日本のサッカー業界における「新しい観戦様式」 ヤマハ新技術&“観客との共創”が見せる未来
今年はコロナ禍により、オンライン開催となった『CEATEC 2020』。本稿ではカンファレンス「プロスポーツ業界×最新テクノロジーで“スポーツ観戦”のニューノーマルを創る!」の【第1部】パネルディスカッション「日本サッカー業界×最新テクノロジーが拓く“新たなスポーツ観戦様式”」から一部を記す。
パネラーはDAZNの水野重理(シニアバイスプレジデントコンテンツ)、サガン鳥栖の梅本昌裕、ジュビロ磐田の柳原弘味(事業戦略本部長)、福島ユナイテッドFCの井上敦史(取締役営業部長)。進行はヤマハのSoundUDグループリーダー・瀬戸優樹(SoundUD推進コンソーシアム事務局長)が務めた。
DAZNと「Remote Cheerer」がスポーツ観戦のニューノーマルに?
このカンファレンスは、ヤマハが開発したリモート応援システム・「Remote Cheerer」の活用が焦点となっていた。この「Remote Cheerer」は、専用サイトにある各機能を利用すると、何らかの理由で会場に赴くことができない人々でも、会場に設置されたスピーカーを通じて、歓声や拍手などのアクションを伝えられるというものだ(もちろん当カンファレンスでも使用された)。
ディスカッションの話題は、先にコロナ禍の影響や「Remote Cheerer」の可能性などについて語ったことを踏まえ、スポーツ観戦におけるニューノーマルへと移行。瀬戸は各氏に、コロナを契機として、どういったことを考えているのか訊ねると、ボードには井上が「地域活性化」、水野が「インクルージョン」、梅本が「共創、Co-creation」、柳原が「つながりの促進」と掲げた。
井上:スタジアムに来ることと、DAZNや「Remote Cheerer」を使って応援することに相互な関係ができないのかなと。例えばDAZNを使ったバーチャルな世界を作って、福島のものを買えたり、食べ物を食べたりしながら、試合はDAZNで見る。その中でポイントを貯めていって、実際の試合ではどんな楽しみがあるんだろうと思って、スタジアムに行ってポイントを使う。お互い相互関係ができることによって、地域というものは活性化して、とてもいい関係ができるのではないか。
水野:今回の「Remote Cheerer」の仕組みがきっかけで、いろいろな夢が広がる。コロナだからではなく、色々な可能性がでてきて、ファンと作るスポーツ観戦みたいなのが、本当にニューノーマルになっていくのかなと実感している。インタラクティブに参加するというのは、もうごく当たり前になるのかなと思う。今は無観客だが、観客が帰ってきた時に、満席になった上で、さらにサポーターがリモートからも参加するということ。DAZNはいつでもどこでも好きな時にスポーツを見られるということでスタートしたが、どうやってみんなと見られる、応援できる環境を作るのかが大事で、まさにそういうテクノロジーと、スポーツのクラブや選手と協力しながら作っていくのかを考えさせられる。
梅本:コロナに限らず、ヤマハが「Remote Cheerer」を作る時に、もともとケガや入院などでなかなかスタジアムに来られないとか、様々な要因がある人々が、容易に来られたり、思いを伝えられたりといった環境を目指していたと思う。今回サッカーで使わせてもらって一番感じたのは、僕らだけではできなくて、それを使うサポーターがいないと成り立たない。あと、スタジアムの調整であったり、様々な人が関わって事業を作っていくというのを強く感じている。ただ、これで終わりではなく、新しい技術をどう使って、今までやってきたものを今後どうやって活かしていくのか、クラブとヤマハ、色んな企業を交えてやっていけたらと思う。
柳原:スポーツビジネスというのは、そもそもたくさんのお客さんにスタジアムに来てもらって、スタジアムが満杯になることでスポンサーに協賛してもらえるように、それによって飲食やグッズの売上を上げるというビジネスモデルを模索してきたが、コロナで全く違う方向に舵を切らなければならなくなったというのがある。そうした中でもクラブが存続していくために、新たなファン作りであるとか、そういったものをきちんと模索しながらやっていかないと、クラブの存続以外にも色んなところに影響しているはず。お客さんは、誰かと繋がりたいという気持ちを持っているなと。バーチャルの中でいかにコミュニティを作ってあげて、今までとは違う観戦の仕方、同じ時間帯に同じ趣味を持った人たちが集まって、違う視点で解説しながら新たにファンがつながる場があってもいいんじゃないかなと思う。