プロ野球に導入された「リクエスト」制度、現状までの成果と課題は? 米メジャーリーグとの比較から考察
プロ野球が開幕して1ヶ月、昨年ブレイクした期待の若手のさらなる成長、入団したばかりのルーキーの活躍、ベテラン選手の復活など、今年も目が離せないシーズンが繰り広げられている。
サッカーやバスケットボールなどと違い、試合時間が固定されていないのが野球の特徴のひとつ。延長戦にもつれこむような接戦となれば、4時間を超える試合になることも決して珍しくない。ゆえに、選手交代時のスピードアップなど、少しでも試合時間を短縮する呼びかけが行われている。
年々、試合時間は短縮されてきたが、今年は4月24日時点の平均で、昨年より2分間長い3時間10分が記録されている。まだサンプル数は少ないものの、長時間化の要因とされているのは、今年よりスタートした新ルール「リクエスト」だ。
「リクエスト」を簡単に説明すると、試合中に審判が下した判定に対して異議がある場合、監督が2回まで映像でのリプレイ検証を求めることができるというもの(判定が覆れば回数は減らない)。昨年までもポール際のホームラン判定、本塁でのクロスプレーなど、一部のプレーに対してビデオを使ったリプレイ判定が行われてきたが、あくまでそれは特例であり、審判団が観ている映像も非公表。基本的には審判員のジャッジが覆ることはなかった。
しかし、野球中継における映像技術の発展もあり、この数年は明らかな“誤審“も目立つ。ひとつの判定が勝敗を分けてしまう、ひいては選手のキャリアまで左右してしまう世界の中で、正確さを求める声が上がるのは必然だ。
5月6日、横浜スタジアムにて行われた横浜DeNAベイスターズ対読売ジャイアンツとの試合では、DeNAロペス選手のポール際へのホームランの判定をめぐり、「リクエスト」が行われた。結果、判定は覆り打球はファウルとして試合は再開。球場のスコアボードに審判団が判断している映像が流れることで、ベイスターズファン、および選手たちも納得できただろう(その後、ロペス選手が打ち直しのホームランを放ったことも素晴らしかった)。開幕から1月が過ぎ、これまで12球団のリクエスト総数は50回以上を記録し、およそ4割の成功率となっている。選手・監督だけでなく観戦者も共有の上、リプレイ検証が行われる現行の制度は一定の成果を挙げていると言えそうだ。
一方、米国メジャーリーグでは、2014年より「チャレンジ」制度として導入され、専用のスタジオをニューヨークに建設、各球場には7台から12台におよぶ専用のカメラを設置するなど、約30億円にもおよぶ設備投資が行われた。
プロチーム数から、選手の年俸、各球場の収容人数など、日本プロ野球とはスケールに大きな差があるとはいえ、日本の「リクエスト」制度には新たな設備投資はほとんど行われていない。地上波放送や衛生放送などで使用されている映像を、そのまま審判団が確認するにとどまっている。
どの球場でもあらゆる角度から判定を検証できるメジャーリーグに対し、日本は各球場で設備の質に差があり、何より地方球場においては不十分さが目立つ。審判団が判定を行っている際のリプレイ映像が球場のスクリーンに映し出され、観客が一緒に盛り上がる現象もひとつの名物になってきているが、「リクエスト」制度にはまだまだ改善の余地があるのが現状だ。