小説家兼動画クリエイター・ナナオが「ドラマ脚本家デビュー」 裏側にあったバディ&仕掛け人の“サポート”とは
Ella Project(エラプロジェクト)が手がけるドラマシリーズ『東京彼女』4月号で、YouTubeクリエイター・ナナオが脚本を担当。4月5日に全4話がドラマ公式YouTubeチャンネルで一斉公開されると、ナナオの才能に大きな注目が集まった。
YouTubeチャンネル「ナナオは立派なユーチューバー」を主宰するナナオは、これまでに2冊の小説とエッセイを出版するなど、マルチな活動で知られるクリエイターだ。
『東京彼女』はそんなナナオの脚本家デビュー作品となったわけだが、この脚本挑戦の裏にはナナオが所属するUUUMのコンテンツプロデュースチームの采配とバディのサポートがあった。
今回は、ナナオの脚本家デビューのきっかけを作り、『東京彼女』でプロデューサーを務めたコンテンツプロデュースチーム・永島佑太郎氏と脚本を手がけたナナオ、日ごろからナナオをサポートしているバディ・青山もえ氏にインタビューを敢行。ナナオの脚本デビューの経緯や執筆当時の話、クリエイターのサポートについて話を聞いた。
「ガラスの靴を用意する」『東京彼女』のコンセプトと合致した“ナナオの起用”
ーーまず、永島さんが所属しているコンテンツプロデュースチームがどのようなことをされている組織なのか、くわしく教えていただけますでしょうか。
永島佑太郎(以下、永島):コンテンツプロデュースチームは、クリエイターのやりたいことや得意なことを起点に色々な企業やクリエイターを巻き込み、より大きなエンタメコンテンツを作っていこうというチームです。主体的にクリエイターにお声掛けをして、「面白くて新しいことを一緒にやりませんか」とご提案しながら、クリエイターとコンテンツを共創しています。
今回の『東京彼女』はナナオさんの脚本デビューとなったお仕事ですが、まさに私たちのチームがやるべき方向として、すごくぴったりな事例になったと思います。
ーー『東京彼女』4月号をUUUMが手がけることになったのには、どういった経緯があったのでしょうか。
永島:『東京彼女』を運営しているElla Projectさんは、メジャーを目指す監督や役者、アーティストの方々に、「ガラスの靴を用意する」というコンセプトを掲げられています。毎月4〜5話完結の作品が作られていくなかで、もっと新しいコンテンツを生み出していきたいという思いで弊社にお声掛けいただきました。僕自身、映画やドラマ業界ではないところから新しいストーリーもののコンテンツを作りたいと頑張ってきた人間だったので、すごく共感を覚えました。
ただ、制作をUUUMでするというだけではちょっともったいないなと思って。弊社に所属しているクリエイターのなかに、映画やドラマに挑戦してみたいという思いがある方がいるのであれば、インフルエンサーにとっても『東京彼女』をガラスの靴のようにできないかと、社内で協議をしたうえで正式に受けさせていただきました。
ーー今回脚本にナナオさんを起用されましたが、決め手を教えていただけますか?
永島:去年の春にナナオさんの初小説『雷轟と猫』を読ませていただき、キャラクターの心の内面やその機微を繊細に描かれていることに、「こんなクリエイターがうちにいるんだ」と感嘆したというか、すごいなと思いました。実はナナオさんのバディである青山さんだけには了承を取りつつ、『雷轟と猫』をアニメ化できないかと、裏で企画していたことがあったんです。
その折に『東京彼女』の制作の話をいただき、お願いする方を探していたところ、ふとナナオさんの小説を思い出したんです。ナナオさんの動画をみたところ、ドラマやアニメにも興味があることが分かったので、初めてドラマの脚本を書くのはかなりハードルが高いと思いつつも、もしかしたら受けていただけるんじゃないかと思って、オファーさせていただきました。
ーーナナオさんはこのお話がきたとき、どう思いました?
ナナオ:小説を2冊出しているので、僕がこういうのを得意だと思ってくださったのかもしれないですけど、本当は得意じゃないんです。得意じゃないというのもどうかと思いますけど、小説を出した理由もけっこう不純なものだったので(笑)。
ーー小説を出した理由を教えていただけますか?
ナナオ:親に動画クリエイターだっていえなかったんですよ。小説を一冊出して、「YouTubeもちょっとやっている文化人です」みたいなキャラにしたら、親に動画クリエイターをやっているってことを伝えられるんじゃないかという理由で小説を書き始めたんです。
『東京彼女』の話を受けた理由は、ガラスの靴を履いて、僕も一歩踏み出せるきっかけになれたらいいな、ぐらいの気持ちでした。
ーー実際、脚本を書いてみていかがでしたか?
ナナオ:すごく難しかったです。スケジュールがエッセイの執筆と被っていたというのもありますし、動画のスタイル的に独特なワードを使うと思われやすいんですけど、だからこそ動画で使ったワードは脚本ではもう使えないみたいな。エッセイも同じで、エッセイで使ったワードを脚本でも利用したら独特ではなくなってしまうと思ったら、言葉が枯渇していったというか。YouTubeも止めるわけにはいかなかったので、本当に大変でした。
ーーエッセイと執筆時期がかぶっていたんですね。ナナオさんが脚本を担当された『東京彼女』を拝見しましたが、YouTubeの動画とエッセイ、脚本とのイメージが結びつかず、同じ方が作ったのかと不思議な感覚になりました。
ナナオ:YouTubeとエッセイ、脚本をつくるときに使っている頭が同じだから言葉が枯渇していったのかもしれないです。YouTubeとエッセイと脚本の間で、どれかがなにかの出がらしみたいな感じで終わってしまうのはすごく嫌だったんです。YouTubeの出がらしをエッセイにしたくもないし、エッセイの出がらしの脚本にもしたくないというので、そうならないようにするのに苦労しました。