実写版『ダンボ』今夜地上波初放送 ティム・バートン監督の挑戦心とほろ苦い評価

実写版『ダンボ』が残したほろ苦い記憶

 前述したように、アニメ版が支持されたのは、ビジュアル面というよりは、そこに深い共感を与えるキャラクターの力が存在していたからだ。もともと児童書を基にしたストーリーだけあって、単純で分かりやすい内容であっただけに、そこには強い引力が求められたはずだ。だが、本作における人間側の豊かな背景は、そんなシンプルな枠組みを飛び出し、全体を散漫にさせる結果になったといえる。

 また、ティム・バートンらしい、陰影の濃いダークな雰囲気は、児童書のような明るい世界観とは食い合わせが悪かった。ここは、はじめから狂気が漂う内容であった『アリス・イン・ワンダーランド』とは異なる部分だった。だからこそ、『ダンボ』の世界観を拡張する必要があったのかもしれない。しかし、あの明快さを愛していた多くのファンに、本作のようなダークで陰影の濃い印象の映像や、CGによるリアルな質感のダンボの姿を提供するのもまた、大きなリスクであったと考えられる。

 グリーンバックを利用した巨大セットを駆使した撮影は、作品に独特の閉塞感と非現実感を生じさせてもいる。だが、そうしたセットが、『アリス・イン・ワンダーランド』のようなファンタジックな方面で表現されるのでなく、どちらかといえばリアリティ寄りになってしまったことで、セットに巨費を投じた意味が薄れている印象がある。

 残念なのは、あのピンクの象のシーンが、ストーリーから独立したかたちで登場した点だろう。これはおそらく、アニメ版での“子どもの飲酒”シーンを除外せざるを得なかった結果であることは想像がつく。だが、名シーンであるがゆえに本編で違ったかたちで登場させてしまったことで、何のための描写か不明瞭で、違和感が生まれてしまっているのは否めない。ここは、上手く脚色ができなかった部分だろう。

 とはいえ、新しい魅力と奥行きを『ダンボ』に与えようとした挑戦心自体は評価すべきだろう。とくに、ティム・バートン作品に共通する“異形の哀しみ”といった要素は、キャラクターへの根本的な理解を増しているのは、確かではある。アニメ版では、ハリウッドと契約してスターになるといった展開が、ダンボの幸福として描かれているが、本作ではそれを“お仕着せのハッピーエンド”だと思わせるほどに、より妥当な結末を用意した。

 この点は、他の実写リメイク同様に、ディズニーが時代とともに新たな社会的視点を手に入れてきた伝統を継ぐものであり、いま新たな作品を送り出す意義を生み出している部分だといえるのではないか。しかし、本作の総合的な出来自体について、ティム・バートン監督は大きく失望したと伝えられている。これにより、バートン監督はディズニーから距離を置き、次作の『ビートルジュース ビートルジュース』(2024年)まで、ブランクが生まれる要因になったのである。

 一方で、同年に公開された実写版『アラジン』(2019年)は大ヒットし、ディズニーの実写映画化企画は持ち直した。そして、いまに至るまで、この種の企画が存続しているというのが現状だ。しかし、成功すれば失敗することもあるのが、映画の世界である。

 そもそも、実写化企画が安定して生まれる原動力となったのは、ティム・バートン本人なのである。その才能が発揮できる場所にありさえすれば、間違いなく輝くことだろう。事実バートン監督は、その後ドラマ『ウェンズデー』シリーズを大ヒットへと導いている。その事実は、逆を言えば、適材を適所に置くこと、企画とのマッチングが、いかに重要であるかという結論にたどり着くのだ。

■放送情報
『ダンボ』(2019年)
日本テレビ系にて、5月15日(金)21:00~23:09放送
※本編ノーカット ※地上波初放送
出演:コリン・ファレル(西島秀俊)、マイケル・キートン(井上和彦)、ダニー・デヴィート(浦山迅)、エヴァ・グリーン(沢城みゆき)、アラン・アーキン(糸博)、ニコ・パーカー(遠藤璃菜)、フィンリー・ホビンス(岡部息吹)、ジョセフ・ガット(阪口周平)、ダグラス・リース(巻島康一)、フィル・ジマーマン(竹田雅則)、マイケル・バッファー(銀河万丈)、シャロン・ルーニー(大塚千弘)
監督:ティム・バートン
脚本:アーレン・クルーガー
製作:ジャスティン・スプリンガー、アーレン・クルーガー、カッテルリ・フラウエン
フェルダー、デレク・フライ
製作総指揮:ティム・バートン、ナイジェル・ゴストゥロウ
撮影監督:ベン・デイヴィス
プロダクション・デザイン:リック・ハインリクス
編集:クリス・レベンゾン
衣裳デザイン:コリーン・アトウッド
音楽:ダニー・エルフマン
音楽監修:マイク・ハイアム
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