SNSを学ぶべきは子どもより大人? “16歳未満SNS禁止”から考える親世代の盲点

“16歳未満SNS禁止”から考える親世代の盲点

 ITジャーナリストの鈴木朋子が、テクノロジーと時代背景の交差を切り取る連載『鈴木朋子のテックナビ』。第1回は、未成年のSNS利用禁止について語っていく。

 SNSが子どもに及ぼす影響を懸念して、各国でSNSの利用を未成年は禁止にするべきかの議論が白熱している。オーストラリアで16歳未満のSNSの利用を禁止する法律が定められたことを機に、その流れは勢いを増しつつある。国内ではまだ具体的な施策はないが、これからの時代、子どもがSNSにどう向き合っていくべきなのかを考えていく必要があるかもしれない。

 今回は鈴木さんに、未成年のSNS利用禁止が起こっている背景から、向き合い方について話を聞いた。

【連載:鈴木朋子のテックナビ(第1回)】

鈴木朋子
ITジャーナリスト・スマホ安全アドバイザー。
インターネットやSNS、デジタルサービスの最新動向をはじめ、スマートフォン活用術やネットリテラシー、セキュリティ問題まで幅広く取材・発信している。

なぜ未成年のSNS利用は問題視されているのか

鈴木朋子

ーー2025年12月、オーストラリアで16歳未満のSNSの利用を禁止する法律が施行されたことが話題になりました。いま、世界では何が起こっているのでしょうか?

鈴木朋子(以下、鈴木):オーストラリアのニュースが大きな反響を呼んだのは、国としてSNSの利用を禁止する方針を打ち出したのが、世界初だったからです。これまでもアメリカなどで部分的な規制はありましたが、国全体で明確に定められたのはこれが初めてでした。いまはほかの国でも未成年のSNS禁止に向けた動きが出始めていて、流れがさらに強まっているように感じます。

ーーそもそもなぜ、未成年のSNSを禁止にする流れが生まれたのでしょうか。

鈴木:まず精神面への影響が大きいというのが、ひとつの理由です。たとえば、スタイルのいいインフルエンサーやモデルに影響され、過激なダイエットをして命を落としてしまったり、誹謗中傷によって自殺してしまうなどの事例があります。相手が見えないからこそ、攻撃的な言葉を送ってしまうし、そこに対して「じゃあやってみろよ」という煽りあいも生まれるケースもあります。そこまでいかなくとも、たとえば友達が仲間と人気のレジャースポットに行っていたり、ハイブランドの服を着ているのを見て、「羨ましい」「セレブっぽくていいな」という気持ちも生まれやすいですよね。

ーー現在、世界では未成年のSNS利用についてどのような対応がされているのでしょうか。

鈴木:事業者側の対応でいうと、たとえばインスタグラムは13〜17歳の利用者を自動的に保護する「ティーンアカウント」を導入しています。「ティーンアカウント」では、すでにつながっている相手としかメッセージのやり取りができなかったり、フォロワー以外はコンテンツを見ることができないようになっています。TikTokの場合、16歳未満のユーザーはダイレクトメッセージ機能が使えず、画像やビデオをメッセージで送信できないようにしています。悪い大人から直接連絡を取られたり、性的な画像や動画が送られてくることがなくなるわけです。

 このように、これまでは事業者側で何かしらの対応がなされていましたが、十分であるとは捉えられていなかったのです。そこから、いよいよ国が整備に踏み切ったのが、先程のオーストラリアのニュースなんです。オーストラリアの法律は、XやYouTube、インスタグラムなどを含む主要10プラットフォームを利用禁止にし、アカウントを作成するには年齢確認が必要になる、という内容になっています。

子どもは遊びを見つける名人

ーー主要なプラットフォームを禁止にしたところで、未成年のSNS利用は防げるものなのでしょうか?

鈴木:完全に禁止にするのはやはり難しいですよね。指定のプラットフォーム以外は使えてしまうわけですし。実際、インスタグラムが使えないならLemon8(レモンエイト)など、別のSNS系アプリを使ってDMをするという話もあります。

 あと、年齢認証のシステムも完全ではありません。オーストラリアでは顔認証システムなどで年齢を測定しているようなのですが、同学年のなかでも顔認証が通った子と通らない子がでているようです。

ーー法律が定められたとはいえ、まだまだ抜け穴がありそうですね。そもそも、この問題は未成年のSNS利用を禁止にしたらいいという話なのでしょうか?

鈴木:子どもたちは、どんなツールを使っても抜け道を見つけるし、遊び方を見つけるんです。今回の未成年のSNS利用禁止は、そういったところにまだ配慮が至っていないように感じます。

 また、10代のSNS利用についてはメンタルヘルス以外に「長時間利用」も問題視されています。SNSをやめさせたところで、オンラインゲームにはまって昼夜逆転することも考えられますし、オンラインゲームでのボイスチャットが引き金になって犯罪に巻き込まれた少年もいます。このように、SNS以外でもコミュニケーション機能を持つサービスはたくさんあります。短絡的に禁止するよりも、リテラシーを向上させることが根本的な解決になります。

ーー日本でもSNSを禁止すべきなのでしょうか。

鈴木:いま国内では『GIGAスクール構想』といって、ひとり1台端末を所有しています。学校ではその端末で宿題をしたりしているのですが、共有しているドキュメントのコメント欄を、チャットのようにして遊んでいるという話も聞いています。また、YouTubeもフィルタリングで制限することができますが、LINEのアプリ内ブラウザからリンクを開くと視聴できてしまったりしますよね。

ーー抜け道を探すのもゲーム感覚というか。

鈴木:子ども同士で、情報交換をするネットワークが形成されることも考えられます。子どもたちからすると、YouTubeを親に禁止にされていて可哀想な子がいるから、「みんなで助けてあげよう!」という動きになるんですね。高学年にGIGA端末でYouTubeを視聴する方法に詳しい人がいて……と、子どものなかで口コミが広がっていった学校もありました。

 また、子どもたちは禁止=よくないことだと認識するので、親に隠れて使うようになりますよね。そこでもし悪い大人に誘われたとしても、よくないことをしている自覚があると、絶対親に相談をしないわけです。そうするとかえって問題が大きくなってしまうかもしれません。トラブルが丸ごと、完全にわからないところに隠れてしまうんです。

SNSを学ぶべきは中高年?

ーー未成年のSNS利用禁止に対して感じていたモヤモヤは、子どもの考えを大人が理解しきれていないところにあるように感じます。

鈴木:そうですね。しかも、大人ならSNSを正しく使える、というわけではありません。たとえば、Threadsを本名のフルネームで利用し、家族のプライバシーを漏らしている人をThreadsユーザーは「フルネームおじ」と呼んでいたりします。Facebookのノリなのかもしれませんが、Threadsを公開アカウントで利用している場合は危ないですよね。

 昔からITに詳しい保護者でも、昔のインターネットの世界は、IT好きの大人しかいなかったのもあって、コミュニティが平和だったんですよね。いまのように、バズればお金が稼げるような状況でもなかったですしね。

 そこで、そのころの感覚で「まあ大丈夫でしょ」と思ってフィルタリングをかけないまま子どもにSNSをさせてしまう。でもいまは闇バイトなどの勧誘も横行しています。SNS経由で応募して、海外に飛ばされてしまった高校生の事件も実際に起きています。いまのネットにそういう恐ろしい世界が入り込んでいる、ということにピンと来ていないんです。それで子ども達がトラブルに巻き込まれてしまう。

 もしくは、ITが苦手な保護者の方もたくさんいますよね。子どもの方がスマホやネットに詳しくて、新しいサービスがどんどん出てくる。ついていけないからいっそフィルタリングでガチガチに禁止にしてしまうという場合もあります。

ーーだからといって禁止にするのも、極端なような気がしますが……。ただ、昔に比べてSNSがどう変化していっているのかは知っておくべきですね。

鈴木:そうですね、子どもたちから反発されてしまいますよね。また最近は子どもにとってのSNSの役割が変わりつつあります。いまの子どもたちは、いいね数が稼ぎたいというよりは、友達とのリアルを補完するためにSNSを使っている人も多いんですよね。以前は交流の場だったのですが、いまはビジネスも介入して、発信のリスクが大きくなっているので、そんなリスクをとって交流するくらいだったらグループチャットでいいよねと。実際に、BeReal(ビーリアル)を始めとした“クローズドSNS”も流行していますしね。インスタグラムでも名前を隠して非公開アカウントの人が多いですよ。

ーー改めて、親世代〜中高年も最新のSNSについて勉強し直す必要があるかもしれないですね。

鈴木:私がよく言っているのは、「子どもは親の名前を検索する」ということです。親のSNSを見たときに過激な発言をしていたり、プライバシーをさらけ出していたりすると、絶対にそれは子どもに見つかります。子どものSNSを禁止にする前に、自分のSNS利用を振り返り、子どもに見られても恥ずかしくないふるまいをしてほしいと思います。子どもの「お手本」になってほしいのです。

ーー今後、未成年のSNS利用についてはどうするべきだと思いますか?

鈴木:段階を踏んで学んでいくことがベストかなと思います。13歳になっていきなりSNSを完璧に使えるとは限らないと思うので、まずは家族のメッセージグループでネットを介したコミュニケーションを学ぶのがいいですね。料理を教えるとき、まずは子ども用の包丁で野菜を切ってみて、次は火を少し使ってみて……と、少しずつやらせてあげていると思うので、同じように進めてほしいと思います。完全に禁止にするのではなくて、上手にできたら少しずつ触れるものを増やしていけたらいいですよね。

ーーSNSがなくても生きてはいけますが、避けて通るのもなかなか難しい時代ですよね。

鈴木:そうですね。だから、子どもがちゃんと大人になれるように、大人がITリテラシーを上げて道筋を作ることが必要だと思います。

 また、SNSは依存性が高いとも言われていますが、SNSに救われている人がいる、というのも事実です。たとえば不登校の子どもにとってSNSは、誰にも言えない悩みを打ち明けられて、同じような立場の子どもたちと支え合える場所でもあります。大人だって、育児中のママさんなどは家にいながら、SNSで育児の悩みを相談できる、という使い方もありますよね。そういった面も含めて、SNSを取り上げることが正解ではないと思っています。

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