デスクワーク中のウェブカメラから監視されている? 「猫背防止ソフト」に疑惑の声

「猫背防止ソフト」に疑惑の声

 長時間のデスクワークで姿勢が悪くなり、腰痛や肩こりに悩まされている人は多いのではないだろうか。在宅勤務となれば、周りの目がないことから、よりだらしない姿勢になりがちだ。そんな人にうってつけかもしれないのが「Zen」というサービスだ。姿勢検出ソフトを使って、デスクワーク中に猫背にならないようサポートしてくれる。

 ただ、気になる点が。このサービスはウェブカメラを使って、ユーザーの姿勢をチェックする。つまり、Zenのソフトウェアがレンズ越しにユーザーの仕事ぶりを「見る」のである。

 アメリカでは、ウェブカメラを通してアメリカ国家安全保障局(NSA)が日常を監視していると信じ、ウェブカメラにシールを貼る人が一定数いる。そんな人には悪夢のようなサービスだ。一方で、NSAを恐れていない人にも悲報がある。このサービスは一般消費者にツールを提供するだけでなく、雇用者向けにサービスを販売しているのだ。

 自分の働きぶりをZenとNSAと雇用者に監視されるかもしれないと考えると、「心が動揺することのなくなった状態」を指す「禅」のマインドからは程遠い心持ちになりそうだ。

 ウェブカメラを使ったツールのディストピア的な使い方は想像に難くない。このようなことはSFではないからだ。思い出されるのは、昨年Amazonがドライバーの「安全性」を評価するために使用するとして、AIを搭載したカメラをプライム配送車に搭載した出来事だ。批評家から即座に「オーウェル式監視(SF小説に登場する一般市民常時監視)」だと批判された。

 Zenは「プライバシー重視」のアプローチをとっていると主張する。ソフトウェアは姿勢の検出にインターネット接続を必要せず、デバイス上でローカルにデータを処理するとのこと。「我々や雇用主がビジュアルを記録・保存し、最終的にスパイすることは技術的に不可能です」と強調。Zenのソフトウェアを使用する雇用主が受け取れるのは、会社単位で何人が週単位で使用したかという「集計」と「匿名」の情報だけだ。

 さらに、一日中ソフトウェアをオンにする必要はない。朝などの特定の時間に姿勢のチェックを習慣化しているユーザーや、ビデオ会議で使用するウェブカメラを必要とするアプリケーションと組み合わせて利用するユーザーも多いとのこと。「ZoomやGoogle Meetではカメラを起動しているので、プライバシーの侵害を心配する必要はありません」と指摘。

 良い姿勢の維持はデスクワーカーの健康の要だ。しかし、プライバシーを重視するデスクワーカーにとってはレンズの前に座っている状態がストレスになり得る。プライバシーと姿勢、どちらを重視するか次第だが、結局のところウェブカメラのレンズを隠すために貼るシールの方が、心と体に健康をもたらすかもしれない。

(Source)
https://techcrunch.com/2022/04/29/zen-pre-seed-posture-correction/
https://www.producthunt.com/posts/zen-2

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