外国人YouTuberの僕が“福島のドキュメンタリー”で限界を感じた話

外国人YouTuberの僕が“限界を感じた話”

YouTubeに依存しないためのブランド化

 私は大学でビジネスを学んだので、ブランド化の重要性を知っていました。「Abroad in Japan」のブランドは、品質の高い映像とコンテンツです。既述のとおり、量ではなく質を重視しています。私の動画は、ハイクオリティ映像とジョーク、そして学びの3つを重要なエレメントとしており、動画を作る際にも、常にそのことを意識しています。

 イギリスのテレビ番組を参考に、娯楽性が高く、テレビレベルのクオリティの作品を作るというブランディングの構想は、チャンネルを作る時から意識していました。日本の田舎に住んでいる皮肉屋のイギリス人である「クリス・ブロード」もブランドの一部で、チャンネルのブランド性を高める上で重要な部分を担っています。

 これからYouTubeを始めるという人にも、単純にカメラを持って撮影しまくるのではなく、「どんなコンテンツを作りたいのか」ということを慎重に考えた方がいいとアドバイスしています。クオリティの高いコンテンツを作れば、色あせることはありません。「Abroad in Japan」の場合、いまも5年前のコンテンツが視聴されています。当時から随分時間と労力をかけて作ってきたので、今の映像と比較しても見劣りすることはない。また、繰り返しになりますが、YouTubeだけでなく、PodcastやTwitter、ウェブサイト、Facebook、Instagramといった様々なプラットフォームに発信の場を広げることも重要だと考えています。

人口統計を考慮し、汚点にならない行動を

 YouTubeをする上で、ブランディングと同時に大切にするべきなのが人口統計です。「Abroad in Japan」のような真面目なチャンネルもある一方で、ジェイク・ポールやローガン・ポールのように、悪ふざけ動画で人気を得るYouTuberもいます。彼らの動画のメインターゲットは、8歳から20歳の男性です。おそらく20歳以上の大人はそれほど視聴していないと思いますが、しかし、それでもターゲット層は恐ろしく広い。

 一方で、「Abroad in Japan」のターゲットは、日本と旅行に興味を持っている人たちです。数は決して少なくありませんが、人口統計的に言えば少数になります。チャンネルを開設する時には、ターゲットのパイについても考慮しなければなりません。

 8歳から20歳の男性というのは途方もない数です。大人から見ると、なぜ人気があるのか分からないようなチャンネルでも、高評価を得ていて人気なのは、人口統計が関係しているのです。

 また、動画の内容に関して、人気を維持したり、注目を得ようとするために行動をエスカレートさせたり、手っ取り早く話題になりたいからと問題行動をとるのは短絡思考だと思っています。そのようなことをして一時的に話題になったとしても、10年後に自分の行いを振り返って後悔するでしょう。就職活動をする時や人生の様々な節目に、そういった動画を検索されれば人生につまづくことになります。

 お騒がせYouTuberのローガン・ポールとジェイク・ポールが成功したのは、彼らが元々俳優だったことも関係しています。YouTuberの99%は一般人で、おかしなことをしているのはごく一部のマイノリティです。しかし、より過激なコンテンツを作らなければいけないというオンライン圧力は確かに存在しています。だからといって、それに乗せられて行動をエスカレートさせなければいけないということではないのです。

 私にも常に、より良いコンテンツを作りたい、登録者を増やしたいという欲求とプレッシャーはあります。しかし、だからと言って悪ふざけをする必要はありません。アパートの片隅に座って日本のテレビ番組のことを話していても数字は取れる。過激なことをして一時的に数字が取れたとしても、人からの尊敬は得られず、継続性もないと確信しています。

将来的にはイギリスの時間を増やしたい

 今後の活動について、「日本にいつまで住みたいか」と聞かれることが多いのですが、私は日本を離れたいと思っていません。過去には日本を離れて台湾に移住することも考えましたが、日本にとどまることを決めました。

 イギリスに帰りたいと思ったこともありません。イギリスには22歳まで住んでいましたし、海外に住むのと違って、新たな学びは多くありません。日本では毎日が発見であり、学びです。この国でキャリアも構築しましたし、友人も全国にたくさんいます。友人の数に関しては、イギリスよりも日本の方が多いくらいです。

 ただ、将来的には両親と祖父母が暮らすイギリスでの時間を増やし、イギリスと日本を行き来する生活にシフトするつもりです。そのため、イギリスと日本にオンラインショップを開いたり、イギリスに日本食レストランを開店させることも考えています。フィルムの世界に入っていくとしても、将来的にオプションを増やしていくのは良いことだと考えています。

 次回ではあらためて、新型コロナウイルスが私のYouTube活動にどう影響したのか、じっくり語りたいと思います。

■Chris Broad(クリス・ブロード)
30歳、イギリス出身。YouTubeチャンネル「Abroad in Japan」を運営。登録者数250万人。日本を拠点に活動するトップ外国人YouTubeクリエーターとして200以上の動画を制作。東北地方太平洋沖地震に関するドキュメンタリーや、L’Arc-en-Cielのボーカルとして世界中にファンを持つHYDEのソロ活動密着動画など動画のジャンルは多岐にわたり、訪日インバウンド集客から実行まで行うTokyo Creativeと共に、日本各地の自治ガイドブックに載ってない日本体や企業向けのコンテンツも制作している。2012年にALTとしてJETプログラムに参加し、英語教師として2,000時間以上を費やした後にフルタイムの動画クリエーターへ。夢はプロのフィルムメーカーになり、チョコレートでできた家を建てること。

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