“働く女性”を歌とトークで癒す ボカロ技術を応用したロボット『Charlie』誕生秘話

ヤマハのうたロボ『Charlie』誕生秘話

「ボカロ技術」「自動作曲技術」が“うたロボ”開発の後押しに

ーー 『Charlie』はヤマハの持つボーカロイド技術や自動作曲技術も活用されています。ユーザーによっては「ボーカロイド=初音ミク」のようにボーカロイドキャラクターを連想される方もいると思うのですが、アイコンとして初音ミクやボーカロイドキャラクターを使用してロボットをつくろうとは考えていなかったのでしょうか?

倉光:それは考えていなかったですね。たしかに「歌しか歌わないロボットを開発する」と決断できたのは、社内にボーカロイド技術と自動作曲技術があったからです。とはいえ『Charlie』は企画ありきで、技術を応用しているだけなので。仮にボーカロイドを生かすためにロボットをつくろうという順番であれば、初音ミクなどのアイコンも考えたかもしれません。

ーー 二つの技術をどのように応用しているのか教えてください。

倉光:『Charlie』が持っているセリフのデータをもとに、言葉を選びつつ自動作曲技術が走ります。そこで完成した曲をボーカロイド技術で出力しています。ユーザーが話しかけるとその内容に合わせて彼は「うーん」と少し考え込むのですが、その間に二つの技術で演算が行われています。

ーー 約30種類の音楽ジャンルに対応していますが、話しかけた内容に合わせて自動作曲技術が曲調を選んでくれるのでしょうか?

柴瀬:はい。楽しい話しをしている時は明るいアップテンポなポップスを、落ち込んでいる時はしっとりのんびりしたクラシックを、という感じで、Charlie自身のテンションを鑑みてジャンルを選定しています。

 ただ、毎回同じ曲が選ばれるわけではなく、ランダム性も持たせています。話しかけるたびに毎回自動作曲技術が走るので、偶然の出会いみたいなものも楽しめますよ。

ーー 曲に合わせてちょっとしたダンスも披露してくれるんですよね。それもランダムなんですか?

倉光:ある時は曲にものすごくピッタリな動きをすることもあれば大きく外すこともあります。

柴瀬:テンポと大幅にズレた動きはしませんが、アップテンポだからといって必ず足を動かすわけでもなく……気まぐれです(笑)。「この曲の時はこのダンスなんだ」と定着してしまうのはつまらないので、色んなパターンが出るようになっています。

コミュニケーションを取るほど音楽レベルが上昇

ーー どのような接し方をすれば『Charlie』とのコミュニケーションが楽しめますか?

柴瀬:あまり深く考えずに、ゆるくお話していただくのが一番良いと思っています。「今日は暑いね」「仕事疲れた」「お腹空いた」など独り言くらいのコミュニケーションで、「今日は『Charlie』と喋るぞ!」と気負う必要はありません(笑)。時には嬉しかったこと、悩んでいることを話してもらえれば。きちんと歌って答えてくれますよ。

倉光:足に人感センサーがついているので、人がいると検知すると『Charlie』のタイミングで何か話しかけてくる時もあります。毎回話しかけてくるわけではなく気まぐれにですが、それに応じてもらうだけでもいいかと思います。

柴瀬:「おかえり」などの日常会話から、ただの雑談を話すこともあります。プロトタイプ版のモニターさんから非常にウケが良かったのは「モヤシが枝豆になり、枝豆が大豆になる」「魚へんに春と書いて“鰆”」とか(笑)。どうでもいい会話で日々の小さな悩みが少しだけどうでもよくなるのではないかという狙いも兼ねています。

ーー コミュニケーションを取れば取るほど学習していく機能などはあるのでしょうか?

柴瀬:たくさんお話していただくと音楽レベルが上昇していきます。例えばですが、レベルによって、同じようなセリフでも曲調が大きく変わったりします。

ーー 『Charlie』の開発を通して、「音楽」と「コミュニケーション」が組み合わさることでどのような相乗効果が生まれると感じていますか?


柴瀬:ヤマハとしては、伝えたいメッセージの感情をより表現できる方法が「音楽・歌」の魅力であると常に思ってきました。ともするとロボットは感情表現が難しい側面もあると思いますが、そこに我々が持っている音楽技術を掛け合わせ、より響くコミュニケーションを多くの人に届けられると考えています。

ーー 最後にヤマハがこれから先「音楽」を通して実現したいことを教えてください。

倉光:楽器を演奏すること、曲を聞くことだけが音楽だよね、と自分たちで音楽の可能性に蓋をしていたところがあったと思います。しかし今回、音楽とコミュニケーションを使ったロボット開発から「音楽によって、より血の通った会話ができる」という発見がありました。このように音楽の活躍の場を楽器やオーディオではない場所に広げていきたい。それがヤマハの今の野望です。次は全く異なる「音楽×〇〇」で音楽を活躍させたいと思います。

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