細田守監督が照らし返すインターネット20年史 『ウォーゲーム』『サマーウォーズ』『竜そば』から読み解く

細田守監督が照らし返すインターネット20年史

 細田守監督の『竜とそばかすの姫(以下竜そば)』は、インターネットの世界が題材となっている。

 細田監督は、これまでも『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!(以下ウォーゲーム)』や『サマーウォーズ』でインターネットを舞台にした物語を作ってきた。『ウォーゲーム』は2000年公開、『サマーウォーズ』は2009年公開、そして最新作の『竜とそばかすの姫』は2021年公開と、およそ10年ごとにインターネットを舞台にした作品を世に送り出している。

 インターネットの歴史はまだまだ浅い。しかし、現実以上に進化のスピードが速いネットの世界はたった20年で劇的な変化を遂げている。細田監督による10年ごとの定点観測は、日々いろいろなことが起こるネットの変化を改めて振り返るために貴重なサンプルになるだろう。本稿では、細田監督のネット3作を題材に、この20年でネットがどのように変わっていったかを振り返ってみようと思う。

編集部注:文章後半に『竜とそばかすの姫』のネタバレを含みます。

2000年:IT革命の時代

 『ウォーゲーム』は、『デジモンアドベンチャー』シリーズの2本目の劇場版だ。デジタルワールドで架空の生命体を育成するというコンセプトで、デジタル世界と現実を舞台に、子どもたちの冒険と成長を描くこのシリーズは、TVアニメ・劇場版ともに多くのシリーズが作られているが、その中でも『ウォーゲーム』を傑作と呼ぶ声は多い。上映時間は40分と短いが、細田監督の抜群のレイアウト力と吉田玲子の無駄のない精緻な脚本の魅力が合わさった、見ごたえある作品だ。

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 『ウォーゲーム』が公開された2000年は、インターネットがより良い未来を切り開くのだという雰囲気に満ちていた。90年代から続くITバブル(ドットコムバブルとも呼ばれる)のピークの年で、関連株は膨れ上がっていた。「IT革命」という言葉が流行語大賞にも選ばれており、世紀の変わり目であることも手伝ってか、新しい時代の幕開けへの期待に満ちあふれていた。

 この頃は、ネットの接続端末はまだPCが主流で、今では当たり前となっている定額接続のブロードバンドの最初期の普及期だった。ニールセン(https://www.netratings.co.jp/news_release/2000/07/Newsrelease20000725.html)によると2000年6月には日本のインターネット利用人口は2000万人を突破、全人口の17%を超えたそうだ。この17%という数字は、アーリーアダプターからアーリーマジョリティへの浸透が始まり一気に普及が進む時期だそう(https://www.jri.co.jp/company/publicity/2000/detail/netbreak/)で、ネットがマニアのものから一般のものになり始めた時期と言っていいだろう。また、2000年はインターネットを代表する企業であるGoogleが日本語版の検索ページをオープンし、Amazonの日本語版が誕生した年でもある。

 『ウォーゲーム』はそんな頃に公開された作品だ。本作はデジタルワールドに突然生まれた新種のデジモンがデータを食い荒らし、核ミサイルを発射してしまい、主人公の八神太一らがそれを食い止めるという展開となる。ネット上で起きた異変がスーパーのレジなどに異変が起きるという辺りの描写は、90年代末に議論された「2000年問題」を彷彿とさせる。

 またデジタルワールドでのアドベンチャーという点を強調するためか、太一は自宅から一歩も出ずに事態の収拾にあたる。この自宅の母親らとの牧歌的なやり取りとネット世界の大きな危機とのギャップが大きな魅力になっている。

 2000年は、まだSNSの時代ではなかったので、本作でも主なコミュニケーション手段はeメールとなっている。当時のライトなネットユーザーにとって、最も身近なインターネットコンテンツであり、まずはeメールを使えるようになるのが初心者にとって重要だった。このメールは、物語上でも大きな役割を果たすものになっている。

 『ウォーゲーム』に限らず、『デジモンシリーズ』は子どもたちのアドベンチャーを描くものであるため、ワクワクさせる楽しい要素が満載だ。しかし、それは子ども向けだからというだけでなく、当時のインターネットはそのような牧歌的な夢を見られる場所だったということも関係しているだろう。デジタル社会のもろさも描きつつ、それを乗り越える方法もあるだろうし、新しい時代の訪れにワクワクしていた時代の空気が『ウォーゲーム』にも反映されている。

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