金子ノブアキ&草間敬と考える、“ロックバンドと電子音の共存”に必要なもの

金子ノブアキ&草間敬と考える、“ロックバンドと電子音の共存”に必要なもの

 音楽家の経歴やターニングポイントなどを使用機材や制作した楽曲とともに振り返る連載「音楽機材とテクノロジー」。第七回は、RIZEのメンバーとしてはもちろん、ソロプロジェクトでも様々な音楽を生み出し続け、最近では新プロジェクト“RED ORCA”をスタートさせ、来門(Vo / ROS、SMORGAS)、PABLO (Gt / Pay money To my Pain、POLPO)、葛城京太郎(Ba)、草間敬(Manipulator)とともに楽曲を作り上げている金子ノブアキが登場。

 今回は、金子に加え彼の“打ち込みの師匠”でもある草間にも参加してもらい、金子の曲作りにおけるステップアップや、草間とともに作り上げた音源の裏側、この時代にロックサウンドを作るうえで気を付けるべきこと、ロックと打ち込みの両者を尊重し、共存させる方法などについて、じっくりと話を聞いた。(編集部)

「草間さんに『塾生として教えてください!』って」

ーーそもそもお二人の関係性はどこから始まったんですか?

金子ノブアキ(以下、金子):一番最初は、Def Techの現場ですよね。

草間敬(以下、草間):そう。3rdアルバム(『Catch The Wave』)のレコーディングで、あっくん(金子)がハイハットとシンバルで参加してくれて……。

金子:そうだ! 彼らとは同じ事務所だったんですけど、いきなり売れちゃったもんだからスタッフも足りなくて、かなりカオスな状態だったんですよ。そんななかで3rdを作っていて、仕上げの2日前にメンバーから「リズムを強くしたいけど、どうにもならないんです」と連絡があったのを覚えています。助けてあげようと彼らのホームスタジオに出向いたときに、エンジニアとして現場にいたのが草間さんでした。音源を聴いたら、結構がっちり打ち込みが入ってたんで、「ピーター・ガブリエルの曲で、元The Policeのスチュアート・コープランドがハイハットだけ入れてる曲(「Red Rain」)みたいな感じで良いかもね」なんて草間さんと話して、ボーカルブースでハイハットだけ録音したんですよ。

草間:ハイハットのマイクも、ボーカル用のものでしたね。

金子:でも意外と音は良かった気がする(笑)。

草間敬

ーーそんなバタバタの現場で出会ってたんですね。当時の草間さんから見た、金子さんの印象は?

草間:RIZEはブレイクする前ぐらいから知っていて、「かっこいい人たちがいるな」と思っていました。出会うきっかけになったDef Techもすごいキャラクターでしたし、僕より一回り下の人たちがこんなにすごいことやってるんだから、もう隠居しようかなと思うくらい注目していましたよ。

ーーでは、ソロアーティスト・金子ノブアキとしての印象はどうでしょう?

草間:ソロでの1stアルバムを作っていた頃って、ちょうどAA=がスタートする時期と近かったんですよ。僕がタケシさん(上田剛士)と色々作ってた時に、あっくんから「ソロを作ってる」って聞いて、聴かせてもらったらすごくかっこよくて。僕も1曲だけMixで参加させてもらったんですが、それ以外の曲も良くて、いちプレイヤーだけでなく、アーティストとしてもこんなに凄いのかと驚きました。

金子ノブアキ

ーー草間さんがガッツリ参加したのはソロ2ndアルバム『Historia』からですよね。改めてエンジニアとして携わることでわかった、金子さんの特徴とは?

草間:『Historia』からはあっくんが自分で全部作るようになってきて、より自分らしさが出るようになったなと感じました。

金子:2ndはめちゃくちゃアナログな手法で、楽器を弾くだけでしたから。今のようにパソコン1台で全部作れる環境からすれば、原始人みたいな感じでしたよ(笑)。

草間:打ち込み含めて全部やるようになったのは3rdの『Fauve』からですね。

金子:振り返ると、『Historia』が本当に大きなターニングポイントでしたね。草間さんがAbleton Liveの認定トレーナーになったのを機に「塾生として教えてください!」って弟子入りしたんです。一念発起してパソコンも機材も揃えて、手取り足取り教えてもらったからこそ、ここまで曲作りができるようになったので。あと、Ableton Liveが僕にすごく合っていたというのも大きいです。直感的に操作できるし、DJをやるような感じで曲を作っていけるのが良くて、曲作りの基礎を覚えることができたからこそ、もっと難しい曲作りのやり方にも挑戦できるようになったので。

ーーメインのDAWはずっとAbleton Liveから変わらずですか。

金子:そうですね。今回のRED ORCAに関してもAbleton Liveで曲作りをしています。Ableton Liveって、いちいちアップデートが素晴らしくて。僕が手を出し始めた頃って、コンプ系のプリセットがあまり充実していなくて、良い意味でIQの低い音みたいなのが作りづらかったし、ロックサウンドとは相性があんまり良くないなという印象だったんです。ただ、Ableton Live 10になってから登場したいろんなプラグインが、ドンピシャで欲しいものだらけで。RED ORCAのサウンドは、それがなかったら生まれていなかったかもしれません。

ーーソロプロジェクトで作っていた曲の”ラップトップ+楽器のリアル感”は、機材と連動している部分が大きいんですか。

金子:そうですね。1stアルバム『オルカ』はある種の実験として8チャンネルのMTRを使って、自分が何ができるのかを試したものでした。当時住んでたマンションが半地下でドラムを叩けたので、マイクを一本立てて、ドラムだけ録ってそれをループして、当時の鍵盤が弾けるディレクターと二人で始めたんですけど、草間さんに手伝ってもらうようになってからは、頭の中で鳴っている音を制作することにもっと向き合うようになったし、Abletonを始めてからはあっという間にうわーっと作るようになっていきました。

草間:昔はスタジオでレコーディングをすることがミュージシャンの憧れで、それができない人たちはラップトップで制作する、というような感じだったんですけど、あっくんはその逆の順番で動いているから、また違った面白さがあったんでしょうね。

金子:そうそう。これ(PC)1つでこんなことまでできるの!? みたいなことが次々増えていく衝撃というか。2009年くらいに僕も個人名義で劇伴を作ったり、俳優の仕事も大きな作品にどんどん出て、ある種のブレイクスルーみたいなタイミングが訪れたり、AA=が始まったりと、色んな転機が同時に来たことで、自分が一気にアップデートされた感覚があったんです。そのタイミングで「ここは流れに飛び乗って、今までと違う暮らしにしてみよう」と色々環境を変えたのが、結果的に今につながっていると思います。仕事のやり方も、ライブで全国を飛び回って、映像作品の撮影をして、レコーディングをして……と慌ただしくなってきたからこそ、パッと開いてやりとりができるというテクノロジーの進化が、大きな支えになっていましたね。

ーー自宅スタジオについてはどのように変わっていったのでしょう?

金子:半地下の自宅スタジオは、機材が増えていくとともに住めなくなったので、自宅と違うところに制作アトリエを作って、2018年末まで使っていました。今は子どもが生まれたことで、家以外の場所にスタジオを持つのは難しいなと思うようになって、自宅の地下に作った作業スペースで制作をしています。結果的に、思いついたらすぐに作ることができるようになったし、みんなで制作しながら、保育園のお迎えにも行ける、みたいな仕事のスタイルも選べるようになりました。

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