DJ RIOと0b4k3が語り合う、メタバースにおける“場所とコミュニティ”のつくり方

“メタバース×建築”の奥深さ

メタバースには歌舞伎町とイオンモールどちらも必要

――DJ RIOさんはREALITYについて「平和なコミュニティを形成する様をかなり強く意識しています」と発言されてます。一方0b4k3さんはコミュニティ運営をする際、規制に頼らないことを意識されていると伺いました。この考え方の違いはある種プラットフォームとコミュニティ、その立場の違いなのかなと。

DJ RIO:REALITYはプラットフォームなので、最大公約数的なところ――ボトムラインを規定して、これ以上悪化しない・しちゃいけないラインを定めて、それより悪化しないように体制やルールを整備していく必要があります。

 それとは別にREALITYの中にも、ユーザー主導のコミュニティがあって、それぞれが

 ボトムラインを守っている範囲では、それぞれ特色の出方がバラバラでいいと思っています。そういうこれ以上のラインは駄目というボトムラインを規定するのがプラットフォームだとすると、その範囲内で色々特色を出したり自分好みにしていくのが、その中で作られるコミュニティなのかもしれません。

「GHOSTCLUB」(画像提供=0b4k3)
「GHOSTCLUB」(画像提供=0b4k3)

0b4k3:これに関してはVRChat全体の話になるんですが、VRChatの運営も明確に差別的な行為などはしないようにというポリシーを定めています。

 とはいえやっぱりVRChatはめちゃくちゃカオスで。例えば「VRChatのコミュニティの中に面白そうな場所がある」と興味を抱いた人たちが、いざ入ってみたらめちゃくちゃでかい音量を鳴らす言葉の通じない方に追われてしんどい思いをしてしまい、もう行きたくなくなってしまったということも、よくある話なんですよね。

 ただそれは、別にVRChatに限った話ではなく、インターネットではあるあるな話でもあると思うんです。たしかにそういうことを減らしていくのは大事だと思うし、運営もそうならないように機能を追加して対策はしているんですけど、なかなか捌ききれないのが現状で、難しいところだと思うんですよね。あんまり締め付けすぎると、自由さが減って窮屈な感じになってしまう。

 一方、例えばMeta社のメタバースができたとして、アバターは決められたフォーマットでしか弄れません、という縛りがあると、それはそれで嫌だなと思う反面、そこまで締め付けるとめちゃくちゃ安全にもなりますよね。

 それぞれのメリットデメリットは理解しつつも、これまでの歴史を考えると――VRChatないしインターネットは絶対そうだと思うんですけど――めちゃくちゃな状態からしか生まれてこなかったコンテンツや文化があると思っています。

 僕個人としては、やはりそういうカオスな状態が好きではあるんです。今後もVRChatはそうであってほしいなという気持ちもありますが、ずっとそのままだとコミュニティの規模が大きくなりづらい現状もある。今後どうなっていくのか、そのあたりに関しては全然読めていません。同時に楽しみでもあるんですが。

DJ RIO:個人としてアングラが好きだけど、やってることは商業的という話と通じるんですが、僕自身は歌舞伎町やゴールデン街が好きなんですけど、ビジネスとしてやるならイオンモールを作る、ということなのかなと。

 どちらも別の良さがあるし、それぞれ世の中に求められているので、どちらがいい悪いというよりは、選択の話かなと思っています。

 ただ、ゴールデン街がイオンモールみたいになったらがっかりするし、逆にイオンモールに歌舞伎町の要素を入れることも不可能だし、無理に公平に混ぜる必要はないかなと思っています。どっちもあるのがメタバースっぽくていいなと。

ーーDJ RIOさんは初期のVRChatに投資をしていますが(※)、それも0b4k3さんが言うような、ある種のカオス感がよかった、ということなのでしょうか?

※グリー傘下のベンチャーキャピタルGFRfundがVRchatに投資

DJ RIO:VRChatに投資を決めた当時、LAやサンフランシスコへ行ってVR企業をたくさん回って、VRSNSだけでも3-4つはデモを体験したり、創業者と会ったりしたのですが、その中でVRChatに投資すると決めました。

 当時VRChatが一番完成度が低かったのですが、VRChatが最もカオスなプラットフォームだったんですよ。コミュニティが大きくなる初期って独特のマグマみたいな熱量があるんですが、当時のVRchatにそれを感じたんです。ニコニコ動画ができてた最初の1週間ってこんな感じだったよな、みたいな。VRChatはいまだに当時の空気を残しながら、着実に安心・安全面に取り組んでいるのは見ていていいなと思う一方、こういうのは企業カルチャーですから、そこまで急激に変わらないと思いますよ。心配しなくても、カオスの良さを失ってしまうような過度な締め付けはしないと思いますし、別に投資家もそんなことは望んでないですしね。

――企業カルチャーと言われると納得できそうです。REALITYもルール作りに腐心されてる様子を感じます。

DJ RIO:腐心するというよりは、最初っから僕らはイオンモールを作ると決めてるんですよね。だから別に悩んでいないんですよ。

 うちはすでに上場企業でコンプライアンスを守って、色々なIPホルダーさんや関係者各位のみなさんに協力していただかなければならないし、そもそもマス向けに作るという目的意識が明確にあるからこそ、自由度は低いしかもしれないけど、変に悩んだりすることもなく、トラブルもあまり起こらないんです。

 とはいえ、安心安全な運営ができるようにしていても、コミュニティはやっぱり人間がコンテンツですから。そこはもう人間が生み出すカオスが常に存在してて、それを僕は楽しんで見ていますね。

――イオンモールという例えはすごく面白いです。

DJ RIO:平日の日中はあんしん安全なイオンモールの経営をしながら、夜になったら場末のスナックやアングラなクラブでお酒を飲む、そういうライフスタイルがメタバースっぽくて好きですね(笑)。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる