『風、薫る』虎太郎からりんへの恋は進展するのか? “再登場”小林虎之介の絶妙な演技

NHK連続テレビ小説『風、薫る』第14週「ウソと誠」では、りん(見上愛)と直美(上坂樹里)それぞれの恋愛模様に進展があった。そのなかでも、シマケン(佐野晶哉)と虎太郎(小林虎之介)の2人は、りんに対する恋心が明確に映し出されている。

看病婦のツヤ(東野絢香)が帝都医大病院を辞めたことに責任を感じるりん。よりいっそう根を詰めて仕事に打ち込む彼女を心配する直美は、りんの近況を団子屋にいたシマケンに伝える。すると、シマケンは紙で作った“1トンビ”を直美に託し、彼なりのやり方でりんにエールを送る。相変わらず遠回しな伝え方ではあるものの、最初に出会ったときから変わらないシマケンの飾らない優しさが感じられるシーンだった。
一方で、久しぶりに登場した虎太郎の服装の変化と出世ぶりに驚いた人も多いのではないだろうか。シルクハットを被り、自信を持って背広を着こなす姿は、百姓だった頃を思うと別人のように映る。家族の暮らしを変えるために東京に出てきたという虎太郎は、製薬会社で給仕として働き、社員へと昇格したという。りんは「虎太郎、変わったね」とこぼしていたが、2人で話しているときは不意に栃木のなまりが出るなど、あの頃と変わらない純朴な笑顔を見せてくれた。

りんと同じ村で生まれ育ちながらも、身分の差を気にして自身の恋心を伝えられずにいた幼なじみの虎太郎。「りんは俺の姫様だから」と話す彼の表情には、家柄が釣り合わない関係性に対する忸怩たる思いと、その壁を超えられない自身の弱さと迷いが浮かんでいたように思う。それでも虎太郎はりんの無事を願い、彼女が健やかに生きていく後押しをする。そして、その後は自分の力で東京へとたどり着いた。虎太郎がここまで歩んだ道のりも決して平坦ではなかったはずで、彼の成長した姿をこれから日々、観られるのは楽しみな限りだ。
虎太郎を演じる小林虎之介の成長も著しい。これまでも同じNHKドラマである『宙わたる教室』や『テミスの不確かな法廷』の第1話などで、物語が進んでいくにつれて、最初の印象とは異なる本心や純粋な感情が滲み出していくような役柄を演じてきた。憤りや悲しみ、寂しさや後悔など、複雑な感情が入り混じる気持ちを濾したあとに残る無垢な思いが小林の芝居には溢れている。第60話にて虎太郎が再登場したことで、彼が演じるキャラクターの印象深い変化や繊細な心の揺れ動きは、まだ映し出されていない空白の時間をも埋めることができるのかと期待してしまう。

虎太郎が団子屋でりんに東京へやってきた本当の理由を伝えようとした瞬間、風のざわめきか運命の導きか、恋のライバルであるシマケンがその場に訪れる。恐らく互いにりんに対して特別な感情を抱いていることに、鈍感な2人といえども早々に勘づいたのだろう。一瞬、張り詰めたような空気が流れたものの、言葉を交わすなかでお互いの職業やりんとの関係性を把握する。そして同時に、自身の現状に足りていないものを痛感したはずだ。
虎太郎は東京にやってきたりんと過ごした密な時間。シマケンは世の中の役に立つ仕事をしているという自負。それぞれ欲しがっても手に入らないものを手にしている相手を見つめる小林と佐野が、視線を交わして表情をわずかながらに変化させるシーンは印象的。その場を立ち去るシマケンを見送った後、りんに「俺、必ず出世するから」「じゃあまた」と告げる短い間での小林の芝居からは、虎太郎のまっすぐな覚悟と一途な思いが伝わってきた。
製薬会社に勤める虎太郎は病院ともつながりがあるはずで、これからりんとシマケンとの三角関係はいっそう加速していくはずだ。りんも虎太郎と同じように、すでにあの頃とは違う目標に向かって、道なき道を進んでいる。看護師として一歩を踏み出したりんを前にして、虎太郎は彼女の手を握ることができるだろうか。
■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK






















