DJ RIOと0b4k3が語り合う、メタバースにおける“場所とコミュニティ”のつくり方

“メタバース×建築”の奥深さ

GHOSTCLUBの”クラブらしさ”はどこから生まれたのか

――初回の最後、DJ RIOさんが対談したい相手として0b4k3さんのお名前を挙げられたのが今回の対談の経緯ですね。改めてお互いを知ったきっかけや印象についてお話しいただけますか。

0b4k3:そうですね。多分3年前、GHOSTCLUBを始めたばかりくらいのとき、確かまだDJ RIOとして活動されていなかったころに来場されてたと思うんですよね。

DJ RIO:よくご存知で! 僕もいま、自分のスクショのアーカイブを探ってみたら、最初は2018年の4月にお邪魔したようです。

0b4k3:それで「こういう方がいるんだ」と認知していたら、いつの間にかDJ RIOとして美少女アバターに身を包んでいたので、「この人は本気だ……」と思いながら見てました。

DJ RIO:当時からVRChatは定期的に見にいっていて、クラブが色々あることも当然知っていたんです。それで「どうやらかっこいいところがあるらしい」みたいなのを何かで見かけて、一度遊びに行ってみたいと。

 いまでもそうですけど、GHOSTCLUBってクローズドな感じで運営しているように見えるので、そんな簡単には入れない秘密の社交クラブ感があって。実際に行ってみたらすごく衝撃を受けたんです。

 それ以来、僕は一方的にリスペクトしていて。というのもこのGHOSTCLUBの体験が僕にとっても、「VRのコミュニティに行くことができるんだ」っていうことを一番強烈に感じた出来事でもあった。あとやっぱりクラブの雰囲気とかも僕は好きなので、それとVRの両方が重なって初めてすごいと感じたところもあるのかなと思ってますね。

――具体的にはどういった部分に衝撃を受けたのでしょう?

DJ RIO:これ、一方的に語っちゃっていいですか。

 参加者視点の僕の勝手な感想ですが、いくつかの要素があるんですよ。適切な参加者を選ぶこと、クラブにおける音楽への理解、入場方法の定義の仕方とかも含めたトータルでの場というかコミュニティ作りがすごいと思っているんです。

 まず招待制で、なおかつイベントをやっているときしか開いてないから、行くとちゃんと人がいるじゃないですか。誰でも入れるけど閑散としているハコではなくて、本当にいままさにイベントを開いている“生きた”空間を、まずその時VR内で初めて体験しました。

 あとは当時DJブースのお立ち台みたいなところでユーザーが踊ってたんですよ、フルトラッキングで。その踊りが上手いし、なおかつちゃんとクラブで踊ってる女の子の踊りをしていたんです。

 それをね、周囲の人がちょっと遠巻きにチラチラ見てて、クラブにおける「いまあの子が一番イケてる」という暗黙の了解があるじゃないですか。みんな気にしてるんだけど近づかないみたいな。

 ほかにも、バーカウンターで常連さんがいつも喋っていたり、端の方で美少女アバターの2人がずっとイチャイチャしている様子が見れたんですよ。その2人は、明らかに端っこの方の暗がりでイチャイチャしているんですけど、その周囲にいる客はそれに気付きつつ、近寄らないようにしている。この全体としての空気感。音楽はもちろん、トータルでの”クラブ感”というものをVRChatでちゃんと再現できていると感じました。「コミュニティや世界というものをVR内に作れるんだな」ということを拝見した、そういう印象でした。

「GHOSTCLUB」(画像提供=0b4k3)
「GHOSTCLUB」(画像提供=0b4k3)

――そういったところは0b4k3さんが意図されたことなんでしょうか?

0b4k3:意図半分成り行き半分、というのが正直なところです。人間が集まると、形はどうあれコミュニティは形成されると思っているので。

 DJ RIOさんがおっしゃった2018年の前半、当時は本当にまだVRChatのユーザーがそもそも少なかったし、その中でも日本人ユーザーはめちゃくちゃ少なかった時期でした。

 これからどうなるのかさえよくわかってない時期で、当時はコントロールするほどのコミュニティの規模ではなかった。ある時期ほどの厳格な入場規制をしていなかったですし、本当に誰でも入れる、よっぽどな人だけを弾く程度のことしかやっていなかったと思います。

 そういう意味では現実のクラブのように、良いハコがあってそこに人が集まるようになって、良いコミュニティが生まれ、色々な人が入ってきてコミュニティが流動する、というものとあんまり変わらなかったのかなと思います。

 でも2019年あたりから『バーチャルマーケット』のようなVRイベントやその周辺をはじめ、VRChatが世間から注目されてきて、VRChatで遊ぶユーザーは徐々に増えていきました。そうするとGHOSTCLUBに限った話ではないと思うんですが「ただ普通に遊びにくる」というピュアな動機ではなく「面白いことやってるから、視察がてら見に行こうぜ」みたいな人が増えてきた。最終的にハマってくれた人もいるんで、悪いとも言えないのですが、当時は複雑な感情にはなりました。いまは特にどうとも思わないんですが。

 そこから1年くらいは、入場制限を厳しくしていた時期もありました。2020年後半あたりからまた緩めたんですけど、そのころにはクラブ好きが多くなっていて、規制を特に敷かなくても、逆に自然とクラブを好きな人が集まるようになったので、以後は放っておくだけで良い状態になりました。僕が選ばなくても、勝手に他人がクラブを選んでくれる。

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