荒川良々の“ひとり飲み”動画はなぜグッとくる? コロナ禍で小さな飲食店を訪ねる芸能人たち
なかなか気軽に飲みに行けない今のご時世。そんな中、俳優・荒川良々のYouTubeチャンネルがひそかに注目を集めている。
芸能人のYouTubeチャンネル開設が日常茶飯事な昨今。華々しくYouTuberデビューする同業他者をしり目に今年の4月9日、人目を避けてしのぶように、荒川良々が“ひとり飲みYouTuber”としてこっそりとチャンネルを始動させていた。チャンネル名は「良々のお通し」。お通し1品、お酒1本、おつまみ1品という縛りのもと、毎回、荒川が居酒屋にふらっと訪れ、ちょっとした肴をつまみに、一人酒を飲むという内容だ。
このチャンネル、なによりも、訪れる街のセンスが良い。5月18日時点で投稿されている動画は6本。1本はチャンネル開設を知らせるオープニング動画なので、現状、5本の一人飲み動画がアップされている。初回が「浅草」で、以降「浅草観音裏」「亀戸」「根津」「代田橋」と続く。いずれも、庶民の息遣いが聞こえてきそうな東京の古き良き下町だ。
そして、荒川が訪れるのは個人経営店のみで、座るのはきまってカウンター席。「あ、どうもすいません」と入店し、席に着くと「すいません、瓶ビールを」とお願いする。そんな具合に、荒川は常に腰が低いのだが、店主とカウンター越しに会話を交わしていくうちに少しずつ打ち解けていく。
もっとも反響が大きかったのが、亀戸の団地内にある居酒屋へ訪れる動画で、26万再生(5月18日時点)をマークしている。荒川が尋ねたのは、おそらくは、団地に住んでいる人とその周辺に住んでいる人くらいしかその存在を知らず、その知っている人たちですら横目で見つつ通り過ぎてしまうようなこじんまりとしたお店。中に入り出されたのは、トマトのお寿司などこだわりの突き出し4品。大手チェーンの居酒屋ではなかなかお目にかかれない不思議な絶品料理に、荒川は舌鼓を打っていた。
筆者も長く亀戸で暮らしているが、このお店、「言われてみれば確かにある」くらいの認識で、決して目立つような存在ではない。こうした「通り過ぎてしまう居酒屋」は、誰の街にもきっとあるはず。「良々のお通し」では、現地住民でさえ一見さんとして入るにはちょっと勇気がいる個人経営店の実態を、荒川の低姿勢でありながら、どこか飄々とした独特のキャラクターを媒介にして紹介している。
「良々のお通し」だけでなく、個人経営の飲食店をフィーチャーする芸能人のYouTubeチャンネルは近頃増えている。