“朝ドラ”の旅立ちシーンは女性の人生観を更新してきた 『風、薫る』『虎に翼』の共通点

朝ドラの旅立ちシーンにみる女性の人生観

 そして、今回の新潟へ旅立つ展開だが、これは「故郷から都会へ」という旅立ちとは異なる転勤による移動だ。

 主人公の暮らす舞台が一時的に変わることも朝ドラではよくある展開で、戦時下を舞台にした朝ドラなら疎開もその一つだといえる。

 転勤や疎開のような一時的な移住は、ヒロインにとっては緊急避難的な療養を兼ねることが多く、精神的に行き詰ったヒロインが、改めて自分の人生と向き合うための重要なイベントだといえる。

 その代表例は、2024年度前期の朝ドラ『虎に翼』のヒロイン・寅子(伊藤沙莉)が判事として新潟裁判所で働くために、新潟へ向かう場面だろう。

 奇しくも『風、薫る』と同じ新潟だが、一人で旅立ったりんとは違い、寅子は仕事で疎遠となっていた娘との母子関係をやり直すために、新潟で娘と二人で暮らすことを決意する。

 ヒロインのモデルとなっている人物の半生を参照しているため、たまたま同じ新潟が舞台になっただけだろうが、『虎に翼』と『風、薫る』は、ヒロインの家族構成も似ており、どちらも父親が不在の中でヒロインが稼ぎ頭となって家族を支える、女性を中心とした疑似家族となっている。

 ただ、『風、薫る』では娘の面倒は、母親たちと友人の大家直美が見ると決意し、りんは一人で旅立つことになる。

 どちらも、職場や家族といったこれまでの人間関係とは切り離された場所で、ヒロインが自分の人生を見つめ直すための旅立ちだといえるが、看護婦としての仕事と母親としての役割から離れて、女学校の舎監という新たな立場に置かれたりんは、改めて自分の内面と向き合い、人生を再スタートすることができるのだろうか?

 一人で新潟に向かったりんが、新たな出会いを通して何を得て戻ってくるのか、今後の展開が楽しみである。

■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK

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