『風、薫る』“ゆき”中井友望の今後はどうなる? 『ベビわる』に続き“目力”に引き込まれる

NHK連続テレビ小説『風、薫る』で、養成所編編が始まってはや4週目。第10週「疾風に勁草(けいそう)を」からは、りん(見上愛)と直美(上坂樹里)だけではなく、他の看護婦見習いたちのエピソードも描かれていくようだ。
まずフィーチャーされるのが、東雲ゆき(中井友望)。すでに第9週で、小野田(宮地雅子)と、患者と医療者の関係を超えた心のつながりがあることを予感させた。

ゆきといえば、子爵のご息女で重度の“ナインチンゲールオタク”。りんと直美の同期たちの中で、特に個性的な設定を背負ったキャラクターだ。
中井は、そんなどこか浮世離れしたゆきを、おっとりとした話し方で表現。小さな写真立てを掲げて、うっとりと遠くを見つめるような姿からは、ナインチンゲールへの信仰心の強さがうかがえる。第22話の冒頭では、ナイチンゲールの略歴を語り出したところで、オープニングによって強制終了されるという、コメディパートも担わされていた。ゆきが「ナイチンゲール女史……」と語り出すだけで、思わず頬が緩んでしまう愛らしさがある。
中井が春クールに出演していた『孤独のグルメ Season11』(テレ東系)第1話では、観月ありさ演じる母親とのやりとりを強調するために、元来のかわいらしい声色に気だるさを宿らせていた。ゆき役では、あえてゆったりとしたセリフ回しで、ゆきらしさを表現しているのだろう。

一方で印象的だったのが、梅岡女学校の元学友に蔑まれたときに見せた、不安そうな表情だ。初対面のりんや直美に意気揚々とナイチンゲールについて語っていたのに対し、さち(木下晴香)とこと(藤江萌)には、言い負かされてしまう。どこか抑圧されたような表情には、子爵の娘として生きてきた葛藤も見え、ゆきの弱さの片鱗があるのではないかと思わせた。
そして、目を見張る芝居を見せたのが、第44話。小野田が一つひとつ必死に絞り出す声を受け止めようとするゆきの瞳には、これまでにない切実さが宿っていた。ゆきの潤んだ瞳からは、ストーリー外にあったであろうゆきと小野田の温かい交流が感じられた。
思えば、中井の代表作の一つである『ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!』(テレ東系)の第3話でも、“ぶつかりおじさん”に対して殺意を向ける宮内茉奈の目に引き込まれてしまう場面があった。ある種の不気味さが宿る瞳は、宮内役ならではの表現といえるだろう。役柄に合わせて、目に宿らせる印象を変化させている。
中井は感情をにじませる目で、見ている者の想像をかきたてる俳優なのだ。だからこそ、患者の死という、看護婦見習いたちが乗り越えるべき試練を、最小限のセリフで体現するゆき役に抜擢されたのかもしれない。

すでに、第46話でその期待に応えるような演技を見せてくれた。小野田の娘の友人のふりをするときも、手を握って今生の別れを惜しむときも、セリフに頼らずに表現される深い悲しみが胸に迫り、ゆきの表情から目が離せなかった。
小野田の死を経験したゆきは、看護婦という仕事に何を思うのか。ターニングポイントを迎えるゆきを、中井がどのように表現するのかも、しっかりと見届けたい。
■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK





















