデビューから続けている『おはガク!』は毎週金曜6時45分から始まる定期配信で、毎回のように「朝食」を決め、伏見・リスナーともども一緒に朝食を食べながらトークしていくのがこの配信の面白いところだ。
伏見ガクのリスナーやファンはTwitter上でタグを使い、その週の「おはガク!」でテーマとなった食材・ご飯にまつわるファンアートを投稿したり、自身が食する朝ごはんをアップしたりと、ファンからの投稿も積極的だ。
伏見も配信中に朝食をたしなみつつ、積極的にリスナーの投稿をチェック、ファンとともに笑いながら配信を届けてくれている。伏見ガクとファンとの交流、加えて「ファンがファンを確認し合える」ような場所へとしっかり固まっていった。
じつはさきほど書かせてもらった初配信、タイトルを見ていただければお分かりのように「おはガク」としての初配信でもある、ということに気付いただろうか。デビューから5年目へと向かい始めた現在、彼と朝ごはんとの関係は切っても切れないほどになっていったのだ。
「みんなで朝めしを食べたいと考えていてな?」いまとは少し違った口調でリスナーに語りかける伏見ガク。デビュー時に思いついただけの企画が、まさか4年以上経過しても続くようになり、自身の活動にとって中心となりえる配信になるとは、このときはまさか思っていなかったであろう。
元1期生・元2期生のなかにあっても、ここまで長期間続いている定期配信は本当に指折りである。彼の真面目さ、温和さ、爽やかなイメージを語るにふさわしい長寿配信だ。