古屋呂敏が持つ“俳優・モデル・フォトグラファー”の顔 「カメラが自分の好みを濾過して導いてくれる」

俳優・古屋呂敏がNikonカメラを語る

 俳優・モデルとして活動しながらフォトグラファーの顔を持つ古屋呂敏(ふるや・ろびん)が自身初となるカレンダー「『Everyday Moments』supported by Nikon」を発売。すべてのカットを『Nikon Zf』で撮影したという同作品の発売にあわせ、今回、インタビューを行った。カレンダーの発売に伴って初めて公開した愛猫のエピソードやニコン製カメラへの思いなど、これまでに無い貴重なお話を伺うことができた。

Nikonが誇る歴代の名機に触れ、カメラの世界に魅了される

ーー俳優・モデル業と並行してフォトグラファーとしての活動も行う古屋さんですが、写真を撮り始めたのはいつ頃ですか?


古屋:かれこれ8年ほど前になります。モデルとして活動するなかでカメラマンの方と一緒にお仕事をする機会がたくさんあって、だんだんとカメラに興味を持つようになりました。当時はいわゆるミラーレス一眼が機能を高めていた時代で、付き合いのあったカメラマンにもアドバイスをもらい、写真も動画もバッチリ撮れるミラーレス一眼を購入したのがはじまりです。

 そうしてデジタルカメラで写真を始めたのですが、その後ある広告マンの方からフィルムカメラをいただいたんです。50代半ばぐらいの方なんですけど、彼が高校生のころに貯金を貯めて買ったカメラで、「使わないから、お前にやるよ」って。それが『Nikon FM2』でした。

 そこまで大事にしていたものを使わせていただくのであれば、僕も大事に使おうと思って、フィルムで写真を撮り始めたらもう、ハマってしまって。色んな種類のフィルムがあることも面白いですし、フィルムでの撮影は、撮影した瞬間には答えが見えない。そのドキドキ感みたいなものにどんどんハマっていきました。

ーー古屋さんは『Nikon FM2』のほかにも往年のフラッグシップ機である『Nikon F5』などもお持ちですよね。


古屋:『Nikon FM2』に触れる以前はカメラという道具に対しての興味はあまりなかったんですが、『Nikon FM2』を触ってから、カメラの歴史やブランドについても深く知りたいと思うようになりました。たとえば1996年に発売された『Nikon F5』はコマ速度が最高で8コマ/秒、当時ファッション業界の撮影ではこの機動力・連写性能の高さが重宝されたそうで、そんな話を聞いたら当時のフラッグシップを使ってみたいじゃないですか(笑)。「ニコンって社名はもともと日本光学だったのか」とか、その技術力の高さについて調べていく、掘り下げていくのが楽しい。こんなにカメラを好きになったのはニコンさんのおかげです。先日はとうとう『Nikon F』も買ってしまいました。ウエストファインダーがどうしてもやりたくて(笑)。

ーー昨年、古屋さんは『Nikon Zf』の発売時にモデルを努めています。『Nikon Zf』は最新のミラーレス・カメラでありながらそのデザインモチーフに『Nikon FM2』を採用したクラシカルなルックスが特徴ですが、初めて『Nikon Zf』に触れたとき、どんなことを思いましたか。

古屋:「こんなに過去と未来が融合されているなんて!」と驚きました。古くからのファンに応えるようなクラシックなビジュアルの中に、最先端の技術が詰まっている。面白いですよね。日々新しい製品がたくさん出るなかであえて昔のスタイルを残していて、ダイアルが真鍮製になっていたりするんです。カメラの肌触り、撮っているときの重さ……そういうフィーリングを大事にしていることが伝わりますし、これは撮影行為そのものの楽しさを思い出させてくれるカメラだぞと。初めて触れたときにそう感じて、「これは、売れるだろうな!」と思いました(笑)。そういうカメラと一緒にお仕事ができて嬉しかったですね。

撮る側と撮られる側、両方の立場だからこそ分かる奥深きポートレートの世界

ーー普段はどういったものを撮影されますか?

古屋:仕事でもプライベートでも人物を撮ることがとても多く、僕は"人"が好きなんだと思います。撮影が自分と相手の関係性を繋いでくれて、カメラのおかげでその人のことをもっと知ろうと思うし、知ることができるんです。

ーー私の友人が近ごろ写真を始め、今まではまったく興味のなかった花や風景の写真を撮るようになったそうで、自身に驚いていました。撮影には自分の眼差しを外から見るような体験がありますよね。

古屋:面白い話ですね。僕も撮影をしていると、カメラが自分の好みを濾過して導いてくれると思うときがあります。撮っているときは気づかないけれど、写真の上がりを見て「自分はこの構図が好きなんだな」と思ったり、モデルさんとの距離感にしても「この子はこの距離で、この子は引いて撮っているな」とか、無意識のうちに自分が起こしている反応が、写真によって明確にになるんです。

ーーここまではフォトグラファー・撮影者としての古屋さんにフォーカスしてきましたが、他方で俳優・モデルの活動を行う古屋さんは、”撮られる側”に立つうえではどんなことを心がけていますか?


古屋:役者としては「撮られようとしないこと」です。これは僕も日々努力しているんですが、すごく難しいことです。自分自身、撮影が好きだから、なかなか意識を外すのが苦手で……。

ーーでも、人の写真を撮っていると「カメラを意識しているな」って、撮影者からはわかっちゃいますよね。

古屋:そうなんです! で、それが嫌なんです!(笑)「この人は今、カメラを意識したな」ってすぐにわかるし、そういう瞬間にシャッターを切りたくないじゃないですか(笑)。ナチュラルな姿を写したいって思うんですけど、逆側に立つと本当に難しいことで、たとえばドラマの撮影中に相手と向き合っているとして、僕はどうしても照明の位置が気になってしまうんです。「僕が一歩左にズレた方が彼の顔に光が当たるだろうな」なんて思ったらスッと移動しちゃうんですが、登場人物はそんなこと考えないだろうし……この意識は今も、頑張って削ぎ落とそうとしている最中です。

 モデルの仕事は少し性質が違って、シャッターが切られるその一瞬を完璧なものにすることがお仕事です。もちろんこちらも難しいお仕事ですが、何を求められているのか考えて、呼吸を合わせることは以前よりもできるようになったと思います。難しいけれど、だから楽しいんだろうな、だからハマっていくんだろうなと。年齢を経ても答えは見つからないだろうし、100点満点を出せることはないんだろうなって日々思います。

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