『一次元の挿し木』山田涼介が直面してきた数々の現代的テーマ 情報社会の“リアル”とは

『一次元の挿し木』山田涼介が社会問題に直面

 とはいえ、クレジット表記を見ると、4人の監督と脚本家がそれぞれにタッグを組み全8話を担当しているようだが、当然ながら映画の世界観を共通認識として持ち、要素を受け継ぎながら制作を行っていることが分かる。名画座に思い入れがある遙は、紫陽と一緒にしばしばクラシック映画を鑑賞しているシーンがある。マッドサイエンティストが死体を継ぎ接ぎして誕生した『フランケンシュタイン』(1931年)の引用が意味するものはわかりやすいが、頃安祐良監督と高田亮による第3話で、フランク・キャプラ監督『或る夜の出来事』(1934年)を紫陽と観ているのは象徴的だ。映画の中で「Somebody that's real.(理想の女性は本物の人間さ。気取らず、そのままの女性だ」)」というセリフがあり、本ドラマのストーリーとしては、悠が初めて紫陽に恋心を打ち明けてキスをする。これは作劇上のロマンティックな演出であるだけでない。クローン技術によって生まれた紫陽にとっては、「real」は非常に重たい言葉である。もちろん悠は気づかず、結果として、豪雨の日の大げんかを招いて紫陽は姿を消してしまうのだ。

 『一次元の挿し木』が問いかけるのは、「存在するとはどういうことか」という存在論である。誰かの複製として生まれたがゆえに、実体としての自身の存在に疑いと揺らぎを感じる紫陽と、そうしたルーツを知らず、いや知ってもなお紫陽という実体を信じて捜し続ける悠(そして真理)は、決定的に食い違っている。ドラマ全体を通した悠の行動は、たとえばクローン開発に関わった仙波佳代子(鈴木保奈美)の自宅へ侵入する際の詰めの甘さなど、どこか向こう見ずだ。だが小説をドラマとして完成させるとき、重要なのは「蓋然性」、つまり単なるリアリティということではなく、ある事柄や事象が起こる“確からしさ”が、キャラクターの行動原理の説得力を高めることになる。行動の実践だけが先走っている悠だからこそ、彼の人物像に蓋然性を補強していく。だからこそ第7話、仙波に対峙した悠は、自己正当化に走る彼女に「分かりたくないね。僕は人間でいたいですから」と言い放つセリフが生きてくるのだ。

 執念深く取材を続けている平間(小手伸也)から「事件の黒幕が紫陽ではないか」と決めつけられ、悠は激情しつつも真相を確かめるべく核心へと踏み込んでいく。ひょっとすると、遙も予想だにしない過酷な展開となるかもしれないが、視聴者は遙の行動の選択を信じるほかない。真理との会話の中で遙は、以前に石見崎の娘として悠が出会っていた車椅子の娘が、失踪していた紫陽であると悟る。真理も悠も、互いがすでに「分かっている」ということを理解しつつ、二人とも“その名前”を口には出さない。ただ自身の記憶の中にいる紫陽がいること。だから「紫陽は存在している」。そう強く思うことが、二人の実感であり、リアルだからである。

■放送情報
『一次元の挿し木』
読売テレビ・日本テレビ系にて、毎週日曜22:30~放送
出演:山田涼介、白石聖、木戸大聖、土居志央梨、和田正人、笠原秀幸、猪塚健太、小橋めぐみ、藤井美菜、田畑志真、堀田真由、松下由樹、吉原光夫、正名僕蔵、小手伸也、鈴木保奈美、佐々木蔵之介
原作:松下龍之介『一次元の挿し木』(宝島社)
脚本:高田亮、清水匡
演出:城定秀夫、頃安祐良、日髙貴士
チーフプロデューサー:中間利彦(読売テレビ)
プロデューサー:中山喬詞(読売テレビ)、安部祐真(読売テレビ)、清家優輝(ファイン)、岡田健人(ファイン)
制作協力:ファインエンターテイメント
製作著作:読売テレビ
©読売テレビ
公式サイト:https://www.ytv.co.jp/ichijigen_drama/
公式X(旧Twitter):@ichijigen_ytv
公式Instagram:@ichijigen_ytv
公式TikTok:@ichijigen_ytv

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