EXILEなどのライブを手がける藤本実に聞く“コロナ以降の演出”「参加型のライブがスタンダードになる」

EXILEなどのライブを手がける藤本実に聞く“コロナ以降の演出”「参加型のライブがスタンダードになる」

 特集「コロナ以降のカルチャー テクノロジーはエンタメを救えるか」の第一弾は、EXILEや三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBEなどのライブで活躍するLEDダンスパフォーマンスチーム「SAMURIZE from EXILE TRIBE」のシステムや光り方の構築や、4600個のLEDを使った旗「LED VISION FLAG」を開発するなどテクノロジーを用いたライブ演出を手がけるクリエイティブカンパニー・mplusplus株式会社の代表・藤本実氏が登場。

mplusplus – Stage Technologists(Global Promo Video)

 先日noteに投稿した「ライブ演出会社の現状」(https://note.com/minoru_fujimoto/n/n9061cefe516d)が話題を呼ぶなど、コロナ禍において大きな打撃を受け、そのうえで次への一歩を踏み出し始めた藤本氏に、ここ数ヶ月の業界の動きやコロナ以降のライブ演出のあり方などについて語ってもらった。(編集部)

「『どこかで絶対に立ち行かなくなる』と思うようになった」

ーーまずは、新型コロナウイルスの感染拡大から、現在に至るまでの状況を聞かせてください。

藤本実(以下、藤本):会社として、2019年から準備をしていた仕事ーー2020年内に行われるはずだった、アーティストのドームツアーとアリーナツアー、スポーツイベントやオリンピック関連のセレモニーなどがすべてキャンセルになってしまいました。EXILEさんとPerfumeさんがコンサートを中止すると発表した日(2月26日)から、本日まで仕事は全くありません。

藤本実氏

ーードームやアリーナのツアー、オリンピック関連など、大きなイベントが多かったんですね。

藤本:基本的に一つの仕事が大きいので数は出来なくて。その割に、常に3案件くらいをパラレルで動かしていてかなり慌ただしかったのですが、一気にそれらが消えてしまいました。あと、中国の工場に依頼していたLEDやデバイスの部品が届かなくなりました。

ーー世界的にも、中国に製造拠点を置いている企業は真っ先に打撃を受けています。

藤本:僕らの場合、春節の時期には仕事をお願いしないようにしていて、1月頭にまとめて納品してもらって、向こう1~2ヶ月は頼まなくても良いような状態にはしていたのですが、春節の終わりと同時に工場が動かなくなりました。

ーーイベントやライブがなくなった場合、mplusplusとしては開発にシフトするという手もあったと思いますが、そういった理由で開発もできなかったと。

藤本:はい。4月頭からようやく届き始めました。

ーー想像以上に、色んなものが突然なくなっていて驚きました。そこまで多くのことが重なると、精神的にも厳しいものがあったのでは。

藤本:中国の状況を見ていて、世界的なイベントであるオリンピックは延期か中止になるだろうと覚悟してはいましたが、日本国内のライブやイベントについては、3月は中止になったとしても、4月以降には動けるようになるだろうと楽観視していました。オリンピックの延期が決まったときも、会場が空いて延期になったライブができるようになるから、頑張れば何とかなるだろうと前向きな気持ちでいました。潮目が変わったのは4月1~2週目ですね。

ーー緊急事態宣言が出た、4月7日以降ということですか。

藤本:そうです。緊急事態宣言が出た直後も「1ヶ月しっかり休もう」というくらいでしたが、1日ごとに目まぐるしく状況が変わってきて「これはしばらく元に戻らないな。最悪、年内いっぱいは覚悟しないといけない」と社員と話し合うようになりました。

ーーそこから藤本さんの中で、どのように思考が変わっていったのでしょう。

藤本:そもそも短期間で元に戻る前提で、自分を含め社員の休養期間にしようと考えていたんですよ。会社を設立してからこれまで、かなりの速度感で突っ走ってきたところもあったので、ゆっくり思考する時間があってもいいんじゃないかなと。でも、年内は難しいかもと覚悟した瞬間に「どこかで絶対に立ち行かなくなる」と思うようになりました。それは自分たちだけでなく、ライブ業界全体を含めてのことです。

ーー公演の開催自粛によって、キャンセル費用を負担するライブ制作会社も大打撃を受けますが、それ以上に音響や照明、機材による演出を手がける会社も含めた“業界全体”の存続が危うくなると。

藤本:自分たちは他の会社と違って、機材を貸して運用するのではなく、今までないものを開発して運用するというのが特徴です。ですから、すぐに考え方を変えて「これから何を開発しようか」と前向きな気持ちになれたところはありますね。ただ、元々開発しようと考えていたものから方向性は変わり、社員全員で今まで見たことない様なものに挑戦している状況です。

ーーもともと作ろうとしていたのは、イベントやライブ演出の中で動かす“ウェアラブルな何か”ですよね。

藤本:これまでの延長線上で「100人でこれを持ったらおもしろいな」とか、ある程度の人数が集まるなかでのパフォーマンスを演出するもの、という考え方でしたが、それをいったん止めました。公演の自粛要請が段階的に解除していく期間と、終息してからでは求められるものが違うと思うんです。終息して規模感や観客数が元通りになった世界に関しては、あまり心配していません。ただ、段階的に解除されるまでの期間は、ライブは実施できても制限があることを前提に何ができるかを考えています。

ーーオンラインでの開催や、同一空間でも観客同士がソーシャルディスタンスを守る前提だったり。

藤本:そうですね。生で体感してもらうことを前提に演出していたことが難しくなっていますが、世界を見渡して見るとTravis Scottが『フォートナイト』で行ったライブのように、ゲーム業界やVR業界と手を組むという流れは生まれています。ただ、自分たちがそこで戦うのは違うのかなと思っています。

ーー“そこ”というと?

藤本:例に挙げたTravis Scottの取り組みやその他のライブ配信は、あくまで“ディスプレイの中の表現”として考えられたものですし、多数の人はその制約のなかで何か新しいことををやろうとしています。

ーーなるほど。先日Twitterに投稿して反響があった「家のディスプレイの周囲につけたLEDテープが、ライブ映像と同期して光る」という動画は、確かにディスプレイの外を演出するものでした。

藤本:あのデモはほんの一部なのですが、ライブの良さである“同じ空間を共有して繋がる”という体験を、今回のようなデバイスを通すことで、リアルに感じられるんじゃないかと。

ーー画面の中で起こっていることはバーチャルに体験したと捉えがちですが、ディスプレイの外のものを動かすことで”現実を拡張する行為”にシフトするわけですね。

藤本:まさに。まだ簡単な実験をしただけですが、ディスプレイの中で起こっていることと、その外で起きることでは、感じ方が全く違うなと気づかされました。単に音楽を楽しむためというより、自分のいる空間で何かが起きるというのが、ライブに足を運ぶ意味でもあるんだよなと。

ーーnoteにも「LEDがあるだけで高揚感が全然違ったり、ライブの非日常感や臨場感にLEDがすごく重要な役割を果たしていたと気づいた」とありました。

藤本:ライブにおけるLED照明の演出とディスプレイって、一般の方からすれば一緒だと思うんです。開発・演出してる僕自身も、そんなに変わらないと思っていましたから(笑)。わかりやすく言うと、もし、照明やレーザーが存在していなくて、ディスプレイだけがあるライブで満足できるなら、ライブに照明なんて必要ないはずですよね。でも実際は、アーティストの後ろにディスプレイがあって、アーティストにピンスポが当たってるだけでは成立しなくて、すごい数の照明がアーティストだけでなくお客さんに向いていたり、ストロボやLED、レーザーと多くの演出があって、臨場感や非日常感が生まれるわけです。そんななかで、「家だとディスプレイに映ったアーティストを見ているだけなのが当たり前」という前提条件を取っ払って、ほかに出来ることがあるんだとわかってもらえたら嬉しいです。

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