『風、薫る』佐野晶哉「悩めるのは幸せなこと」が刺さる 高等遊民とは思えないシマケン

『風、薫る』(NHK総合)第27話では、鏡をのぞき込むりん(見上愛)の表情が映し出された。
来日早々、授業を開始したバーンズ(エマ・ハワード)は、教員宿舎のシーツ交換を通して、周囲の環境を清潔に保つことを教える。さらに、生徒自身にも身だしなみを整えるように指導。手はじめに髪型を洋髪にするように命じた。

直美(上坂樹里)以外の生徒は、互いに髪を切り合う。髪型の次は服装。バーンズが着用するのと同じエプロンを、自分たちで縫うように指示した。
衛生観念を教え、日本にないユニフォームを自前で用意することはわかるのだが、詳細の説明がないので、教わっている当人たちが何をやらされているか疑問に思うのは当然だ。ついに多江(生田絵梨花)が「これのどこが看護なんですか?」と不満をぶつける。
バーンズは自分がやらせていることは全て看護だと答えてから、こう続ける。「But a nurse is not a doctor」。答えになっているかわからない答えに生徒たちは戸惑うが、おかまいなしにバーンズは授業を進める。エプロンの次は包帯の巻き方で、ようやく看護らしくなってきたところで最初の週が終了した。

バーンズ役のエマ・ハワードはイギリス出身の俳優で、ナレーターや声優などマルチに活躍している。演劇学校で学び、舞台での経験を重ねた。日本では映画『ハゲタカ』のほか、大河ドラマ『龍馬伝』(NHK総合)、『不毛地帯』(フジテレビ系)などに出演しているので、なじみのある人もいるかもしれない。
ナイチンゲールの教えを体得したバーンズには、威厳とミステリアスさがあり、他方で一人ひとりを見る観察眼もあって、看護の精神を体現する人物であることが伝わってきた。
休みが来て同室の生徒たちが帰宅する中で、直美はトメ(原嶋凛)を連れてりんと東京見物へ向かう。不器用な直美の代わりに、りんがエプロンを作り直したことのお礼も兼ねていた。バーンズの声を気にしているうちに聴覚が鋭敏になったトメは、遠くで鳴る音に気づく。そこは瑞穂屋の前で、和装の美津(水野美紀)が箏を演奏していた。

りんに代わって働くことになった美津は、すっかり店になじんでいる。外国人の客とも身ぶりを交えながら日本語でコミュニケーションを取り、言語の壁を苦にしない柔軟性を発揮している。卯三郎(坂東彌十郎)が求める「リターン」は返せているようだ。
りんは、シマケンこと島田(佐野晶哉)と会話。看護の授業に困惑するりんに、シマケンは「やりたいことが仕事になる人なんてほんのわずかだ」と言い、「悩めるのは幸せなこと」とつぶやく。“何者でもない”と卑下するシマケンだが、自身について「身分も職業も決まっていた」と言及するあたり、ただの高等遊民とは思えない。

りんとシマケンはどうなるのだろう。直美は2人の親しげな雰囲気やシマケンがりんのいる日曜日に来店する事実から、何かを察知した様子だ。直美が恋のキューピッドになれるか注目である。
直美と美津の再会もあった。スリから助けてくれた直美のことを美津は覚えていた。「でれすけ」はその時聞いた言葉である。環(英茉)も成長して、一ノ瀬家の団らんに加わる直美はリラックスできている様子で、教会以外に居場所ができたならうれしい。
名探偵トメが目にした多江らしき人物は、やはり多江だったようだ。違うのは髪型が洋髪ではないこと。宿舎前で鉢合わせした多江は以前のスタイルだった。髪型の謎は次回に持ち越された。
■放送情報
2026年度前期 連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から土曜8:00~8:15放送
※土曜は一週間を振り返り ※NHK ONEで同時・見逃し配信あり
NHK BS・BSプレミアム4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送
出演:見上愛、上坂樹里ほか
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
音楽:野見祐二
主題歌:Mrs. GREEN APPLE「風と町」
語り:研ナオコ
制作統括:松園武大、宮本えり子
プロデューサー:葛西勇也、松田恭典
演出:佐々木善春、橋本万葉、新田真三、松本仁志ほか
写真提供=NHK






















