『風、薫る』が突きつける医療のヒエラルキー 古川雄大が圧倒的な教授オーラで降臨

『風、薫る』古川雄大の圧倒的な教授オーラ

 NHK連続テレビ小説『風、薫る』第32話では、りん(見上愛)が医療のヒエラルキーを突き付けられた。

 帝都医科大学附属病院で実習に入ったりんと直美(上坂樹里)たち。看護婦見習いとして、入院中の患者を担当することになった。りんが受け持った患者は園部(野添義弘)。りんは積極的にコミュニケーションを取ろうとする。庭でつんだ花を枕元に飾ったり、窓を開けて換気するが園部の反応はない。

 園部が声を発したのは、りんが看護婦の務めを果たそうとしたときだった。傷口に触れようとする園部に触らないように注意すると「うるさい! 下女風情が黙っておれ」と怒鳴られてしまった。「下女」と思われていたこともショックだが、それ以上に、園部が話してくれないことで看護の方針が立たないことが問題だった。

 実習にはバーンズ(エマ・ハワード)も同行。作業用のテーブルを持ち込もうとしたバーンズに、外科助教授の藤田(坂口涼太郎)は撤去を命じる。しかし、バーンズは「Be quiet!」と一喝。さっそくバーンズの“日本語がわからないふり作戦”が威力を発揮した。

 前話で、院長の多田(筒井道隆)と副院長の渡辺(森田甘路)のやりとりからなんとなく察せられたように、第32話には、大病院ならではの描写が盛り込まれていた。りんたちがいるのは天下の帝大附属病院、いわゆる「白い巨塔」で、外科教授の今井(古川雄大)の総回診でおなじみのあの光景が繰り広げられる。

 助教授や助手を引き連れて、今井を先頭に病室へ入ってくる行列は威圧感たっぷりで、医師の権威を示すのに効果的だ。ものものしく重みのある態度で、もったいぶった口調で病状を尋ねる態度は、高貴な人のふるまいである。眉目秀麗、長身の古川雄大が演じることで、この世のものと思えない後光を放っていた。

 古川は『エール』(NHK総合)以来の朝ドラ出演。コロナ禍のさなか放送された同作は、入念な感染防止対策を講じて撮影された。古川が演じた音楽教師の御手洗は、定番ネタ「ミュージックティーチャー」で人気を博した。台詞途中で強制終了する演出は、『風、薫る』で看護学生のゆき(中井友望)に受け継がれている。

 史実でも、今作のモデルになった日本最初のトレインドナース大関和は、設立間もない看護婦養成所から帝大の附属病院へ実習で派遣されており、そこでエリート医師たちと知り合う。のちに看護を日本に定着させる上で、彼らとの絆が大いに役立つことになる。

 今井の前で、園部は元気なふりをする。りんは居ても立っても居られず、今井に「もう一度見ていただけませんか」と直訴。しかし、藤田から「看病婦が教授に指図するつもりか」「思い上がるな」と逆上されてしまった。

 第32話は、前話に続いて初登場のキャラクターが何人かいた。用務員の柴田(飯尾和樹)は落ち込んでいるりんに、腰かける木の場所を教える。口調はぶっきらぼうだが、細かいところに気がつく性格で、りんと直美をさりげなく助けてくれることを期待したい。

 園部にどう接したらいいか悩むりんに、バーンズは、園部は「とびきりの良い患者」だと語る。バーンズはりんを観察し、「弱音を吐かず、むしろ学びがいがある患者だと思うべきです」と助言した。そのやりとりを近くで見ていたのが直美だ。直美が担当するのは、疥癬をわずらう丸山(若林時英)で、比較的コミュニケーションは取れている。

 園部は、手術直後にもかかわらず、自分でトイレに用を足しに行くなど、直美に言わせると「根性がある」。しかし、りんが思うように「今の治療のままじゃたぶん治らない」。直美が言うとおり、考える(Think)ことが必要だ。そんな矢先、園部が痛みを訴えた。

 技術を身に付ける過程で経験する苦労が描かれた第32話。シマケン(佐野晶哉)は小説の執筆に行き詰まり、槇村(林裕太)に「考えてばかりじゃ書き上げられないぞ」とたしなめられる。考えることと実際にやってみることは、どちらか一方が欠けてもうまくいかない。りんは、園部から何を学べるだろうか。

■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK

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