連載:mplusplus・藤本実「光の演出論」(第四回)
身体性を持った光が、人間の知覚を変えて“巨人”を生み出すまで
――これを踏まえて、次にめざしていくポイントも改めて聞ければなと思います。
藤本:やりたいことは本当にいっぱいあって。まず今回の『Humanized Light』であれば、1体である必要もないし、ずらっといっぱい並べることもできるし。あるいは固定しないで歩かせることもできるので、どこにいてもあれが追いかけてくる作品もできるだろうなと。
――超大型巨人と中型巨人がいるみたいな形でも面白そうですね。
藤本:そうです。小人がいる空間からとかもできるし。あとは『Humanized Light』によって結構自分の考え方が変わりまして。いままでは量を増やさないといけない、性能をよくしないとだめだとか予算をかけないとものを作れなくなっていたんですけど、今回はなんのテクノロジーも使わずただ置いただけって、いう感じなんですよね。4つ置いただけで成り立ったときに、きちんと設計すればそれでいけるんだ、と気付いたというか。引き算の美学的なものにやっと気付けました。じつは、それ以降の作品に影響を及ぼしていますね。サイズは一番大きいんですけど。
――そうですね。規模は大きくなっています。
藤本:いままではクライアントワークをやる以上、ある程度派手にしないといけないという使命みたいなのはあって。やっと「自分ってこういうシンプルなの好きだったよな」と久しぶりに思い出せました。
いままで、自分の中ではアーティストとしての葛藤というか、ライブパフォーマンスでしかできないという悩みがあったんですね。かといって、自分らしくない作品を作るのもどうなんだとろうというのもありまして。今回それがやっと解決できたので一皮向けたような気がしています。ダンス以外のことでもできるので仕事の幅が広がるんじゃないかと思っています。とにかく新しいことに色々挑戦できているので、春くらいから新しいアウトプットが出せるかもしれません。