ワーナーが葬りかけた映画『Coyote vs. Acme』が北米No.2 公開求める嘆願が観客を動かす

ワーナーが葬りかけた映画が北米No.2の快挙

 8月28日~30日の北米映画週末ランキングでは、「幻の映画」が奇跡の復活を果たした。ワーナー・ブラザースが経済的事情から封印を一時決定し、この世から消えかけていた『Coyote vs. Acme(原題)』だ。

 北米3575館で公開され、週末興収1546万ドルを記録して第2位に初登場。本作を救い出した独立系配給会社、Ketchup Entertainmentにとって史上最大のオープニングとなった。

 本作は、「ルーニー・テューンズ」の実写&アニメーションによるハイブリッド映画。おなじみワイリー・コヨーテは、宿敵ロード・ランナーを捕まえるため、ロケットや爆弾などACME社の商品を駆使するが、毎回それらのせいでひどい目に遭っていた。

 しかし、それらの失敗はACME社の欠陥商品のせいだったのではないか? ワイリー・コヨーテは、弁護士と手を組むとACME社を訴え、巨大企業との法廷闘争に突入する――。

『Coyote vs. Acme(原題)』写真:Everett Collection/アフロ

 出演にウィル・フォーテやジョン・シナ、脚本を『メイ・ディセンバー ゆれる真実』(2023年)のサミー・バーチが手がけ、原案には『スーパーマン』(2025年)のジェームズ・ガンも携わった意欲作。しかし2023年、ワーナーは本作の劇場公開・配信を見送り、税務上の損失処理を行う方針を決定した。製作費7000万ドルを投じて映画は完成し、試写で好反応だったにもかかわらず、“お蔵入り”にするという判断が下されたのだ。

 すなわち、「巨大企業に一匹のコヨーテが立ち向かう」という物語は、期せずして現実と奇妙なかたちで重なることになった。業界関係者やファンから猛反発が巻き起こり、SNSで作品の公開を求める運動が発生したのだ。

 その後、2025年にKetchup Entertainmentが5000万ドルを投じて権利を獲得。パラマウント・ピクチャーズやNetflixを押しのけ、最高金額を提示しての購入となった。宣伝・広告費は1000万ドルと小規模だが、ライアン・レイノルズの制作会社Maximum Effortも広報に参加し、さまざまなスポーツイベントと連携したほか、サンディエゴ・コミコンでも話題を集めるなど積極的に動いた。

 強力な追い風となったのが、作品の高評価とSNSでの盛り上がりだ。Rotten Tomatoesでは批評家スコア95%・観客スコア94%、観客の出口調査に基づくCinemaScoreは「A」評価。TikTokやYouTube、X、Instagram、Facebookを合計したSNSリーチは約1億1550万人で、実写ファミリー映画の水準を大きく下回ったが、オンラインの声は非常にポジティブ。「映画を救いたい」という支持がチケット購入に結びついたとみられる。

 観客層も興味深く、年代別では25~34歳が最大層の38%。また、35歳未満が全体の66%(約3人に2人)を占めた。昔からルーニー・テューンズを知る中高年層だけでなく、若い観客が映画館に足を運んだことも明らかだ。

 北米初動の1546万ドルは、同じくワーナー製作による実写&アニメーション映画『トムとジェリー』(2021年)の1410万ドルを上回る好スタート。しかし、Ketchupが権利獲得に5000万ドルを費やしたことを鑑みると、コスト回収のハードルは高い。一方、海外配給権も2000万ドルぶん販売されており、海外興行や配信を見据えた展開となりそうだ。

 Ketchupは以前にもワーナー製作のルーニー・テューンズ作品を救済しており、長編アニメーション映画『ルーニー・テューンズ ザ・ムービー:地球危機一髪』(2024年)の北米公開を担当(日本ではU-NEXTにて配信中)。同作と権利構造は異なるものの、『Coyote vs. Acme』の日本リリースにも期待したい。

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