考察の外側で生まれる“コミュニティの醸成” 『神椿市建設中。』の本質は謎解きにあらず

『神椿市建設中。』の本質は謎解きにあらず

 花譜や理芽、春猿火、ヰ世界情緒、幸祜らを擁するクリエイティブレーベル・KAMITSUBAKI STUDIOによる1ヵ月限定の共創型コミュニティアドベンチャー『神椿市建設中。』。10月4日のサービス開始から約2週間が経ち、その魅力がより具体的に分かってきた。

 『神椿市建設中。』は公式Discordサーバーと連動したブラウザゲームの形を取っており、「共創者」と呼ばれるゲームの参加者は、Discordに集う1万人を越える仲間と力を合わせ、日々出題される『Q』を解決する。Discordサーバーでは毎日多くの参加者が考察&交流を行なっており、時にはKAMITSUBAKI STUDIOのメンバーが現われることもある。1ヵ月続く共創プロジェクトのベース基地として、24時間様々な出来事が生まれている。

 もうひとつ、重要な役割を担うのが、定期的に行なわれるYouTubeでのライブ配信番組『神椿市建設中。都市開発通信』だ。サービス開始直前の10月2日に第1回が行なわれたこの番組は、執筆時点で「Vol.2」まで(記事公開時には「Vol.3」まで)配信されており、その時点までの出来事や『Q』の振り返り&謎解きの解説が行なわれている。

・第1回

神椿市建設中。都市開発通信Vol.1〜始動〜

・第2回

神椿市建設中。都市開発通信Vol.2〜協力〜

・第3回

神椿市建設中。都市開発通信Vol.3〜道刻〜

 ゲーム内で出される『Q』は、解決した人や時刻、答え自体は共有されるものの、「解き方の手順」については基本的に明かされない。そのため、この配信番組が公式による解説の場所となる。ときには正攻法だけでなく、別ルートでの裏技的な解き方も用意されているため、既に終了した『Q』に関しても、この配信番組を観ることで新たな発見があるのが面白い。つまり、Discordとゲームを連動させた「謎解き」パートと、公式番組による「種明かし」パートが定期的に繰り返されるような構造になっているのだ。

 ここまで参加した感想として、基本的には、この構造がプロジェクトを魅力的にしているように感じる。答えに辿り着くための手段/方法も分からない中で参加者が互いに協力し、『Q』を説き、そこに対して運営サイドからの種明かしがある。つまり、ブラウザゲームとDiscordを連動させた謎解きゲームではなく、ブラウザゲームとDiscordとYouTubeのライブ配信を連動させて、「謎解き/種明かしを繰り返していく」プロジェクトだという全体像が分かってきたことで、謎解き自体の面白さもより増してきているような感覚がある。

 『Q』の難易度は次第に上がっており、最近ではおおよそひとりの知識/知見では解き明かせないような、複合的な能力が必要な謎も多数登場している。ここで詳しく答えを書くことはしないが、たとえば4つめの『Q』となった「書架のオウム」では、Discordサーバーに登場したオウムに質問することで、答えに至るヒントが得られる構造になっており、多くの参加者が質問を繰り返すことで、オウムの返答の傾向が導き出されていった。また、13個めの『Q』となる「届けものの行方」では、某プログラミング言語を解読することで出てきた数字をチェスの棋譜に当てはめると、チェスのコマを俯瞰した際に答えとなる漢字が出現する非常に複雑な謎解きも登場。参加者が得意分野や知識を持ちより、コミュニケーションを取りながら謎を解決する過程は、まさに共創型コミュニティアドベンチャーならではだ。

 また、『Q』を解くことで明らかにされていく物語も進展を見せており、執筆時点では森先化歩、谷置狸眼、朝主派流、夜河世界という「4人の魔女の娘」が一堂に会している。物語の舞台になる神椿市の世界観やストーリーの一部は、KAMITSUBAKI STUDIO所属アーティストの楽曲や活動にもリンクしており、彼女たちの楽曲や活動を追えば、ゲーム内の物語もより楽しめるはずだ。

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