『風、薫る』飯尾和樹の尽きない新鮮さ 朝ドラ恒例の“芸人枠”とは一線を画す存在に

『風、薫る』公式の役柄紹介では、柴田万作は「病院の中でりんたちが頼れる数少ない存在」とあるから、切れ者揃いの医者軍団とは違う関わり方で、りんたちを支えてくれる存在になっていきそうだ。
一方で、近年の飯尾の俳優業には変化も見られるように思う。それは、「気のいいおじさんキャラ」ではない役柄も増えてきていることだ。コメディやお笑い要素のある人物としての出演は、そもそも芸人であることからお手のものだったともいえるのだが、映画『沈黙のパレード』(2022年)で、子どもを亡くした父親役を演じた頃からシリアスな演技も増えてきた。
この映画で飯尾が演じた並木祐太郎は、商店街の住民から愛される料理店「なみきや」を営み、愛する2人の娘と妻と幸せな家庭を築いていた。しかし娘の佐織が行方不明になり、数年後に遺体で発見されるという悲劇に見舞われる人物だ。飯尾自身、「今回頑固な父親役で、普段の自分とは全く違う性格なので演じるのがとても楽しみでした。ただ普段のにやけ顔が抜けなくて、西谷監督からも『もう少し怒ってください』と注意を受けました(笑)」(※3)というように、今までとは違う意外な役柄だった。しかし、笑いを封印して父親の怒りと悲しみを表現した演技は力強いものとなり、飯尾はこの演技によって第65回ブルーリボン賞助演男優賞を受賞することになる。

『田鎖ブラザーズ』では、岡田将生と染谷将太が演じる田鎖真・稔兄弟の両親殺人と関わりのある人物・津田雄二を演じた。ノンフィクション作家として田鎖の父親を取材していたが、事件後に姿をくらまし、30年後に見つかるものの膵臓がんで瀕死の状態で、一言も言葉を発することなく死亡してしまう。飯尾は、もはやお笑い芸人であることを微塵も感じさせないほど陰鬱な表情で、この男を表現し切っていた。『アンナチュラル』から8年、『MIU404』(2020年/TBS系)、『着飾る恋には理由があって』(2021年/TBS系)、映画『ラストマイル』(2024年)と、新井順子プロデューサーと歩んできた、飯尾の演技者としての深化を感じた。
ついにシリアスな作品までものにするようになった飯尾和樹。現在57歳と聞くと、少し驚くほどのベテランなのだが、いつも新鮮さを失わない存在感は、それでもやはり軸足がお笑いにあるからなのかもしれない。「この役をずん飯尾が?」というサプライズを、これからも期待したい。
参照
※1. https://www.crank-in.net/interview/114109/2
※2. https://bunshun.jp/articles/-/12067?page=3
※3. https://eiga.com/news/20220918/5/
■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK





















