『オーバーウォッチ』がヒーローシューターに残した功績 『2』の議論を取り巻く、ジャンル特有の難しさと醍醐味

『オーバーウォッチ2』に感じる“難しさ”

 国内で”eスポーツ元年”と呼ばれる言葉が流行し始めてから約4年。今まさに、eスポーツシーンにおける日本勢の躍進ぶりに各方面が多大な注目を寄せている。FPS(ファーストパーソンシューター)では強豪チームに勝つことは難しい”と評されていた日本勢が、”選りすぐりの強豪が集う『VALORANT』(FPS)の世界大会でトップ3達成”という偉業を成し遂げたのだ。

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 『VALORANT』における日本勢の快挙が話題となった一方、現在進行系でFPSゲーマーの関心を引くタイトルがあることをご存知だろうか。その名を『オーバーウォッチ』と言い、同作では特殊能力を備えたヒーロー同士によるチームバトルに焦点が当てられている。

『オーバーウォッチ』
『オーバーウォッチ』

 Blizzard Entertainmentが手掛ける『オーバーウォッチ』は2016年5月のリリース以降、全世界で累計6000万人ものユーザーを獲得。マルチプラットフォーム向け(PC・コンシューマー)に提供されているほか、地域ごとに分かれて争う主要大会「オーバーウォッチリーグ」をはじめ、eスポーツ周りの施策も盛んに行われている。また2021年度からはプラットフォーム間のクロスプレイにも対応し、次作『オーバーウォッチ2』の展開に向けた新ヒーローの追加、およびバランス調整等の情報が公開された。

 『オーバーウォッチ』が関心を引く理由、それは『オーバーウォッチ2』の第1回ベータテストがいよいよ満を持して開かれたからだ(4月27日~5月17日)。5年にわたって運営を続けた『オーバーウォッチ』はどのような進化を迎えるのか。その全貌が『オーバーウォッチ2』の製品版で明らかになるのはまだまだ先のことだが、本稿では”ベータテスト開催”というタイムリーなトピックに合わせ、『オーバーウォッチ』がプレイヤーにもたらした醍醐味、そして『オーバーウォッチ2』へ受け継ぐべき特有の魅力を改めて振り返る。

既存のFPSと一線を画した、ヒーロー主体のアクションシューティング作品

 上述の通り、『オーバーウォッチ』は作中でヒーローと呼ばれる超人的なキャラクターが主役のアクションシューターだ。ゆえに世界観はSF寄りで、ミリタリーテイストを押し出した”史実に基づく大戦モノ”ではない。試合は6人制のチームバトルとなっており、プレイヤーは性能と役割(後述)が異なるヒーローを1名選択してから戦いに臨む。

 遊び方も様々で、拠点を奪い合う「アサルト」やオブジェクトを護衛する「ペイロード」、FPSでは伝統的な「キャプチャー・ザ・フラッグ」など、単純なプレイヤーキルに留まらないゲームルールが本作の特徴と言える。

オーバーウォッチ | Nintendo Switch版 発売日告知トレーラー

 登場するヒーローの多さも特筆すべきポイントだ。2022年4月現在は計32体のヒーローが実装されており、プレイヤーは好みやプレイスタイルに応じて自由にヒーローを選択できる。

オーバーウォッチ公式サイトより
オーバーウォッチ公式サイトより

 「重装メカを操る元プロゲーマー」に「時間をコントロールする冒険家」、「実験の後遺症で超能力を手に入れた科学者」など、彼らのプロフィールは実に多種多様。ヒーローたちのバックボーンを元にしたメインシナリオ、および人物像を掘り下げるサイドストーリーも詳細に練り込まれており、Blizzard Entertainmentは「オーバーウォッチユニバース」として包括的に展開している。

難しいからこそ勝利の快感が愛おしい

 そんな『オーバーウォッチ』の醍醐味と言えるのが、”徹底的に役割を意識させるゲームプレイ”だ。たとえば『Call of Duty』や『Counter-Strike』などのFPSでは、プレイヤーが使用するキャラクター間に際立った性能差は存在しない(一部タイトルを除く)。カスタマイズ要素等は大小あれど、デフォルト状態のキャラクターはほぼ横並びというのが通例である。

『Counter-Strike: Global Offensive』
『Counter-Strike: Global Offensive』

 しかし、『オーバーウォッチ』のヒーローは目に見えて性能差……もとい個性がはっきり分けられている。火力を発揮して大ダメージを与える「ダメージ」、前衛に立って味方を守る「タンク」、補助能力で仲間の支援に回る「サポート」といった役割が存在し、プレイヤーは各ヒーローの特性を考慮しつつ、各々を保管し合うような立ち回りが求められる。

 ヒーローの強みや役割を無視した戦いはもってのほかで、仲間との連携なしでは満足に戦うことすら難しい。またそれなりの知識が無いと戦術の幅も広がりにくく、場合によっては為す術もなく負けてしまうことも多い。ゆえにメンバー同士がしっかりと力を合わせ、思い通りに試合を運ぶことができた際の達成感は、とにかくすさまじいのだ。

Overwatch League 2021 Season | Grand Finals

 試合展開がただでさえ目まぐるしいのに、さらに味方との連携も考えなければならない。なおかつヒーローの強みを生かした立ち回りも大前提となる。そのプレイ感覚はさながら『リーグ・オブ・レジェンド』のようなMOBA(マルチプレイヤーオンラインバトルアリーナ)に近く、ゲーム性を真に理解するためには相応のプレイ経験が必要である。もちろんカジュアルに遊ぶこともできるが、『オーバーウォッチ』の真髄は”チームメンバーとの完全調和の上に成り立つ快感”にあると言っても良いだろう。

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