『風薫る』“りん”見上愛と“直美”上坂樹里が育てる側へ “ツヤ”東野絢香の未来と向き合う2人

『風、薫る』りんと直美が看護婦を育てる側へ

 「国は職業を情熱では計れない」

 柳生(中村倫也)の言葉が、看護婦という職業が迎えた新たな局面を浮かび上がらせる。NHK連続テレビ小説『風、薫る』第121回では、りん(見上愛)と直美(上坂樹里)が、看護婦を志し続けてきたツヤ(東野絢香)の未来と向き合った。

 柳生から連絡を受けた直美は、派出看護婦会についての調査報告を聞きに行く。派出看護婦会の数はおよそ60か所、派出看護婦は約900名。直美が始めた仕組みは今や多くの広がりを見せていた。

 しかし、その実態はさまざまだ。もちろん、すべてが恵風看護婦会のようにトレインドナースを中心とした組織ではない。病院に勤めていた看病婦を集めたところや、看護の知識がない者を雇い、患者から法外な金銭を取る悪質な看護婦会も存在していた。混沌とした状況を衛生局も看過できず、近いうちに東京府で看護婦の規則が制定される見込みだという。

 適切な派出看護を行っていることを、どのように証明すればいいのだろう。どれだけ患者のために懸命に働いていると訴えても、目には見えない情熱を客観的な判断基準にはできない。患者の命を預かる以上、看護婦に必要な知識や技術を測る、誰にとっても明確な“物差し”が必要なのだ。

 規則ができれば、悪質な看護婦会や看護婦まがいの者は淘汰されていくだろう。りんが胸をなで下ろす一方、直美はどこか腑に落ちない様子を見せていた。

 そんな折、二人のもとを訪ねてきたのが、かつて帝都医大病院で看病婦として働いていたツヤだ。

 りんと直美の姿に影響を受け、看護婦を志したツヤ。特例として看護科の講義を受けられることになったものの、看病婦の仕事と勉強の両立で疲弊し、患者への投薬を忘れる重大なミスを犯して病院を解雇された。その後、別の病院で働こうとしたが、すべて断られたという。養成所に入ろうとしても、金銭と年齢の壁が立ちはだかった。

 それでも、ツヤは看護婦になる夢を諦めなかった。その心の支えとなったのが、別れ際にりんから託されたナイチンゲールの書籍『NOTES ON NURSING』だ。ツヤは読み書きを学び、辞書を引きながら、少しずつ原書を読み進めたという。最後のページにたどり着くまで、実に11年。ツヤは「ずっと私のお守りでした。この本を読んでいる時間だけは楽しかった」と振り返り、「私にここで看護をやらせてください」と頭を下げる。

 りんはツヤに働いてほしいと願うが、直美はすぐに答えを出せない。これまで恵風看護婦会は、トレインドナースだけで運営してきた。悪質な看護婦会があふれるなか、それが患者から信頼を得るための強みでもあったからだ。

 そんな2人に、セツ(村上穂乃佳)はトレインドナースとは何かを尋ねる。定められた養成所で専門の訓練を受けた者だと知ると、「何を学ぶかより、どこで学ぶかが大事ってことか」と素朴な疑問を口にした。

 もちろん、患者の命を預かる看護婦には、専門的な知識と技術が欠かせない。だが、学ぶ場所を得られなかったというだけで、看護婦への道を閉ざしてしまっていいのだろうか。

  直美の心を動かしたのは、『NOTES ON NURSING』に残された無数の書き込みだった。ページを埋め尽くすメモが、ツヤの積み重ねてきた11年間を何よりも雄弁に物語っている。

「ツヤさんを“train”すればいいんだよね、私たちが。バーンズ先生がまいた種を増やしていかなきゃ」

 どこで学ぶかではなく、何を学ぶか。養成所へ通えないのなら、自分たちがツヤを専門的な知識と技術を持ったトレインドナースに育てればいい。情熱だけで看護婦として認めるのではなく、その情熱を患者の命を預けられるだけの力へと変えていくのだ。

 今週のタイトルは「風媒花」。バーンズ(エマ・ハワード)がまいた看護の種は、りんと直美のもとで花開き、今度はツヤへと受け継がれようとしている。最終回まで残り2週となり、かつて教えを受ける側だった2人は新たな看護婦を育てる側へと歩み出した。 

■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK

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