『ブラッサム』“珠”石橋静河が味わう初めての挫折 トルストイから浮かぶ“女性の幸福”

10月6日放送の連続テレビ小説『ブラッサム』(NHK総合)第7話では、立ち上げたばかりの企画が早くも頓挫した。
第2週の舞台は大正2年(1913年)、珠(石橋静河)は高等女学校の4年生である。『青鞜』にインスパイアされた忍(木竜麻生)の発案で、文章や作品を持ち寄って、同人誌を編むことになった。

忍は、評論『女性の地位向上を阻む十三の壁』で男性中心の社会制度を批判。珠が書いた小説『やさしいアンナ』は、トルストイ著『イワンのばか』を自分なりに翻案したものだった。「アンナがばかを見ても淡々と働いちょる姿」を珠は「ええなあ」と思って気持ちを込めた。その姿に義母リョウ(国仲涼子)を重ねていた。
そうやって「うちらのほんまの気持ち」を込めてできた記念すべき同人誌のタイトルは『黎明』。夜明けを表す題名から高揚感が伝わってくる。忍と珠だけでなく、稲子(華優希)の短歌も掲載されているのだろう。タエ(中井千聖)の絵筆が表紙に彩りを添えた。

『黎明』に対する同級生たちの評判は上々で、2冊目に取りかかる珠たちだったが、思わぬ障壁が立ちはだかる。校長室に呼び出され、珠の小説は「作り話でごまかして、社会における男性のありようを皮肉っている」と槍玉に挙げられる。「良妻賢母」を育成する学校の方針から外れているとみなされ、続けるなら退学させると告げられた。
同人誌の活動は休止に追い込まれ、4人は悔しさを嚙みしめる。珠は思わぬ挫折を経験することになった。

一方、清治(渡部篤郎)は、実家から援助の打ち切りを告げられる。弟の清重(三浦誠己)が酒蔵を継ぐ代わりに清治を扶養するというのが先代との約束で、17回忌までという約束があった。清重と会った清治は援助の継続を求めるが、清重からは断絶を言い渡された。失意の清治は料理屋で暴れて警察に勾留される。迎えにきた珠に、清治は「つまらん」と言い捨てた。誰からも相手にされない清治からは孤独の気配が漂っているが、そんな中、珠のもとに縁談の話が舞い込む、という第7話だった。
同人誌がきっかけとなり、背中を押される形で珠の創作意欲が芽吹いたこと。その背景に平塚らいてうたちによる女性解放運動があって、大正デモクラシーの潮流が基底にある。
珠が『イワンのばか』の女性版の主人公を「アンナ」と名付けたことは意味深長だ。同じくトルストイの代表作のひとつ『アンナ・カレーニナ』は、道ならぬ恋におぼれて身を滅ぼす主人公の人妻を描いている。珠が『アンナ・カレーニナ』を読んだかは定かではないが、トルストイの描くアンナは、珠が『やさしいアンナ』で描写したリョウを彷彿とさせる女性像と対照的である。

「女性の幸福とは何か」という観点で考えたとき、この対比は興味深い。イワンを女性に置き換えたアンナは幸福といえるのか。宇野千代をモデルとする今作の主人公・珠の生き方を考える上でも示唆に富む挿話だった。
忍を演じる木竜麻生は、2025年9月から10月にかけて放送された夜ドラ『いつか、無重力の宙で』(NHK総合)で、夢に向かって進む主人公を演じていた。そのときの仲間も同性の4人組で、シスターフッドに裏打ちされた今作の役柄は同作を想起させる。
■放送情報
2026年度後期 連続テレビ小説『ブラッサム』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜から金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:石橋静河、加賀まりこ、松たか子、国仲涼子、渡部篤郎ほか
作:櫻井剛、小松與志子
主題歌:YOASOBI
制作統括:村山峻平、櫻井壮一
プロデューサー:大野陽平
演出:盆子原誠、中泉慧、佐藤玲衣、田中陽児、小林直毅、野田雄介
写真提供=NHK





















