『地獄に堕ちるわよ』『リブート』『デスノート』 戸田恵梨香の“悪女役”はなぜハマる?

戸田恵梨香の“悪女役”なぜハマる?

 どこまで史実かは分からないが、前半は男に人生を狂わされた女性という印象を受けた。また「昔から貧乏くじを引くのはいつも女」「男に復讐しているの」という台詞からも、このドラマにはフェミニズム的要素が含まれていることは明らか。しかしながら、主人公の数子を一方的な被害者として描いているわけではない。特に昭和のスター歌手・島倉千代子(三浦透子)とのくだりに関しては、ヤクザもびっくりの悪党っぷりだ。結局のところ、彼女は“搾取される側”から“搾取する側”に回っただけで、過去に経験した苦しみから弱者に手を差し伸べることはしなかった。転んでもただでは起きない強靭な精神には感心するが、決して尊敬はできない。ただ最後の最後で憎みきれないのは、やはり戸田の力に依るところが大きいだろう。

 17歳から67歳までの数子を演じている戸田。特殊メイクの効果もあるが、NHK連続テレビ小説『スカーレット』でも女性の一代記をほぼ1人で担っただけあって、各年代ごとの演じ分けは流石の一言に尽きる。少女時代は快活さを全面に押し出しており、一見すると普通の女の子に思えなくもないが、戦後の焼け野原で極度の餓えを経験した彼女はやっぱり一味違う。涙を武器にキャバレーの同僚から客を奪い取ったり、知人の経営者にナイトクラブの開店資金を賄ってもらったりと、目的のためなら手段を選ばないところも。だが、この辺りはまだ邪気は薄く、末恐ろしくも純真さを残すバランスが絶妙である。

映画『デスノート Light up the NEW world』本予告

 戸田の出世作と言えば、2006年に初めて実写映画化された『デスノート』シリーズだ。同作で演じた、ツインテールがトレードマークのアイドル“ミサミサ”こと弥海砂は、戸田の愛らしさとともに、今なお人々の記憶に刻まれている。主人公・夜神月(藤原竜也)に心酔し、すべてを捧げようとする海砂の純粋さと表裏一体の狂気を戸田は見事に表現していた。2018年のドラマ『大恋愛〜僕を忘れる君と』(TBS系)で演じた主人公・北澤尚は医者の彼と婚約中の身で、売れない小説家と運命的な恋に落ちる役どころ。彼女もまた真っ直ぐだが、世間知らずでどこか危ういところがあった。そして今回の作品と、それぞれ10年ずつ期間が空いているが、いずれの時代も戸田はチャーミング。無自覚に周りを振り回すが、放っておけない小悪魔っぽさのあるヒロインを演じさせたら、やはり彼女の右に出る者はいない。

 だが、今回は年齢を重ねるたびにどんどん業を深めていく役柄だ。回を追うごとに可憐さは失われ、際限のない欲望で“喰らった”人の数だけ凄みを増していき、最終的にはモンスターとしか言いようのない存在が完成する。その中で唯一人間的な何かがあるとしたら、愛への渇望ではないだろうか。自分の心は決して誰にも明け渡さない一方で、幾度となく裏切られても、どんな痛い目に遭っても、また誰かを愛さずにはいられない。そのアンバランスさが時折、もの悲しさとなって立ち現れ、コロッと同情しそうになるが、彼女の術中に嵌まっているだけのような気もする。『リブート』(TBS系)の幸後一香(早瀬夏海)役もそうだったが、印象が変わり続け、評価が定まらないのだ。この役は戸田にキャラクターの本質を見極めようとする視聴者を煙に撒きつつ、最後まで引っ張り続ける力があればこそ成立する。まだ未視聴の方はどうかこのゴールデンウィークにでも、戸田が提示する細木数子像に翻弄されてほしい。

参照
https://www.wwdjapan.com/articles/2390431

■配信情報
Netflixシリーズ『地獄に堕ちるわよ』
Netflixにて世界独占配信中
出演:戸田恵梨香、伊藤沙莉、三浦透子、奥野瑛太、田村健太郎、中島歩、細川岳、細田善彦、周本絵梨香、金澤美穂、笠松将、永岡佑、中村優子、市川実和子、高橋和也、杉本哲太、余貴美子、石橋蓮司、富田靖子、生田斗真
監督:瀧本智行、大庭功睦
脚本:真中もなか
音楽:稲本響
撮影監督:河津太郎(JSC)
美術監督:原田満生
録音:高野泰雄
装飾:石上淳一
編集:髙橋信之、岡﨑正弥
スタイリスト:纐纈春樹
VFX スーパーバイザー:牧野由典
エグゼクティブプロデューサー:岡野真紀子(Netflix)
プロデューサー:坂野達哉、深津智男
ラインプロデューサー:原田耕治
制作プロダクション:ジャンゴフィルム
企画・製作:Netflix

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる