『君の好きは無敵』は“好き”を諦めない物語だった さまざまな愛を肯定した最終回に

誰かを好きになると、人はちょっとだけ強くなれる。その思いが届き、相手からも「好き」が返ってきたときには、怖いものなどないと思えるほどの力が湧いてくるものだ。『君の好きは無敵』(TBS系)最終話で、杏奈(松本若菜)と瀬尾(佐野勇斗)が見せたのは、まさにそんな「好き」の力だった。
経営を大三島(本郷奏多)に託し、デザイン瀬尾を去った杏奈。彼女が自身の炎上からチュエラを守るために身を引いたのだと気づいた瀬尾は、杏奈が安心して戻ってこられるよう、チュエラを再び人気者にしようと奮闘する。一方、隙間バイト生活に戻った杏奈は、大三島炎上の余波が続くMERRYから助けを求められていた。

大三島が去っても業績が回復せず、倒産の危機を迎えたMERRY。買い手がつかず、二度と日の目を見ないキャラクターも出てくるかもしれない。でも、どれだけ知名度が低いキャラクターであっても、ファンはきっといる。その人たちを悲しませないためにも、杏奈はデザイン瀬尾のライバルであるMERRYのコンサルを引き受けるのだった。
しかし、何も事情を知らない瀬尾には、杏奈がMERRY側についたことが裏切りに思えたのかもしれない。MERRYを立て直すため、シニカルモルコとまんぷくモルコをW主人公に据えた映画を企画した杏奈。まんぷくモルコのデザイナーとして映画の監修を依頼された瀬尾は、「もうチュエラのことはどうでもいいんだ?」と怒りを露わにする。そんな瀬尾を冷たくあしらう杏奈だが、何かを抑えるように手のひらへ触れる仕草には、葛藤がにじんでいた。
そこに描かれていたのはチュエラだ。杏奈はチュエラのことがどうでもよくなったわけではない。むしろ今もチュエラを心の支えにするほど好きなのに、自分の恋心が杏奈からその「好き」を奪ってしまったと、瀬尾は思ったのだろう。杏奈への思いを封じ、ビジネスパートナーとして映画の監修を引き受ける瀬尾。だが、杏奈が必死に抑えようとしていたのは、瀬尾への「好き」だった。

再会した麦(金田哲)に「好き、もうすごい好き、だ~いすき!」と瀬尾への秘めていた思いを打ち明ける杏奈。自分への気持ちを素直に表現してくれる瀬尾に、彼女はいつの間にか恋をしていた。けれど、自分の中で瀬尾の存在が大きくなればなるほど、「好きなものって、とてつもなく大きいのよ。抱え続けていれば、必ず何かがこぼれ落ちるわ」という鞠子(白石加代子)の言葉が頭をよぎり、怖くなる。杏奈を庇って炎上した瀬尾のように、自分もまた何かを犠牲にしてまで瀬尾のことを守ろうとしてしまうかもしれない。何よりも優先すべきはチュエラなのに。だから、杏奈はあえて瀬尾を傷つける形で、会社を去ったのだ。
そんな杏奈に、麦は「好きって、そんなに悪者かな?」と問いかける。もちろん、好きのせいで周りが見えなくなったり、判断を誤ったりすることもあるだろう。けれど、その気持ち自体を否定したり、後ろめたく思ったりする必要はない。誰かを愛すること、何かを好きになることは、素敵なことなのだから。




















