『A LIFE』菜々緒、“共感できる悪女”で新境地へ その多面的な演技を読む
菜々緒扮する榊原実梨が、深冬の重病を会議の場で暴露し、浅野忠信扮する壇上壮大の責任問題を訴えるという波乱の展開で幕を閉じた『A …
見目麗しい容貌と育ちのいい物腰で、歌と踊りを巧みにこなし、時には意表を突くジョークを連発して婦女子の羨望をひとりじめする——。うーん、まさにかつての少女マンガの中でしか出会えなかったような男性像。レイト90'sに、「職業=王子様(←しかし98年にさらりと"王子廃業宣言"をしている)」として突如現れた及川光博(愛称ミッチー)は、まさしくそういう青年なのである。
96年にシングル「モラリティー」でデビュー。以降、"東京ファンク"なるテーマを掲げて、アルバム『理想論』(96年)、『嘘とロマン』(98年)、『欲望図鑑』(99年)の3部作を完成させる。ソウル/ファンク(オマー・ハキム、ウィル・リーといった名うてのプレイヤーとも共演経験あり)に接近しつつも、歌メロは一貫して黄金期歌謡曲のテイストを誇示し、<マニアックとキャッチー>の狭間を行き来するような世界観を築いた。
また、"ノン・カテゴライズ"というポリシーのもと、音楽活動以外に声優/役者(舞台・ドラマ・映画)にも進出し、テレビドラマ『白い巨塔』『ミステリー民俗学者 八雲樹』のほか、映画『春の雪』『キューティーハニー』など代表作多数。果ては『続・欲望図鑑』なる写真詩集でオール・ヌードまで披露。——世間の度肝を抜いた。
広範囲で活躍するアーティストだが、彼はあまたの付け焼き刃的マルチ・タレントとは一線を画す。なぜなら「自分」という素材が他人より恵まれていることを熟知しながら、さらにひとつの素材として冷静に自己プロデュースできるからだ。ステージ上での演出やブラウン管での一挙手一投足、及び発言に隙がないことからも、それは十分に窺い知れるだろう。ミッチーのあまりある自己愛は、そんじょそこらのナルシストとは偏差値の高さが俄然異なるのだ。06年のデビュー10周年に向けて、アルバム『夜想曲−ノクターン−』のリリース、全国ツアー、テレビ、映画と精力的に活動している。
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