遊びの力は社会を変えることができるのか? バンダイナムコ研究所に聞く”FUNGUAGE”というデザイン戦略

バンダイナムコ研究所インタビュー

いろんな”初めて”が起きて、いろんな遊びが生まれている

ーーFUNGUAGEは技術的には既に体験できるようになっているのですね。

© BANDAI NAMCO Research Inc.

高橋:最近世に出た例としては、今年2月に東京ミッドタウン六本木で開催された『未来の学校祭』で展示した『“Humanized Canon” composed by Escalator』があります。これは、人が乗ると音が鳴り、カラフルな照明が点灯し、乗る人が増えれば増えるほどそれらの演出がリッチになっていくという体験を実装した楽しいエスカレーターなのですが、実はエスカレーター上で「誰かが歩いている」ことを検出すると演出が止まってしまう仕組みが入っています。

 みんながきちんと立ち止まって乗っている中、誰かひとりが歩いたことで、みんなで生み出した楽しい演出を壊してしまうことになる。展示期間中に行った効果測定の結果を分析したところ、エスカレーター利用率だけでなく「手すりを利用した人」が有意に増加していたこともわかりました。FUNGUAGEデザインを社会実装することで、正しく乗ることで楽しくなる(Fun)→楽しくなりたいので(Fun)正しく乗る、という行動が誘発され、周囲に伝播していくのです。

 私も、ナムコに入社してからは大久保と同じくサウンドチームに在籍していましたが、サウンドデータの組み込み(実装)やゲーム機上での様々なチューニングなど、テクニカルな領域を中心とした開発経験を積んでいく中で、隅々まで考え抜かれた演出のデザインや仕掛けによってプレイヤーの感情が動かされる様子をたびたび目にしてきました。まさに「音によるFUNGUAGEデザイン」とも言えるでしょうね。

 全国の『あそびパークPLUS』に設置されている『海の子』や、東京都立川市の髙島屋S.C.内にある『ドコドコ』といった、バンダイナムコ研究所から生まれた最先端の映像・音響技術を活用したアミューズメント施設のコンテンツにも、そのあたりのデザインノウハウは最大限に生かされています。

ーー現在の新型コロナウイルス影響についてもお聞かせください。コロナ禍においてはエンターテイメントのあり方や重要性も大きく変わっているように思います。この変化をどう捉えているのでしょうか。

大久保:今までと全然違う行動のきっかけになっており、いろんな”初めて”が起きていると感じます。同時に、その”初めて”からいろんな遊びやエンタメが生まれています。オンラインミーティングのバーチャル背景や、SNSでの音楽セッションなど。

 この状況下だからこそ再発見、再認識された楽しさや価値があり、それは”遊び”の延長であり、今後もどんどん発生するでしょう。遊びは人生を楽しくするもので生きていく原動力にもなります。遊び単体に)実利はありませんが、こういったつらい時期でも社会を動かすための不可欠なパワーなんだなと感じてます。

© BANDAI NAMCO Research Inc.

ーー遊びはより必要なものとなっていくのですね。

高橋:機械の設計における「遊び」と、基本的な考え方は同じだと思うんです。精度や正確性のみを追求するなら不要だけれど、破損防止や振動吸収、耐久性確保など、動かし続けるためにあえて確保してある要素。人間も同じで、今回のコロナ禍のようなストレスフルな変化に適応し、日々の仕事や生活を続けていくために「遊び」は絶対に欠かせないエネルギーだと考えています。

■関連リンク
ホームページ

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる