金子ノブアキ&草間敬と考える、“ロックバンドと電子音の共存”に必要なもの

金子ノブアキ&草間敬対談

「人間が曲を超えて、結果喰っちゃったみたいな」

ーーそれを踏まえた上でRED ORCAの新作を聴くと、色々納得できる部分があります。ミクスチャーの良いところである、塊としてもドカンと刺さってくる音もありつつ、一曲の中で静と動を演出していて、バランスが絶妙だと思いました。

金子:ありがとうございます。ライブを想定した時に、給水所のようなものを作りたかったというのもありますが(笑)。生のバンドだけでやってると、ドラムって手を止めるポイントがなかなか難しかったりするんですが、シーケンスを走らせているとそういう緩急もつけることができる。音楽的な志向や哲学という点でいえば、デカい音や音符は休符のためにあるものだと思うので、引く部分を作ることや、引いた時に何を残すかというのは自分の中で重要視しています。あと、この豪華なメンバーでやっているからこそ、入りのインパクトがとてつもなく大きいというのもあります。(葛城)京太郎と来門が入ったことで爆発の沸点がすごいというのは確信したので、それを立たせるために引くポイントを作ったという。

ーー制作環境の変化がRED ORCA始動に繋がり、メンバーの加入によって曲の作り方が変わったんですね。

金子:あと、個人的にもいわゆる“ロックバンドカルチャー”へのアウトプットが著しく足りてない時期だったんです。RIZEもこの先どうしようという感じになったなかで、タイミング良く来門や京太郎が集まってくれたのもありますし。

ーー結果的に来門さん、PABLOさん、葛城京太郎さん、草間敬さんというドリームチームが集まって。

金子:運が良かったですよ、本当に。

草間:でも、今回のアルバムはほぼ全曲あっくんが最初にデモをしっかり作ってくれたからこそ、そこに京太郎くんやみんなが乗っかっていけたんだと思いますよ。

金子:まあ、手ぶらで口説けないですから(笑)。最初だし、どういうプロジェクトなのか口で説明するよりも、「こういうことやりたいんだけど」って音でわかってもらえたほうがいいだろうと。

ーーここまで手練れのメンバーが集まると、そこを意識した曲作りになりますよね。

金子:こういう展開を作ると、来門の中のブルースがブワッと出てくるだろうなとか、京ちゃんの22歳と思えない引き出しの多さなら大丈夫だろうなとか。京ちゃんに関しては、あいつの師匠は僕の弟(KenKen)なんですよ。弟が京ちゃんをプレイヤーとしてここまでアップデートしてきたんですけど、色んな音楽を彼にインストールしたのは僕なんです。そういう歴史を経て、いまは今後の時代を引っ張っていくプレイヤーの一人に成長したと思うし、そんな奴から「一緒にやりましょう」なんて言われたら、やるしかないですよね。

 最初はセッションするだけのつもりでしたけど、来門と彼が並んで爆発する様が、想像するだけでめちゃくちゃ面白そうだったんですよ。だから京ちゃんの加入以降は、曲作りも「ベースが泳ぎ回れるように」というイメージで隙間を残したりして。僕は彼の師匠のこともよく知ってるし、ラッパーともずっとやってきたから、ミュージシャンのスタイルとして一番立たせやすいタイプの2人なんですよ。だから、逆説的にいうとこの2人とやることで、ドラムも立ってきてるという。そんな出会いがあったから、最初の構想よりもすごく土臭くなっちゃいましたけど(笑)。

ーー「Octopus」や「Saturn」を聴いていて、各パートがパキッと分離しているけど、音像としては固まりになっている感じのものを作りたかったのかなと思ったんですが、フルで聴いたあとは「それより各プレイヤーのポテンシャルがすごいな」という感想が先に来ました。

金子:本当にそうですね。人間が曲を超えて、結果喰っちゃったみたいな。確かに「Saturn」は如実で、このトラックはいつかラップを入れてもらおうと思って作ったものだったし、クラブミュージックに精通していたり、ポエトリー的なアプローチも得意な来門が入ったことで世に出せることになった曲なんです。

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