連載「MCUの『ゲーム横丁8丁目』」第1回:スーパーカセットビジョン
ファミコンを買えず、仕方なく手に入れた「スーパーカセットビジョン」に人生を狂わされた話
家でゲーセンのゲームが遊べる! スーパーカセットビジョンの衝撃
スーパーカセットビジョンは当時のアーケードゲームの移植とかはないですけど、似たようなタイトルはありました。
そのなかで、『エレベーターファイト』はタイトーの『エレベーターアクション』にも似ていましたが、いい意味でスーパーカセットビジョンらしいゲームでした。4面までしかないですけど、名作中の名作でしたね。ちなみにエレベーターファイトも、ゲーム中はほぼBGMはないです。スーパーカセットビジョンは、3音しかないんですよね。
だけど、ファミコンと比べてスーパーカセットビジョンは、スプライトの数が多いんですよ。たしか単色だと同時に128個表示できるんです。スプライトの表示はサイズでも変わりますが、16×16ドットの表示能力を比べた場合、ファミコンでは3色のキャラクターを16個まで表示できるのに対して、スーパーカセットビジョンは4色のキャラクターでも32個まで表示できるんですよね。
それと当時のファミコンや一般的なゲーム機はRF出力でテレビのアンテナ端子に接続するんですが、スーパーカセットビジョンはRF出力のほかにRGB出力(RGB21ピン)が付いているんですよ。変なこだわりを感じました。
それと本体に10キーも付いていて、ボタンが12個あって、ここは『ベーシック入門(プログラミング用)』で使ったり、『スーパー麻雀』とか、10キーにオーバーレイというポン・カン・チーとか書いてあるシートのようなものをかぶせて専用のボタンとして使ったりするんですよ。
あとコントローラーのレバーがゲーセンチックで。十字キーみたいなものじゃなくてちゃんとしたジョイスティックですよ。やりにくいけど(笑)。
当時のファミコンにはなかったゲームのポーズボタンが本体にあったり、僕のスーパーカセットビジョンはフタが外れてなくなっちゃたんですけど、コントローラーも本体に収納できたりしますしね。スーパーカセットビジョンはちょっと変なところにこだわっているという感じですね。
それと、カセットの小ささがまたいいんですよね。説明書も全部統一感があって、そういうところも好きです。
あと、子どものころにスーパーカセットビジョンがすごいと思ったのは、ローンチタイトルで『アストロウォーズ』という固定画面のシューティングゲームがあったんですが、ファミコンでいうところの『ギャラガ』や『ギャラクシアン』のようなゲームですね。
このアストロウォーズのカセットをさすと、2台のコントローラーがどっちも反応するんですね。どちらでも操作できちゃうんですよ。
そこで考えたのが、小さめのイスを用意して強力なテープで、1台目のコントローラーは裏にテープを貼ってピタッとイスに固定して、2台目のコントローラーは側面にテープを貼ってボタンを押せるようにイスに縦置きに固定したんですよ。すると、アケコン(アーケードコントローラー)になるというね。そんな発見をしました(笑)。
アケコンという商品や概念がない時代で、のちの本格的なアスキースティックというジョイスティックよりも早いアケコンですね(笑)。そういう発想まで浮かんじゃうというのがスーパーカセットビジョンなんですよね。ソフトも少ないし、ゲームの面も少ないし、やることがすぐになくなっちゃうので、そういうことにたどり着いちゃうんですよね。
それがすごい、自慢だかなんだかわかりませんけど(笑)。とにかくゲームセンターのゲームに近づけたいという気持ちが強く生まれましたよね。
遊びつくしたスーパーカセットビジョン
とにかくスーパーカセットビジョンは、遊びつくしました。
そのころ、ファミコンは月単位で毎月新作ゲームが発表されるんですが、スーパーカセットビジョンは、そういうのはないんです。だから、買うものもあまりなくなってきて、ついには『将棋入門』にまで手を出して、「やべぇ、将棋入門が出た」みたいなことになっちゃって、そのとき将棋のルールも知らないのに買って、スーパーカセットビジョンの将棋入門で将棋を覚えました。入門でルールを覚えるという理にはかなっていますけどね(笑)。
だけど、スーパーカセットビジョンがすごいのは、いち早くパソコンゲームなどではおなじみの日本ファルコムが参戦していて、当時もパソコンゲームの人気タイトルだった『ドラゴンスレイヤー』が移植されているんですよね。
スーパーカセットビジョンのゲームは30タイトル出ているんですけど、最後の3タイトルはナムコ(のちのバンダイナムコアミューズメント)なんですよね。『マッピー』、『スカイキッド』、『ポールポジションII』が出ているんですよ。
『マッピー』と『スカイキッド』はファミコンでも出ていたけど、『ポールポジションII』と『ドラゴンスレイヤー』は、スパカセにしかなかったから自慢でした。
しかし、当時はスーパーカセットビジョンの情報を入手するのは苦労しました。情報が載っているのは『ゲームボーイ』という雑誌ぐらいでしたからね。その他のゲーム雑誌にはスパカセの情報が載るようなことは少なかったので、僕は新作が出るタイミングぐらいで、毎回、エポック社さんに直接電話をしては、チラシを取り寄せて集めていました。今、そのチラシの価値も上がっているんですけど、残念ながら自分の持っていたチラシはどこに行っちゃったかわからないんですよ。毎回、ゲームが1画面ずつ紹介されているんですけど、チラシが変わるたびにそれを眺めて、どんなゲームか想像していましたね。
ファミ通やファミマガにはスパカセの情報はほとんど載っていないですから、新しいゲームを買うのもチラシが頼りでした。
情報が少なかったからこそ詳しくなった……
ゲームのタイトルでいえば、これなんかもすごいですよ、『マイナー2049er』。マイナー2049erは「全米'83エレクトロニクスゲーム・オブ・ザイヤー」を受賞しているんですよ。あと『バルダーダッシュ』もすごいですよ、「全米'85マイコンゲームヒット・チャート上昇中」ですから、受賞とかはまだしてない(笑)。バルダーダッシュは、のちにファミコンにも移植されましたけど、どちらもPC用のゲームで名作ですよね。
とにかく『マイナー2049er』はめちゃめちゃ面白いですよ。固定画面型の人間がやる『シティコネクション』みたいな、床を塗りつぶしていくみたいなゲームです。
エポック社さんってゲーム市場もちゃんと見ていて、PCからの移植もしっかりと考えていて、かなりスーパーカセットビジョンに対する本気度は高かったですよね。
あと、エポック社さんはアニメと野球に強いですね。
元々リアルな野球盤を出している会社なので、スーパーカセットビジョンでもいち早く野球ゲームを出していて、『スーパーベースボール』も原監督(当時は選手)の写真が載っている『巨人軍 原辰徳のスーパーベースボール』というパッケージもあったりしていましたね。
アニメでは『ドラえもん』もあったし、『ドラゴンボール ドラゴン大秘境』もあったし。早くからアニメタイトルがありましたね。
ドラゴンボールのゲームは早く出たのはよかったんですが、ファミコンで出ていた『ドラゴンボール 神龍の謎』と比べて視点が特徴的でした。なんせ上からの視点で、筋斗雲に乗っている悟空を上から見ている状況の、『ゼビウス』のような縦スクロールシューティングでしたね。子どものころ、鉛筆をくねくねさせて曲がっているように見えるというのが流行ったじゃないですか。あんな風に如意棒をくねくねさせたりかめはめ波を撃ったりして敵を倒すゲームでした。それでドラゴンボールを集めるんですけど、1面でドラゴンボールを逃しちゃうとまた1面のやり直しという、結構、鬼畜なゲームでしたね。
そして『ポップ&チップス』もちょっと特別なゲームでした。全30面あって、エディットモードで自分でも面が作れるんですけど、よく見るとカセットが普通のゲームよりもでかいんですよね。なんで大きいかわかりますか? カセットに単三乾電池を2本入れるんですよ。これで自分の作った面をバックアップできるという、データが消えることないというカセットでした。1カ月に1回ぐらい電池を換えないと消えちゃうんですけどね(笑)。
ROMでこんな単三乾電池を入れてバックアップをするものって、家庭用のゲームであるのかな? これと『ベーシック入門』と『ドラゴンスレイヤー』の3本がバックアップできるROMでしたね。
スーパーカセットビジョンでは、ゲームだけじゃなくて『ベーシック入門』もやっていました。スーパーカセットビジョンのベーシック入門はキーボードがないんですよ。ファミコンの『ファミリーベーシック』のようなキーボードはついてなくて、本体の10キーとコントローラーを使って、文字を入力することができたんですよ。たいしたゲームは作れないんですけど、これでプログラムできたんですよ。