音楽とNFTは本当に相性が悪いのか? MUSIC3の可能性に挑む『FRIENDSHIP.DAO』から考える

音楽×Web3の“相性”を考える

相反し合う“音楽”と“NFT”。どうバランスを保つかが鍵になる

ーーここからは音楽とNFTの関係性についてお聞きできればと思います。音楽ではデータであり、ヒット曲という“現象”も含めて不特定多数の人に聴かれることで収益に結びついていくのが前提になっています。いわば、バイラル(拡散)したがる“情報”という性質を持ち合わせている一方、唯一性を重要視するNFTのマーケットはある種相反するものであると言えます。こうしたなかで、ちょうどいいバランスの取り方や効果的に運用していくための掛け合わせ方などは、どのようなものが考えられるのでしょうか。

タイラ:赤澤さんからNFTについて教えてもらうなかで、「NFTに対する捉え方が画一的すぎるのでは」と考えるようになったんです。要は、音楽NFTが一点ものであり、唯一性があるがゆえに希少性が高いと言えるわけですが、実はそれって本質的ではないんじゃないかと。そう思うんですよね。現在のNFTに対する狭義な捉え方は、ある種可能性を狭くしてしまっていて、もったいないなと個人的に感じています。NFTを持っていることのメリットや有機的に使っていく方法論などは短絡的なものではなく、複合的に色々な仕組みが作れる可能性があると思っているんです。その仕組みを持ってすれば、アーティストを多角的に支援できたり、リスナー同士がつながれたり、音楽の制作過程が見れたりと、NFTの有用性をより高めることができるでしょう。

 「音源の所有権をはっきりさせたものがNFTである」と思う人もいるかもしれませんが、そこだけではありません。むしろ、そこではないところに、NFTの本質が隠れていると考えています。ここの使い方については、まだそこまで真剣に議論されていないというか、模索している段階だと思っていて、これから実施していく講習会の先にあるのは「Web3やNFTでこういうことがしたい」という、アーティスト自らが提案をするようになってくることです。DAOの観点で言えば、フラットな関係性のなかでいろんな人から意見をもらえるようなコミュニティを作っていくのが重要になるでしょう。

山崎:NFTの潮流は、アートから音楽に流れてきていると感じています。アートに関してはNFTとすごく相性が良い。フィジカルな絵と同じく購入したNFTアートが資産となり、それを売ることで売却益を得ることもできるわけです。一方、音楽を所有してその価値を売却するという考え方はない。それがおそらく、僕らが最初にNFTの説明を受けた際にしっくりこなかった要因なのではと思うんです。基本的にいい音楽はバイラルさせていくというのが前提であり、その音楽を自分だけが所有するということを少なくともリスナーは求めていない。そんななか、FRIENDSHIP.DAOの取り組みを通して「NFTをコミュニティで使用する方が音楽と相性が良い」というのが見えてきています。ファンがアーティストを応援する上でNFTを使っていったり、アーティストとリスナーがつながる役割としてNFTを活用したりと、こうした形で音楽NFTが今後広がっていくのではと考えています。

赤澤:音楽にしろNFTにしろ、コミュニケーションツールのような側面があるように感じています。NFTを語る文脈としては、やはり投機的な需要や新たな収入源として捉えられることが多くなりがちですが、もう少し深く考えてみるとNFTもお金も人と人をつなげる接着材のようなものだと思うんです。結局、組織化したりコミュニティを作ったりするために、うまく循環させることができれば、ある程度は形になっていくはず。要は「何をするかよりもどう使うか」が結構大事だったりするわけです。NFTをどう売るかではなく、もう一段高い視点でNFTをどう使い、何をするのかが大切になる。音楽に関しても単に聴いたり売ったりするだけでなく、人と人をつないで新しい力学を作っていくのは、いまだからこそできることだと考えています。

キュレーターからスターが誕生すればもっと面白くなる

ーー国内の音楽業界においては、FRIENDSHIP.DAOが先進的な事例になっていくと思っています。現在はインディペンデントなアーティストを支援するために使っていくわけですが、大手の事務所やレーベルなどとアライアンスを組むなども今後は想定されているんでしょうか。

山崎:現段階では仕組みを作っていくことに注力していますが、その仕組みが完成すれば、いろいろなところに代用できるようになると話をしています。なので、将来的には多方面へ広げていくことを視野に、まずは中身をしっかりと作っていくことが先決だと思っています。こういう仕組みができることで、いままで支援をしてきた範囲外のアーティストとも関わりを持てると考えていて、それこそDAOは海外との親和性も高いぶん、海外のキュレーターメディアやインフルエンサーを取り込みながら、日本も海外も一緒くたのコミュニティにしていくような目標を掲げています。

タイラ:補足すると、現状のFRIENDSHIP.でもインディペンデントのアーティストのみならず、レーベル所属のアーティストもキュレーターの審査を通って水準を満たしていれば支援しています。FRIENDSHIP.DAOでは今後コラボやご一緒するアーティストが増えていきますが、そもそもFRIENDSHIP.はヒップランドミュージックが持っているリソースを内側に留めておくのではなく、それを解放することでみんな幸せになるという考え方をもとに作られたサービスです。これからも、人の輪を大切にしながらサービスを成長させていければと思っています。

赤澤:技術や仕組み云々よりも、FRIENDSHIP.がこれまでやってきたものの延長であり、拡張したものがFRIENDSHIP.DAOだと思っています。また、アーティストは前に出て目立ちますが、縁の下の力持ちであるキュレーターはあまり表に出る機会がなく、でもFRIENDSHIP.に限っては重要な存在になっています。会議でも「アーティストのスターは生まれるけども、キュレーターのスターは最近あまり出てこない」という話題が出ているんですが、新しい音楽との関わり方として、キュレーターがFRIENDSHIP.DAOに関わることで、スターが生まれたら、もっと面白くなるのではと考えています。これこそDAOの考え方を体現するものであり、まだまだFRIENDSHIP.DAOの可能性を追求していける余地が多分にあると思っています。

(メイン画像=Unsplashより)

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