『モンハン』らしさは失われてしまったのか? 『モンハンライズ』をクリアしてわかったこと

『モンハン』らしさは失われてしまったのか?

 3月26日に発売された『モンスターハンターライズ』が好調に売上を伸ばしている。発売から2週間程度経ったこともあり、そろそろ集会所の最後のクエストまでクリアしたというプレイヤーも増えてきているのではないだろうか。今回は、『モンスターハンターライズ』を集会所ラストまでプレイしたうえで見えてきた良かった点と残念だった点について考えていく。一部ネタバレ要素を含むため、くれぐれも注意してご覧いただきたい。

アクション面が快適で”歴代最高傑作”の呼び声も高い

 本作に対する評価はさまざまだが、概ね好評であるといっていいだろう。もちろん、プレイヤーによって受け取り方はそれぞれではあるものの、『モンスターハンターライズ』は筆者にも素晴らしいゲーム体験をもたらしてくれた。”歴代最高傑作”の呼び声が高いのも頷ける。

 特に評価が高いのはアクション面の大幅な改善だろう。今作で導入された「翔蟲」はハンターのアクションを多彩にし、モンスターとの駆け引きにおける自由度が大幅に向上した。「一方的に攻撃されてキャンプ送りにされる」といった理不尽な負けパターンに陥る可能性が減り、快適に遊べるようになったのは嬉しいポイントだろう。

 一部では「モンスターが弱い」という声も聞かれるが、どちらかといえば「ハンターが強くなった」という印象が強い。実際のところ、集会所上位にもなると即死級のコンボを使ってくるモンスターも数多く存在した。また、過去作にも登場した「リオレウス」などの一部モンスターは行動パターンが大きく変更され、非常に手応えのある強敵へと変貌を遂げている。しかし、「翔蟲受け身」や「操竜」などの新アクションを使いこなせばこのような強敵とも十分に渡り合うことができるため、個人的には本作の難易度調整に満足している。

利便性を追求したシステムとSwitchへの最適化により高いユーザビリティを実現

 『モンスターハンターワールド』よりもさらに利便性が向上したシステムも高評価につながっている。たとえば、鉱石や虫、ハチミツなどの採集はボタンを1回押すだけで完了するようになった。もうピッケルを何度も振り下ろすハンターの背中をじっと眺めている必要はない。また、ホットドリンクやクーラードリンクも廃止されたため、雪山や砂漠のクエストで持ち物を忘れ、キャンプや拠点まで取りに帰るといった面倒もなくなった。

 加えて、本作はNintendo Switch向けに最適化されているという点も素晴らしい。当然ながらPlay Station 4でリリースされた『ワールド』と比較するとグラフィック面で劣ることは否定できないが、実際に『ライズ』をプレイすれば、Nintendo Switch向けのタイトルとしては非常に高水準なグラフィックであることがわかるだろう。それでいてフレームレートが安定しており、ロード時間は短い。本作が徹底してプレイヤーが快適に遊べるよう調整されていることが伺える。

利便性と引き替えに失われつつある「かつてのモンハンらしさ」

 個人的にも本作の評価は非常に高い。過去作と比較して『ライズ』はもっとも遊びやすいモンハンだと断言できる。しかしながら、そんな遊びやすさの裏ではいくつか残念な点も垣間見えた。

 先に触れたように本作はユーザビリティが高い設計になっており、ストレスなく遊べることも高評価に繋がっている。しかし、あまりにも利便性を追い求めたゲームデザインゆえ、どこか味気ないと感じてしまう部分もあった。

 そもそも、歴代モンハンプレイヤーの中には、”不便さ”を楽しんでいた人も一部いるのではないだろうか。たとえば、筆者が初めて遊んだモンハンは『モンスターハンター2(ドス)』で、プレイを開始すると回復薬が店で購入できないことに驚いた。回復薬が欲しければわざわざフィールドに出向いて「アオキノコ」と「薬草」を採集し、その二つを調合してようやく回復薬を手に入れられる……というのが過去のモンスターハンターだ。この仕様は現在のサバイバルゲーム等に通ずるものもあり、不便ではあったものの、それを乗り越えてモンスターを討伐するからこそ喜びが大きかった。

 しかし、モンスターハンターはシリーズを追うごとにこれらのシステムを刷新し、初心者でも取っつきやすいタイトルへと変貌を遂げていった。これは時代の流れなのかもしれないし、そもそもかつて我々が楽しんでいた「モンハンらしさ」は利便性とトレードオフの関係にあるのかもしれない。加えて、個人的にもモンハンが遊びやすくなっていくことは歓迎したいと思っている。しかしながら、『ライズ』は利便性を追求した結果、モンスターとの戦闘だけに終始するタイトルになった感が否めず、やや没入感を得にくいという印象を受けた。

アップデート前提の作りはモンハンだから許されるのか

 過去作を遊んできたプレイヤーからすれば、もう一つ気になる点がある。それは幼体が存在するにもかかわらず成体が登場しない一部のモンスターだ。

 たとえば、寒冷群島に登場する小型モンスターの「スクアギル」は、「ザボアザギル」という過去作で登場した大型モンスターの幼体だ。しかし、本作にはザボアザギルが最後まで登場しない。また、砂原で登場する「ジャギィ」と「ジャギィノス」には群れのリーダーとして「ドスジャギイ」がいるが、こちらも今作に登場していないのは残念に思う。今後のアップデートでこれらのモンスターが登場する可能性もあるのだろうか。

 さらに、本作は集会所クエストを最後まで進めてもストーリーが完結しない。現時点ではラスボスの位置付けにある「ナルハタタヒメ」を討伐することはできず、撃退するにとどまっている。また、”いずれは「ナルハタタヒメ」とそのつがいである「イブシマキヒコ」を討伐しなければならない”といった文脈で製品版のストーリーは一旦終了するのである。つまり、アップデート前提のシナリオ設計になっているのだ。

 ここについては賛否が分かれる部分だろう。今後のアップデートで追加エンディングを実装予定と発表されてはいるが、それがいつになるかは現時点ではわからない。そのため、早い段階で最後までプレイしてしまった人は、真のエンディングを見るまで(恐らく数ヵ月程度の)おあずけを食らうことになる。とはいえ、モンスターハンターシリーズではストーリーがそれほど重視されず、「本編クリアまでがチュートリアル」と捉えている人も多い。このような背景もあり、シナリオが完結しない点については「モンハンだからこそ許されるやり方」なのかもしれない。

 また、アップデート前提といえば、「ヌシモンスター」単体を狩猟するクエストがないのも不満ではある。現状、ヌシモンスターは「百竜夜行」の最後に登場するだけで、ハンターと1体1で戦うことはできない。百竜夜行では反撃の狼煙や狩猟兵器などを駆使するといつの間にかヌシモンスターを討伐しているパターンもあるため、ぜひとも通常マップでじっくり戦ってみたいものだ。今後アップデートでヌシモンスター単体を狩猟するクエストが追加されることを願う。

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