クラウドゲーミングはコミュニケーションを加速させる? ゲームメーカーのキーマンたちが語り合う

クラウドゲームはコミュニケーションを加速させる?

 コロナ禍の影響を受け、今年はオンライン開催となった『東京ゲームショウ2020』。本稿では基調講演「未来は、まずゲームにやって来る。」の模様から一部を記す。

 登壇者はバンダイナムコスタジオの内山大輔(代表取締役社長)、カプコンの竹内潤(常務執行役員CS第一開発統括兼第一開発部長)、コナミデジタルエンタテインメントの谷渕弘(エグゼクティブディレクター)、スクウェア・エニックスの浜口直樹(第一開発事業本部ディビジョン1 マネージャー)。コーディネーターはKADOKAWA Game Linkageの林克彦(ファミ通グループ代表)が務めた。

ハードウェアでの棲み分け ローディングの代わりにやるべきこと

左から林克彦、内山大輔、竹内潤、谷渕弘、浜口直樹。
左から林克彦、内山大輔、竹内潤、谷渕弘、浜口直樹。

 まず、既にPS5とXbox X/S向けの新作を発表している内山と竹内が、それらの印象を語った。

内山:エンジニアもものすごく手応えを感じていて、高速SSDはもちろん、CPU・GPUのパワーに驚かされているという感じの話はよく聞く。これをゲームユーザーの体験にどうつなげていくのか、パフォーマンス以外にどういう遊びにつなげていくのか。個人的には、逆に挑戦状を突きつけられているという感じ。

竹内:現行機の世代で、表面的に使っていた部分のもう1つ裏側を見れたなと思っていたら、次世代機は、そのもっと向こう側、遥か遠くに出口があるような感じ。一言でいうと「速い」。内山さんが言うように、この速さをどのようにゲームに落とし込んでいこうかというところから、まず削り取っていってるような感じ。できることが増えたというのもあるが、考え方を違うシフトにしないとうまく使いこなせないんじゃないかという印象。

 一方で次世代機向けの新作発表はないが、検証しているという浜口と谷渕が後を継いだ。

浜口:うまく他のゲームプラットフォームと棲み分けがされてきたなというのをスゴく感じた。スマートフォンはゲームをいつでもどこでも手軽にという生活に溶け込んだゲームに変化してきているが、よりハードウェアが進化した次世代のゲームというのは、より「ゲームをやるぞ!」という時に、特別な体験とか特別な没入感をやることを目的とした感じに進化してきている。そのモチベーションのユーザーにちゃんと届ければいいという意味で棲み分けされたことで、それに対して価値を求めているユーザーにコンテンツを届けやすくなるのを感じた。

次世代機の未来。
次世代機の未来。

谷渕:私の手掛けているのはスポーツゲームなので、若干他の方と方向性が全然違うかなというところがある。次世代機というと、それまでのゲームに興味関心のある人が最初に買うと思うが、結構一般的なタイトルを作っているので、それをどのように届けていくかが課題。(実際の)スポーツの方にもIT技術みたいなのがスゴく入ってきてるので、それをどうハードとかに落とし込んで新たな遊びを作り出すかというところは考えている。

 話の中で、竹内が処理の高速化が及ぼしている例として、ローディング時のTipsが表示できなくなっている件にも触れると、内山も同様の件をスタッフから聞かされていると首肯し、使いこなすためには違った視点で取り組む必要があると応じた。

竹内:実際に次世代機を触っていてどう思うかという表面的なことではなくて、もうちょっと奥にあるものが出てきている気がしている。今までと違うと感じているのが、ソーシャルネットワークにいる皆さんと、ゲームをプレイしている自分というのが違うかたちでつながっている感覚。高速ローディングとかそういったところにも直結していて、今まで配信を見てても、ローディングの間は待っていてトークでつなぐみたいなところがあったが、こういったのがどんどんシームレスになっていて、逆にこちらから「トークタイムですよ」みたいに設けていったりとか、作り手側がアプローチするみたいなのが必要になってきていると感じる。これはスゴくチャンスになるんじゃないか。

ゲーム体験はコミュニケーション前提 オンラインで取り組むには

ユーザーコミュニケーションについて。
ユーザーコミュニケーションについて。

谷渕:結構ユーザーコミュニケーションというのの重要さは大きくなってきている。最近で言うとStadiaはYouTubeで見てたらゲームに乱入できたりするし、弊社でも『スーパーボンバーマンRオンライン』にそういう機能がある。ゲーム実況もその一種だと思うが、自分たちのゲームではなくて、ユーザーが、皆さんがどういう風に楽しむゲームなのかみたいなのが色濃くなってきている。

 続けて谷渕が、コロナ禍で開幕が延期していたメジャーリーグのシカゴ・カブスに所属するダルビッシュ有投手と、『プロ野球スピリッツA』でコラボした話などを受けて、浜口が『FINAL FANTASY VII REMAKE』で生じた事象を語った。さらに内山は、先の違った視点として、ゲーム体験のあり方を見つめ直す必要性にも言及した。

浜口:(『FF7R』を)緊急事態宣言の直下にリリースしたので、我々が企画していたリアルイベントが全部できなくて、逆にみんな家にいたのもある。そういうニュースとか、実況動画とか見てスゴく盛り上がって拡散されてるのは、やっぱり今の時代だなと。その時(開発中)にSNSまでは思考がいってないが、やはりリメイクタイトルなので、このモンスターはこういう風に演出で出してやろうとか、色々仕込んでいた。リリースした後にそのキーワードで検索してみたりして、やっぱりちゃんと突き刺さったとかニヤニヤしながら見てたりした。チームのみんなにも「自分で関わったところはエゴサして!」って(笑)。

ウィズコロナ時代のゲーム作りと未来。
ウィズコロナ時代のゲーム作りと未来。

内山:ゲームというものの定義をどこまでと捉えたらいいのかを見つめ直しつつ、再定義をし始めようとしていたら、ちょうど外に出れなくなってしまった。eスポーツの試合とか『アイマス』のライブがない。ただゲームを中核として、ライブやeスポーツの大会、その実況を見たりとか、皆さんとSNSにつながったりとかっていうのが、広くとるとゲーム体験なんだろうという認識はある。このゲーム体験というのは、ゲーム以外の広がりのつながりの中でゲーム提供側からすると、どういう機能や仕様のアイデアを出さなければならないか、かなり考えてやっている。開発スタジオとしてそういうところのフォーカスは、やっぱりもう外せないなと思う。

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