TikTok、米国でのダウンロード禁止を免れるも「ユーザー減少」「採用活動」などに大きな影響

TikTok、DL禁止回避も大ダメージか

 米連邦裁判所は、TikTokダウンロード禁止令を差し止めるとした。一旦は危機を免れたものの、同アプリが被った損失は甚大なものとなっている。

禁止令施行直前で「待った」の判決

 9月27日、連邦裁判所は、米国でのTikTok禁止令を暫定的に差し止める判決を下した。判決が出たのは、禁止令が執行されるわずか数時間前のことだった。

 米商務省は9月初めに、同アプリのダウンロード禁止を9月20日に、サービスの閉鎖措置を11月12日に行うと発表した。しかしオラクル、ウォルマートとの提携の話が持ち上がったことで、ダウンロード禁止措置を延期していた。

 TikTokの弁護士、ジョン・ホール氏は公聴会で、「今回の禁止令は、自由で、オープンなコミュニケーションが最も必要とされる大統領選の前に行われた異常な行動だ」と述べている。

 一方で政府側の弁護士は、「中国企業によるTikTokの運営は、国家安全保障に関わる“差し迫った危険”である」と主張した。TikTokの親会社、ByteDance(バイトダンス)は北京を拠点としており、米国ユーザーのデータが中国政府の手に渡るリスクがあると考えているようだ。しかしバイトダンスはこれを否定しており、米国のデータは米国で管理し、バックアップデータはシンガポールに保存されているという。

 裁判官、カール・ニコルズ氏の判決理由については公表されていない。しかし公聴会で同氏は、「トランプ政権の禁止令は、会社の適法手続きの権利を侵害していると見なされる可能性がある」と語った。

禁止措置免れるも、新規ユーザーは減少

 この結果を受けて、TikTokは「我々にとって喜ばしい判決だ」と声明を発表している。また、「地域社会と、社員の利益のために運営権利を維持し続ける」とし、引き続き政府と話し合いを続けると述べた。

 しかし今回の騒動は、TikTokに莫大な損失をもたらしている。米メディア『Business Insider』によると、同アプリは、米国だけで1日に42万人以上の新規ユーザーを獲得していた。ところがトランプ大統領がTikTok禁止の可能性を示唆した7月1日以降、その数値は急激に減少し、アクティブユーザーも50万人以上減ったという。バイトダンスの米国CEO、バネッサ・パパス氏は、「米国の新規ユーザーを排除することは、我々の成長を阻害し、すぐに市場シェアを縮小してしまう」と裁判所に訴えている。

 また同氏は、「米国でTikTokを禁止すると、グローバルに展開できるコンテンツが大幅に減少し、ビジネスチャンスも縮小する。新規ユーザーと既存ユーザーの両方に影響を及ぼすだろう」と述べた。米国のクリエイターから発信されるコンテンツは、世界中のユーザーに表示されるコンテンツの60%を占めるとも言われている。彼らが同アプリにおいて、またグローバルエコシステムにおいて、非常に重要な存在であることがわかる。

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