金子ノブアキ&草間敬と考える、“ロックバンドと電子音の共存”に必要なもの

金子ノブアキ&草間敬対談

「『はい、お前クビー! ドラムの人クビでーす!』となりがちで(笑)」

ーー休符の話にも通ずるところがありますが、バンド的なアプローチをしているかと思えば、生の音が一つも鳴っていない箇所に曲のおいしい部分を委ねたりもしていて。RED ORCAは、あくまで曲をどれだけ良く聴かせるかに重きを置いたプロジェクトなんだと感じました。

金子:そうですね。僕もプレイヤーのスタイルとして、シンバルを止める、いなくなる瞬間のことに終始して、自分の切れ味を磨いてきたし、結果的にこの何十年かで、楽器奏者としてのスタイルを確立することができたと思うんです。「Octopus」みたいなハネてるビートーーヒップホップ〜ミクスチャー的アプローチはもちろん得意としてますけど、楕円のビートというか、絶対的に止める箇所を作る方が大事だという意識に変わってきました。止め方もいろいろで、バッといなくなるところと、フェーダーを落とすようにいなくなるところと、みたいにその時々でイメージを変えて使ってみたり、手のどこまでをスティックとして考えるかという意識を変えることで、残響の度合いを変化させたりもしています。自分でリバーブを体にかけてるようなものです(笑)。

ーー今回の作品制作において、草間さんが一番細かく手を入れた箇所はどこなんですか?

金子:草間さんがいないと一番成り立たなかったのは、ボーカルレコーディングですね。コードの分解をどう取りまとめるかというときに、かなり助けてもらいました。

草間:来門くんのラップってメロディー性が結構強いので、あっくんの作った原曲と比べて、それならこういうコードにしようかと調整したり、そこから京太郎くんが「もっと前に出たい」と言ってサブドミナントやドミナントを入れてくることもあるので、そこをぶつからないように工夫したりとか。それが一番顕著なのは「LOBO」で、ソロアルバムのバージョンと違ってグイグイくる感じで良かったんですけど、最後でドミナントに行くかどうかのせめぎ合いが起こったり(笑)。

金子:京ちゃんは最初の頃、自分の歌心や”スラップだけじゃない”という部分を強くアピールしてましたね。でも、あれだけわかりやすい武器を持ってるんだから、それは絶対使ったほうがいいと伝えたりはしました。

ーー「ORCA FORCE」の中盤〜後半のスラップの使い方がすごいと思ったりもしましたけど、全体を通して聴いてみたら、スラップが逆に入ってこないというか、スラップですら馴染んでいる全体像になっていて驚きました。

金子:それはたしかにそうかも。「Night hawk」でも、スラップの使い方が本当に上手くて。1小節に1回、4拍目に入れていて、それが全体の呼吸につながっていたりとか。

ーープログラミングの部分で、同期をここで使う・使わないといったパートのせめぎ合いはどういう風に決めていったんですか。

金子:レコーディング段階では、一度打ち込んだ音に合わせて、全体を生で録って、そこから引いていく作り方にしました。例えば「Phantom Skate」は、後半でダンスビートっぽい感じになるんですが、あそこのドラムは頭でスプラッシュを叩いてるだけで、キックすら踏んでない。自分で叩いてるからかもしれないのですが、「はい、お前クビー! ドラムの人クビでーす!」となりがちで(笑)。叩いてる時は、バンドマンとしてのエゴが前面に出てるんですけど、ブースに戻ると「こいつ要らないな」と思っちゃう。かつてはクリックも嫌だったドラマーがこういう風になってるというのは、昔の自分からは考えられないですね。

ーーちなみに、次回作以降の構想ももうできているのでしょうか。

金子:曲によっては、ここからは想像つかない感じになるかもしれません。生のドラムをどれぐらいの感じで入れようか、みたいな具合が変わるだけでも大きく違うので。あとはもうちょっと頭を柔らかくして、トリガリングするときの音色とかも探していってみようかなとか、シンバル周りの機材に関しても、コンプをかけるときにまず問題になってくるのはシンバルなので、追求に終わりはないですね。いまMEINL(マイネル)のシンバルがすごく流行っているのも、コンプが掛けやすいからだと思うし。

ーー後でいじり直すことを前提とした音や楽器が求められている。

金子:そうですね。ドラムは特にそれ前提のキットバランスになってきているところがあるかもしれません。僕はスタイル的に3点で部屋の音を入れないと自分の感じが出てこないので、部屋の音でアンビエント感を出しつつ、金物をしぼって、コンプをぶっこんで、の塩梅を繰り返すんですけど、これはやっぱりプロのエンジニアに任せた方がいいですね。自分で考え出すと、プレイに影響しちゃうから。そんなことを考えながらみんなで新曲を作ってるんですが、特に草間さんが結構作ってきてくれているので、シーズン2での変化を楽しみにしてもらえればと思います。

■リリース情報
RED ORCA 1stアルバム『WILD TOKYO』
発売中

〈収録内容〉 
1. ORCA FORCE
2. beast test
3. Night hawk
4. Phantom Skate
5. Octopus
6. LOBO ~howl in twilight~
7. ILLUSIONS ~Jump over dimension~
8. MANRIKI ※映画"MANRIKI"主題歌
9. Saturn
10. Rainbow

配信はこちら
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