『風、薫る』中村倫也&藤原季節が再び鍵に? 女性の社会進出に繋がる看護の道

NHK連続テレビ小説『風、薫る』第113話では、今後の物語の鍵を握るであろう、懐かしい2人の男が“再登場”した。
1人目は詐欺師の寛太(藤原季節)。金儲けのために幾通りの顔を使い分けており、直美(上坂樹里)が初めて出会ったときは、渡米経験のある海軍中尉の「小日向栄介」と名乗り、上官を迎えに来たと称して鹿鳴館を訪れていたが、別の場所では着流しを着てふらついており、「欣二」と名乗っていた。自分と同じく親の顔を知らずに育った直美のことは何かと気にかけていて、彼女の実母の「夕凪」のことも調べ上げてくれた。直美にとっては厄介でありながら恩も感じる複雑な相手である。

そんな寛太がいたのは、法外な値段を請求しているという噂の看護婦会。「行って参ります」と言った女性を見送って出てきた寛太は、いやにきっちりとしたスーツを着ていて直美を見つけるとにやにやとした笑みを浮かべていた。この終盤になっても寛太は2人の“敵”として立ちはだかるのだろうか。
2人目はりん(見上愛)と直美が新潟で赤痢の防疫に尽力した際に、患者として運ばれていた柳生藤次(中村倫也)。もともとは内務省衛生局の役人で、たまたま東京から新潟へ現地調査に訪れた際に赤痢に罹患。赤痢を広めたと非難されていたところをりんたちに助けられ、適切な看護を受けて1カ月ほどで退院。りんたちの働きを報告すると立ち去ったままとなっていた。

派出看護の現状に危機感を覚えた直美は、新潟でのことを思い出して名刺と連絡先を引っ張り出し、藤次へ会いにいくことに。藤次は2人が来たと知ると寛太とは違った顔でニヤリと笑ったが、2人の前ではそんな顔を見せずにクールに対応。「適切な看護を受けることが回復につながることはわかっている」と話した上で、調査を始めることを約束してくれた。だが実際にはすでに調査が進んでいることも判明。どうして藤次はりんたちに嘘を教えたのか。彼の存在がりんたちにとってプラスとなることを願うばかりである。
派出看護は明治時代から昭和前期にかけて行われた、看護師が患者の自宅や病院へ赴いて個別に行う看護のことで、現在の訪問看護の前身となっている。看護師が私的に経営・所属し、患者との個人契約や会則に基づいて派出料金を定めることで、医療保険制度が整っていなくても、比較的安価に質の良い看護を受けられるようになっていた。

歴史を辿ると、派出看護の始まりは1885年(明治18年)に、ある病院の看護婦教育所の生徒たちが特権階級の家庭へ赴いて看護を提供したこととされている。のちに直美のモデルとなっている鈴木雅が「慈善派出看護婦会」を開設し、組織的な派出看護活動がスタート。しかし、しばらくするとこのような「派出看護婦会」が乱立し、十分な教育を受けていない看護婦が派遣されるなど、問題が起こるようになってしまう。そこで動き出したのがりんのモデルとなっている大関和。当時の内務省に足しげく通い、内務省衛生局長であった後藤新平に談判して制度整備を訴えた。その甲斐あって、東京府では最初の看護婦規則が布令され、自由開業する派出看護婦やその養成所に対する規制や資格整備が進められていった。派出看護の基盤を整えた鈴木と法整備を訴えて未来へ「看護の道」を繋げた小関。史実の面から見ても、2人は強く連携していたことが窺える。
りんや直美が生きた明治から大正にかけては、女性が働いて自立することはほとんどなかったが派出看護は“女性の職業”として大きな役割を担っていた。「事務でもいいから働きたい」と看護婦会に戻ってきたしのぶ(木越明)の様子からも看護婦会が“第3の居場所”になっていたことがわかる。看護婦会を守ることはしのぶのような女性たちの活躍にも繋がるのである。
ナースとしてだけではなく、社会を変える活動家としても先駆者だったりんと直美。ここから新たな戦いが幕を開けたと言っても過言ではないだろう。
■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK





















