『田鎖ブラザーズ』はなぜ賛否を呼ぶ結末を迎えたのか “多くを語らない”物語の必然性

この「多くを語らない」スタイルは田鎖兄弟の関係だけでなく、他の場面でも貫かれている。本作で描かれる事件はショッキングなものが多いが、映像はとても抑制されており、じわじわと事件の全貌に迫っていくような描かれ方をしている。そのため、どのシーンにも緊張感があり、常に重厚な空気が漂っている。
その意味で興味深かったのが、被害者遺族の復讐心を肯定することで、犯行に向かわせた市役所の福祉健康課の相談員・泰野小夜子(渡辺真起子)の描き方だ。彼女は本作の世界観を象徴するような魅力的な悪役で、実際、田鎖一家殺人事件にも間接的に絡んでいたことが最終話で明らかとなる。

サイコサスペンス系のミステリードラマであれば、彼女はラスボスとして君臨するカリスマ的存在だが、彼女は途中退場しており、ラストエピソード(第8話~第10話)は、田鎖一家殺害事件の真相の究明に費やされている。その真相も、わかりやすい巨悪がいるという派手なものではなく、小さな家族に起きた悲劇の連鎖によって起こったことが明らかとなる。やがて真と稔は、辛島金属工場では、暴力団・五十嵐組に強要されて改造拳銃の製造に関わっており、そのことを田鎖兄弟の父親・朔太郎(和田正人)が知ってしまい、口封じのために両親が殺されたことが知る。
犯行に関わっていたのは、真と稔の両親が働く工場の工場長・辛島貞夫(長江英和)と妻のふみ(仙道敦子)、両親を失った真と稔を見守ってきた茂木幸輝(山中崇)と、足利晴子(井川遥)。つまり、2人が親しくしていた関係者全員が間接的に殺人に関わっていたのだ。
そして、最終的な犯行をおこなった晴子もまた被害者遺族だった。彼女の父親は、改造拳銃の取引に関わっていた漁師で、朔太郎が改造銃を取引の場に持ってこなかったため始末された。間接的な形で自分の父親を死に追いやった朔太郎に復讐するため、晴子は犯行に及んだのだ。

真相を知った真と稔は、晴子に改造拳銃を向け、発砲音が鳴る。だが、晴子が撃たれた瞬間は画面に映らず、晴子のもとを去った真と稔が並んで歩く姿が映され、物語は終了する。
真と稔が晴子を殺したのかははっきりと描かれず、最後の解釈は視聴者に預けたと言える終わり方となっていた。はっきりと結末を描かなかったことに対して否定的な意見も多いが、『田鎖ブラザーズ』は復讐の是非ではなく、復讐心に囚われると人はどのような苦しみを背負うことになるのかを、真や稔と事件の犯人たちの苦悩する姿を通して描きたかったのだろう。
その苦しみを追体験させる物語として、本作は終始一貫していた。真と稔の関係と同じように、「多くを語らないこと」によって生まれた見事なラストである。
■放送情報
金曜ドラマ『田鎖ブラザーズ』
TVer、U-NEXTにて配信中
出演:岡田将生、染谷将太、中条あやみ、宮近海斗、和田正人、飯尾和樹(ずん)、長江英和、山中崇、仙道敦子、井川遥、岸谷五朗
脚本:渡辺啓
音楽:富貴晴美
主題歌:森山直太朗「愛々」(ユニバーサル ミュージック)
演出:山本剛義、坂上卓哉、川口結
プロデュース:新井順子
撮影監督:宗賢次郎
編成:高柳健人、吉藤芽衣
製作:TBSスパークル、TBS
©TBSスパークル/TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/TAGUSARI_bros/
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