外国人YouTuberの僕が“福島のドキュメンタリー”で限界を感じた話

外国人YouTuberの僕が“限界を感じた話”

 世界に向けて日本の魅力を発信し続けている英国人YouTuber、クリス・ブロードによる連載『ガイドブックに載っていない日本』。第6回目は、YouTuberの知られざる生活や動画制作へのこだわり、そしてYouTubeでの活動に集中するリスクと、それを回避する処方箋にもなる「Abroad in Japan」のブランディングについて語ってもらった。

※撮影は2020年10月に行われました

第3回:東北在住の英国人が、教師を辞めて世界的YouTuberになるまでの話
第4回:ザ・ロックや『ブレイキング・バッド』主人公も反応……世界的YouTuberになった僕の“量より質”な成功体験
第5回:外国人YouTuberの僕から見た、“日本の変わるべき部分”

職業YouTuberとしての生活

 YouTuberには基本的に決まった出勤時間などなく、生活が不規則になりがちです。そのなかで、なるべく規則正しく、朝は早く起きる努力をしています。とは言え、編集作業が夜中の2時ごろまで及んでしまうことが多く、理想は8時起床ですが、だいたい9時~10時ごろに起きるのが日常です。

 朝食はシリアルバーとコーヒーで済ませ、それからすぐに視聴者からのコメントやメールに目を通します。クラウドファンディングプラットフォーム「Patreon」の支援者からのメッセージにも返信します。

 日々のルーティンは、私が編集をしているのか、脚本を書いているのか、撮影をしているのかによって変動します。例えばいま取り組んでいる『Driving in Japan』という企画なら、午前10時から午後4時までが撮影。翌日はホテルの部屋で日がな一日、編集作業に勤しみます。編集が長引くのは普通で、だいたい午前11時から午前2時までしています。

 動画制作の具体的な内容は、進行状況によって変わってきますが、どの工程においても管理タスクは膨大です。メールやコメント、Twitterへの返信、動画やPodcastのプロモーションも欠かかすことはできず、日々のタスクは山積み状態。例えば1週間の休みがとれたとしても、優雅にバケーション……とはいきません。日常に戻ってから目を通さなければならない数百のメールやコメントのことを考えると、到底リラックスできるとは思えないからです。

 「YouTuber」というと気ままな職業と思われるかもしれませんが、このように自由な時間はほとんどありません。続けていられるのは、好きだから。オフィスで関心の持てない仕事をしていたときは苦痛でしかありませんでしたが、いかに忙しくても、好きなことをしながら暮らせるのは幸せです。

 加えて言うなら、YouTuberはルーティンとしてこなさなければいけない作業も多いものの、基本的にいつも新しいことにトライする仕事なので、日々、違うことに出会えます。先日は仙台で最も素晴らしい寿司レストランのひとつを撮影し、カウンターで最高の職人が寿司を握る様子を見てきましたし、その前は和牛レストランのオーナーに彼が所有する船の上でインタビューをしました。かと思えば、その次の日は山の中でドローンショーの撮影。船に乗って人と会った次の日に、ドローンのクラッシュを見るなんて、YouTuberをやっていたからこそです。毎日が冒険の連続でワクワクします。

 私の動画がそれぞれ違うことをテーマにしていることも、刺激が多い日々につながっていると思います。最近ではドリフトをテーマにした「Japan’s Most Dangerous Obsession Explained | Drift Racing」に、新幹線のグランクラスでの撮影、津波で破壊された南三陸エリアの撮影にも挑みました。毎回のように異なる場所に行き、その場所をどうやって伝え、どのようなストーリーにするのかを考えるのは、ドキュメンタリーを届けるYouTuberとしての醍醐味ですね。決して飽きることはありませんし、おそらく、多くの人が考えている以上にエキサイティングな人生を送っていると思います。

多くのYouTuberが取り組む「毎日投稿」ではなく、「月2〜3本更新」の理由

 日本のトップYouTuberは、動画の毎日投稿、あるいはそれに準ずる高頻度での投稿をモットーにしています。それに反して、私はひとつの動画に時間をかけており、更新はだいたい月に2〜3本です。それは締め切りも作らず、納得のいく動画が仕上がったらアップロードする、というスタイルを貫いているからで、つまりスケジュールを優先することでクオリティを犠牲にしたくないんです。YouTubeに動画をアップしてしまったら最後、その動画は不出来なものだとしても、人の目に触れ続けます。それは耐えられない。

 それにチャンネル登録者は、必ずしも机の前で動画の更新を首を長くして待っているわけではないはず。もちろん、短期間にクオリティの高い動画を数多く送り出せれば素晴らしいことですが、娯楽性が高く、その内容から何かを学び取り、記憶に刻むことができるものなら、更新頻度は低くても、YouTuberとして価値のある存在と言えるのではないでしょうか。「あなたの5年前の作品が大好き」は、私にとって最高の褒め言葉です。なので、最低限1ヶ月に2本は動画を投稿するというマイルストーンだけ設定し、可能であれば更新頻度を増やしていく、というスタイルにしています。

 もちろん、ファンから新作動画の催促を受けることはあり、それをストレスに感じていた時期もありました。いまは気にしていませんが、決して無視しているわけではなく、例えばPatreonの支援者に向けて、舞台裏や次の動画の一部内容を届けるなど、経過を伝えることもしています。

 加えて、ファンが寄せてくれる関心を維持していくために、Podcastを週2回、更新しています。このPodcastでは、友人と日本の時事ニュースなどについて話すものです。またInstagramも頻繁に更新していますし、Tokyo Creativeや他のチャンネルの動画にも積極的に出演するようにしています。つまり、新作の動画を投稿するまでの1ヶ月間、沈黙を貫いているわけではなく、常に視聴者の皆さんを楽しませる努力はしている、ということです。

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