『スピナーベイト』加藤清史郎×平瀬遼太郎対談【後編】 オリジナルの最終回を語り合う

「加藤さんでなければ、あのラストにはたどり着けなかった」

――最終回はとにかく痺れました。原作の内はそのまま転校して行方知れずになりますが、ドラマ版では、三井と内の対峙が描かれます。その意図を教えてください。
平瀬:本作をドラマ化するにあたって、僕は「社会や集団のなかでどう生きるか」と「青春」が大きなテーマだと捉えました。まだ成熟の途中にいる高校生だからこそ、社会の序列や関わる人たちに影響を受けて変化していく、三井の“感化”の物語だなと。だからこそ、さまざまな経験をしてきた三井の到達点として、ラストは彼自身になにかしらのアクションを起こさせたほうがいいんじゃないかと思いました。三井自身が決断して行動した結果、最後に何を得るかをこの物語の結末として、僕自身が見たいと思ってしまいました。なので、その勝手なわがままを入れ込んだ構成案、並びに追加した最終回を快く承諾してくださった此元先生には感謝しています。

――内の孤独な逃亡劇にも、胸が締めつけられました。
平瀬:三井の葛藤と成長を追いかける物語ならば、萩原護さん演じる内の心理も丁寧に描く必要があると考えました。もちろん原作にもそうした描写はありますが、三井が成長という“光”の道を歩む一方で、内は抜け出せない闇に堕ちていく。この構図を描くには、二人の人物により血を通わせる必要があったんです。二人のコントラストによって三井の成長や“感化”が浮かび上がり、ひいては本作のテーマである「集団社会」を描くことにもつながると思いました。
――三井を演じてきた加藤さんは、最終回で「ようやくここまでたどり着いた」という感覚はありましたか?
加藤:いや、「何もできなかった」という感覚のほうが強かったですね。でも、三井は強くなったなって。そこを引き出してくれたメグ(南琴奈)のおかげですが、「こんなことができるようになったのか」と素直に思いました。

――病院のシーンでは、むき出しの三井がいたような気がしました。
加藤:そうですね。あそこは力みのない素の三井という感じでした。ただ“むき出し”という意味では、内との対峙のほうが近いかもしれません。本来は内とやりあったあと、空を見上げたところで終わってもいいはずなのに、そこで終わらせてはくれなかった。むしろ、ここで終わらせちゃいけないんだと。
平瀬:残酷ですよね。
加藤: 「起こったことを感じたままで終わるな。しっかり追いかけろ」と言われた感覚がありました。これは内にも言えることで、最後の対峙は三井から内への「逃げるな」というメッセージだと思います。病院のシーンは、あれだけやって、それでも……という場面。そういうものを全部ひっくるめた上で、僕はあの海のラストが好きですね。暗い終わり方ではないと思っています。
平瀬:視聴者の方にどう受け止めてもらえるかはわかりませんが、三井がどう成長したのか、彼という人間を見てあげてほしいという思いで作った最終回です。昔の自分を重ねてもらってもいいですし、いままさに同じような状況に苛まれている人にとって、少しでも肩の荷が下りるような作品になればと思っています。
「話し合わなくても、見ている方向が同じだった」

――全11話を走り終えたいま、あらためて『スピナーベイト』という作品を振り返っていかがですか?
平瀬:最終回の話をしてもいいのであれば、裏話をひとつ。撮影中、加藤さんとはずっと話し合いを重ねてきたんですけど、第11話で内と対峙するシーンだけは、ほとんど言葉を交わしていないんですよ。

――え! あんなに重要なシーンなのに?
平瀬:そうなんです。「 こうして」「ああして」と言った覚えがない。
加藤:なかったですね。段取り前も話さなかった。
平瀬:あのシーンは、なんとなく言葉がいらない気がしたんです。リハーサルもやりましたけど、僕からなにかを言う必要はないなって。これまで加藤さんとコミュニケーションを重ねてきたなかで、最後にたどり着いたあの芝居に、すべてがちゃんと落とし込まれていると感じた。話し合わなくても、見ている方向が同じだった。思わず「両思いだ」って、うれしくなりました(笑)。
加藤:わかります(笑)。本当にうれしかった。

平瀬:そうやって密にコミュニケーションを取れる現場の空気感を、加藤さんが作ってくださったからこその最終回だったと思います。あらためて、加藤さんが三井を演じていなければ、絶対にあのラストにはたどり着けなかったですね。
加藤:僕自身も初めての経験をたくさんさせていただきました。特に内との対峙は、たとえ同じセリフ、同じ動きで演じたとしても、二度と同じ芝居はできないと思います。実はカットがかかったあと、ずっと顔が痺れていたんですよ。そんなことは初めてで、僕もなぜなのかわからないんですけど。
平瀬:すごいよね。
加藤:でも、うれしかったんですよね。

――その「うれしかった」とは?
加藤:……三井もね、かわいそうなんですよ! 勇気を出して動いてみても、結果的には報われない。そんな三井にとって初めての心と体の躍動を、演じている僕も身をもって感じられた。それがちょっとした彼への報いというか、少しでも三井のためになったような気がして、うれしかったんですよね。
『スピナーベイト』は今夏イチのダークホース! 此元和津也原作の映像化、怒涛の展開を総括
第9話を終え、いよいよ大詰めを迎えた『スピナーベイト』(フジテレビ)。 リアルサウンドでは、最終話に向けて盛り上がりを見せる…■放送・配信情報
『スピナーベイト』
FODにて独占見放題配信中
TVerにて無料見逃し配信
出演:加藤清史郎、駿河太郎、萩原護、南琴奈、奥野壮、高橋侃、吉田晴登、吉澤要人(原因は自分にある。)、伊藤あさひ、桃児、仲野温、吉村界人、山中聡、中村梅雀、長田拓郎、久獅、福松凜、タカハシシンノスケ、吉田伶香、校條拳太朗、白鳥晴都
原作:此元和津也『スピナーベイト』(幻冬舎コミックス刊)
監督:平瀬遼太郎
脚本:大久保ともみ(1話、10話・11話)、西垣匡基(4話・5話、8話・9話)、三谷伸太朗(2話・3話、6話・7話)
音楽:西村大介/DUNK
主題歌:THE SPELLBOUND「Spinner」(Warner Music Japan)
制作プロダクション:セディックドゥ
製作:NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン
©此元和津也/幻冬舎コミックス/NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン
公式サイト:https://www.nbcuni.co.jp/jcon/spinnerbait/
公式X(旧Twitter):@spinnerbait_drama





















