『ラストノート』“葵”内田有紀の答えに凝縮された物語の核 それぞれが選び取った“幸福の形”

「この恋を、自分を失う恋にしたくない」
葵(内田有紀)がたどり着いた答えに、『ラストノート』(フジテレビ系)という物語の核が凝縮されていた。
東京に戻った葵は澄晴(寺西拓人)と再会するが、「一緒にいない方がいい」と別れを告げられる。葵と離れた途端に絵を描けなくなった澄晴は、彼女なしではまだ自分を信じられないことに気づいたのだ。一人でも自信を持てるようになりたいという澄晴の思いを受け入れた葵。別れた後、彼女はもう一度夢を叶えようと、調香部への異動を願い出る。だがそこで、澄晴との出会いで取り戻したはずの花の香りを、再び感じられなくなってしまったことが判明する。

この時、葵は澄晴に縋りつくこともできたはずだ。かつて、澄晴に騙されたと知ってなお、その恋を手放せなかった優子(坂井真紀)のように。けれど、葵はそうしなかった。自分の力で花の香りを取り戻し、調香師の夢を叶えると決意する。
この最終話が浮かび上がらせた本作の要は、「離婚し、夢も諦めた50代の女性が、20歳近く年下の男性との恋によって人生を取り戻す物語」にしなかったこと。いま考えれば、澄晴がロマンス詐欺師であるという一見突飛に思えた設定も、「こんなはずじゃなかった人生」を他者に回収してもらおうとしてもうまくいかない、ということを示すものだったのかもしれない。

それを証明していたのが優子だ。父親の介護を終えた優子が抱えていたのは、これから自由に生きられるという解放感よりも、「私の人生、こんなはずじゃなかった」という虚しさ。そんな彼女の目の前に現れたのが、澄晴だった。遥かに年下で、キラキラした男性が「必死で頑張っている人は綺麗」と言ってくれた。優子にとっては、報われなかったと思っていたこれまでの人生を、丸ごと肯定してくれるような言葉だったのだろう。だから、なかなか手放すことができず、澄晴を執拗に追い回し、唯一無二の親友だった葵との友情も嫉妬のあまり自ら壊しかけてしまう。
優子の行動は、澄晴や葵を振り回し、周囲から見ても痛々しいものだった。けれど、その選択のすべてが無駄だったわけではない。スナックで働き始めたのだって、当初は澄晴に貢ぐためだったかもしれない。だが、そこで同僚や常連客と親しくなり、高校時代に自分に憧れていた岩村(平原テツ)とも再会する。間違った選択から始まった場所が、いつしか優子にとって大切な居場所になっていた。そんな優子だからこそ、かつての自分のように「全部、なくなっちゃった」と涙を流す葵に傘を差し、「葵の中に残ってるもの、きっとあるはずだよ」と言えるのだ。




















